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梅雨

雨の日は嫌い。

特に晴れが続いた後の土砂降りなんかは大嫌い。

私の恋人は殺し屋だった。

普通のOLだった私に対して、彼は出会い頭に銃口を私に突きつけた。

「殺されたくなけりゃ、俺を世話しろ。」

頭から血を流して、今にも死にそうな殺し屋。

言われるがままに私は怪我をした彼の世話をした。

ナイチンゲール症候群って言うのかしら?

お世話をしている間に、私は彼が好きになった。

彼が私を好きだったかは知らないけど、怪我が治った後も彼は私の家に居た。

それで恋人の様に私に接してくれた。

幸せだった。

彼との生活はとても満ち足りていて、灰色だった私の人生がカラフルに彩られた。

けれど、彼が仕事から帰って来たということは、人が一人死ぬということ。

そんな彼を匿っている罪悪感は半端じゃなかった。

あの頃は精神安定剤も飲んでたっけ。

それでも幸せを手放せなかった。

だけど二年ぐらいズルズルと続いた幸せは、突然前触れもなく終わりを告げた。

外は土砂降りの雨、仕事に行った彼は帰って来なかった。

希望を持って彼を待ち続けたけど、一ヶ月もしたら流石に死んだんだろうなと思うようになって、自然に涙が出てきた。

だから雨の日は嫌い。

だって彼が居なくなって、私の人生灰色なんだもの。

雨の日は彼との想い出がどうしても込み上げて来て、体調を崩して会社を休むことも、しょっちゅうよ。

今日なんか会社がお休みだから、ずっとリビングの椅子に腰掛けて玄関を見てた。

彼が帰って来ないかなぁ・・・って。

「待ってても帰って来ないよ。」

!?

私は驚いた。

玄関から人が入って来た・・・ワケではなく、その声は後ろから聞こえたの。

振り返ると、高校生の少女が窓の所に立っていた。

「窓開いてたよ。一人暮らしなのに不用心だね。」

「あ、あなた何!?ま、まさか私を殺しに?」

突然の来訪者に私はガタガタと震えた。

けれど彼女はそんな私を安心させるニッコリ微笑んで見せた。

「いやいや、殺し屋の元カノ殺しなんか誰も依頼しないよ。意外と殺しの依頼は高いんだよ。」

・・・流石に人殺しの相場は分からない。

この子何しに来たんだろ?彼を知ってるのかな?

「はい、コレ。アナタの元カレからだよ。中は指輪じゃないかな?そんで「お前の事好きだった」って。」

・・・スラスラと間も置かずに、少女は彼の形見の指輪の入った箱を私に手渡し、彼の最後のメッセージを私に伝えてきた。

こんなの黙っていられないじゃない。

「いくらなんでも軽すぎない!?形見と最後のメッセージなのに!!」

生まれて始めて人にツッコミを入れた。

だってあんまりでしょ?

「ごめんねお姉さん。でも、あんまり湿っぽくしないで欲しいって言われてたから、あと私は別件で通り掛かって、瀕死のお兄さんをたまたま見つけただけだから。でも、お姉さん見つけるの苦労したよ。何せ最初はお兄さんの素性すら分からなかったんだもん。」

少女がよく喋ってくれたおかげで、私は状況が全部呑み込めた。

要するにこの子は私に彼の遺言を伝えて、形見のプレゼントを渡す為にノーヒントで私を探してくれてたんだ。

「あ、ありがとう。」

「はい、じゃあ私は帰りますから、お姉さんは新しい恋でもして下さい。サヨウナラ、あと窓の鍵は閉めておいた方が良いですよ。」

そこまで言うと、少女はひょいっと入って来た窓から飛び降りました。

だ、大丈夫なのかな?ここアパートの三階なのに??

窓の下を一応見たけど、死体はおろか少女の影形も有りはしなかった。

少女が居なくなると、じんわり彼のプレゼントの指輪と、彼の「お前の事好きだったよ」という言葉が心に染みてきて・・・泣けてきた。

きっと少女は私を気使って早々に出て行ってくれたんだ。ありがたいなぁ。

素敵な来訪者が訪ねて来てくれて、もう彼を待つことは無いだろうし、少しだけ雨の日が好きになれそうな気がする。

人生灰色なんて言わずに明日から頑張りたいけど、今日は彼を想って涙を流そう。



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