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第14話 白いフラッシュ

翌朝、咲良ちゃんはスマホを出して言いました。

「ねえ、何か出た?」

昨日、咲良ちゃんの女神コレクションは十三柱そろいました。


封印版十三枚。

開放版十三枚。

合わせて二十六枚。


最後に開いたのは、千歳がシェアしたイワナガヒメです。

祝福ページも出ました。


花びらみたいな光。

円を描く十三柱。

中央に「コンプリート」の文字。

咲良ちゃんが「やった!」と声を上げた、その瞬間です。


画面が、一度だけ白く飛びました。


すぐに元へ戻る。

十三柱の円。

コンプリートの文字。


でも千歳は、白く飛んだ一瞬の奥に、別の影を見ました。

「今の、見た?」

千歳が聞くと、咲良ちゃんは首を傾げました。

「何が?」


澪ちゃんも画面をのぞき込みました。

「普通じゃない?」

美森ちゃんだけが、少し遅れて「スクショ見れば?」と言いました。


咲良ちゃんはすぐにスクショを開きました。

そこには、普通の祝福画面しか写っていません。


花びら。

十三柱。

コンプリート。


白いフラッシュも、影も、何も残っていない。


「ほら、普通」

咲良ちゃんは笑いました。

千歳も笑おうとしました。

でも、笑えませんでした。

スクショに残らなかったことが、かえって怖かったからです。


画面の奥に見えた影は、女神の影ではありませんでした。

柱の影に、見えました。


昼休み、四人はもう一度コレクション画面を開きました。

「やっぱり同じじゃない?」

澪ちゃんが言いました。

咲良ちゃんもうなずきました。

千歳も、そう言うしかありませんでした。

見えた気がしただけ。

それ以上のことを言えば、自分が変な子になる気がしたそうです。


でも美森ちゃんだけは、すぐに笑いませんでした。

画面ではなく、千歳の顔を見ていました。

「ちー、顔色悪いよ」


その一言で、千歳はスマホを伏せました。

伏せた黒い画面に、まだ白い残像が残っている気がしました。


目を閉じると、十三柱の円が一瞬だけ崩れる。

円ではなく、何かの配置図みたいに見える。


それを口にしたら、たぶんもう戻れませんでした。


* * *


その頃、私の管理画面には、千歳が柱の影を見た瞬間とほぼ同じ時刻に、説明できない反応が残っていました。


── SYSTEM LOG ──

paired_role_trace(対役割痕跡): detected(一時検出)

role_a(役割A): spear_like(矛型)

role_b(役割B): shield_like(盾型)

current_sync(現在同期): false(不成立)

────────────


矛と盾。

そんな分類を、私は女神占いへ入れていません。

しかも、二つの痕跡は同時に現れたのに、重なりませんでした。

画面の左右へ離れたまま、白いフラッシュと一緒に消えています。

スクリーンショットにも残りませんでした。

私はその行を、ケース002の未整理ログへ移しました。

意味は分からなくても、消してはいけない行だと思ったのです。


── SYSTEM LOG ──

case_002_closed(ケース002終了状態): false(未完了)

next_gate_status(次ゲート状態): waiting(待機中)

observer_candidate(観測者候補): awakened(覚醒)

case_002_label(ケース002ラベル): unset(未設定)

────────────


コンプリートは正常。

けれどケースは閉じていない。

しかも、ラベルがない。

何が始まったのか、システム自身も名前を持っていないように見えました。

私は咲良ちゃんのコレクション履歴と、千歳のLoveSimログを開きました。

すると画面の端に、短い応答が出ました。


── LoveSim 応答 ──

ケース002は、現在も進行中です。

分類を保留してください。

観測を継続してください。

────────────


それだけでした。

何が進行しているのかは、書かれていませんでした。

私は咲良ちゃんのコレクション履歴と、千歳のLoveSimログを閉じずに並べたままにしました。


コンプリートしたはずの画面の裏で、何かがまだ動き続けていました。

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