↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/66

第53話 光る石のPIN

修学旅行三日目の夜明け前。


病室の窓は、まだ黒いままでした。


画面のいちばん上に開いた記録を、私は一行だけ読んで閉じました。

今の認証とは関係がありません。


「次」

別の記録が開きました。

それも違います。


「次」

前線では、娘が答えを待っています。


小牧野では、ナミ教官とカグ先輩の座留めが続いています。


スサノオを止めているバキ教官にも、残された時間はありません。


それでも、試せるのは三回だけです。


焦っているからこそ、当てずっぽうでは押せませんでした。


「候補を、入力された順じゃなくて、意味が残った順に並べろ」


── AIツクヨミ 応答 ──

了解しました。

────────────


画面の表示が切り替わりました。


── SYSTEM LOG ──

retained_input_scan(保持入力走査): active(実行中)

admin_input_count(管理者入力数): multiple(複数)

observer_word_match(観測者語句照合): waiting(照合待ち)

remaining_attempts(残り試行): 3(三回)

────────────


「観測者語句照合って何だ」


── AIツクヨミ 応答 ──

管理者入力だけでは、候補を一つに確定できません。


五色石盤側に保持された観測語との一致が必要です。

────────────


その瞬間、新城の主幕舎から新しい観測ログが届きました。


* * *


千歳は、地図のそばに置かれた黒曜石を見つめていました。

黒曜石は、外部コードの通過経路そのものではありません。

主幕舎から、経路の反応を見るための観測媒体です。


「黒曜石ですから、黒に決まっています」

幕舎の者が言いました。


「ううん」

千歳は、石へ顔を近づけました。

「中に細い光がある」

「切る方じゃなくて、戻る方へ向いてる」


千歳の言葉が、ログへ変わりました。


── SYSTEM LOG ──

observation_medium(観測媒体): OBSIDIAN(黒曜石)

observer(観測者): CHITOSE(千歳)

display_value(表示値): shining_stone(光る石)

route_response_direction(経路応答方向): reverse(逆方向)

────────────


* * *


`shining_stone`。


表示された瞬間、昔の光景が一度だけ差し込みました。


校庭の隅。

土で汚れた小さな手。

「お父さん、見て。光る石」


私には、ただの灰色の石にしか見えませんでした。

千歳には、光っていました。


「認証候補と照合しろ」


── AIツクヨミ 応答 ──

照合します。

────────────


数秒が、長すぎました。


── SYSTEM LOG ──

admin_input_pattern(管理者入力傾向): retained_interpretation(保持された解釈)

observer_word(観測者語句): shining_stone(光る石)

pattern_match(傾向一致): confirmed(一致)

pin_candidate_status(PIN候補状態): possible(候補)

────────────


可能。


正解ではありません。

私は入力欄へ手を置きました。

残り三回の表示が、赤く点滅しています。


「これを入れたら、開く確率は」


── AIツクヨミ 応答 ──

算出できません。


候補としての一致は確認しました。


認証値であることは、まだ確定していません。

────────────


指を止めました。


懐かしいから選ぶわけにはいきません。

娘が昔そう呼んだから、というだけでも足りません。

このシステムが、なぜその言葉を残したのか。


五色石盤が、何を入力として保持したのか。

そこまで確かめなければ、一回を使えません。


私は、入力欄から手を離しませんでした。


PINは、敵側の白黒処理が決めた名前ではありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。