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第13話 娘より先に目覚めたもの

── SYSTEM LOG ──

manual_patch(手動修正): restored(復元)

patch_target(修正対象): observer_candidate(観測者候補)

reason(理由): protected_unknown_logic(保護された未知ロジック)

required_debug(必要デバッグ): create_timeline(時系列表作成)

────────────


これは、私の管理者権限が消えたという話ではありません。

通常のログも、コードも、見ようと思えば見られる。

ただ、その奥で動いているロジックだけが、私の知らない規則で自分を守っている。

画面の端に、LoveSimの応答が出ました。


── LoveSim 応答 ──

欠けているのは、人数ではありません。

────────────


その一文だけで、また私の手は止まりました。

私は、千歳のLoveSimログと咲良ちゃんのコレクション履歴を並べました。

いつ誰がシェアしたのか。

どの女神が開放されたのか。

千歳が「便利だったのかな」と打ったのは、何時だったのか。

父親としては、そこにある会話の全部を読んでしまいたくなります。


でも、読むだけでは何も戻りません。

私は、時系列表を作りました。


澪ちゃんのお守り。

美森ちゃんのヤマノカミ。

咲良ちゃんの「あと一人」。

図書室。

イワナガヒメの判定。

観測者候補。


並べるほど、変な空白が見えてきました。


咲良ちゃんの画面では、あと一人。

千歳の画面では、判定女神。

私側のログでは、ケース名未設定。


同じ時刻の近くで、別々の空欄が口を開けていました。


咲良ちゃんの画面は、千歳を最後の一人として扱っていたように見えます。

コノハナサクヤヒメと対になる、イワナガヒメとして。


でも千歳のログは、それだけではありませんでした。

千歳は、待たれていたことよりも、自分が空欄として扱われたことに傷ついている。


そしてLoveSimは、その傷を「観測者」と呼んでいる。


── LoveSim 応答 ──

仮説を保留します。

千歳さんは、最後の一人だから検出されたのではありません。

────────────


私は、その先の一文を読むのが怖くなりました。


── LoveSim 応答 ──

最後の一人は、条件のひとつです。

ケース名ではありません。

残っている記録は、ここでいったん途切れます。

────────────


咲良ちゃんの女神コレクションは完成しました。

画面を閉じる直前、前の事件から残っていた未解決欄が、もう一度だけ点滅しました。


── SYSTEM LOG ──

collection_status(収集状態): complete(完了)

paired_combat_role(対戦役割): dormant(休眠)

counterpart_status(対となる存在): unresolved(未解決)

sync_state(同期状態): interrupted(中断)

missing_count(欠落数): 1

────────────


十三柱は揃っています。

人数も、女神も、画面上は欠けていません。


それなのに、関係だけが一つ足りない。


私は「あと一人」という表示の残骸だろうと思いました。

けれど、コレクションの空欄と、この空欄は別の場所にあります。

一方はコレクションの残りを数え、もう一方は、誰かの隣にあるはずの位置を数えていました。

その違いを、この時の私は深く考えませんでした。


十三柱はそろった。


アプリ上の遊びとしては、きれいに終わっています。

でも、ケースファイルは閉じませんでした。


── SYSTEM LOG ──

case_002_closed(ケース002完了状態): false(未完了)

case_002_label(ケース002ラベル): unset(未設定)

next_gate_status(次のゲート状態): waiting(待機中)

observer_candidate(観測者候補): awakened(覚醒)

ai_name_status(AI名称状態): unset(未設定)

────────────


観測者。

ケース名。

AI名称。


それらはまだ、名前を持っていません。


ただ、千歳自身がその意味を知るより先に、システムの中で目を覚ましていました。

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