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この婚約に、恋の続きを込めて  作者: もちもちほっぺ


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23

「これ、これで決まり!」


応接間にレティシアの声が響いたのは、ルカとゴドフロワがまだ最終調整をしている最中だった。


振り返ると、レティシアはすでに品物のひとつを掴み、迷いもなく手際よく包み紙を巻いている最中だった。


「……お決まりですか?」


バルドーが控えめに尋ねると、レティシアはふんと鼻を鳴らした。


「ええ、即決。迷ってる時間がもったいないわ。

アナスタシアへの贈り物なら、直感がいちばんよ」


「参考までに、どんな品を……」


ミレイユがそっとたずねかけたが、レティシアはすぐさま笑顔で言葉を切った。


「発表のときのお楽しみよ」


そのまま、テーブルの下で器用に紐を結ぶ。


「でもね」


誰にというわけでもなく、彼女はさらりと続けた。


「新婚といえば……これよね」


くるくると布を巻きながら、意味深に笑う。


その様子を見ていたミレイユとルカとバルドーは、ほぼ同時に目を合わせた。


――嫌な予感がした。


だが、本人はご機嫌そのものだった。


「さあて、誰の贈り物が一番アナの心を射抜くかしら。勝負よ!」


包装を終えた彼女は箱を抱え、まるで自分の勝利を疑わない、優雅な女王の風格だった。




騒がしさがひと段落し、応接間にほんの一瞬だけ静けさが落ちた。


バルドーは椅子の背にもたれたまま、黙ってミレイユを見ていた。

視線を送るというより、彼女が何を見ているのかを探るように。

ミレイユは無意識にテーブルの上、ある一角を時折見つめていた。


やがてバルドーは椅子を静かに引き、立ち上がる。


誰も気づかないほどの自然な動きで、商品が並べられたテーブルへ歩を進めた。


ルカやゴドフロワが目を上げた時には、彼はもうひとつの髪飾りの前に立っていた。


金細工に繊細な彫りが施された、細く優美な作り。

装飾は控えめだが、動くたび光の粒が舞うようにきらめく。


「私は……これにします」


バルドーはそのままゴドフロワに向き直り、短く言った。


「構いませんね?」


ゴドフロワは少し目を見開いてから、にやりと口角を上げた。


「ええ、もちろん。よくお似合いになる方がきっといらっしゃるんでしょう」


返された言葉には何も答えず、バルドーは静かに頷いた。






テーブルに広げられた品々のなかで、ミレイユだけはしばらく一点を見つめていた。


それは完成された商品ではなく、色とりどりのガラスのアクセサリーパーツが並んだ小さな区画。

透き通る花びらのようなもの、朝露のような粒、揺れる光のかけら――

それぞれに違う色、形、質感があった。


だが彼女の視線は、選んでいるというより“考えている”ようだった。


「……お悩みですか?」


近くにいたゴドフロワが声をかけると、ミレイユは頷いた。


「いえ、どれにするかは、もう決めていたんです」


「では?」


「どれでつくるかを、迷っていました」


ゴドフロワはにこやかに目を細める。


「それなら、とびきりのものを選ばなくてはなりませんね」


ミレイユは慎重にいくつかのパーツをトレーに取り、

ふと顔を上げて近くにいたルカを見た。


「ルカ様。……少しだけ、お手を貸していただけますか?」


「え? いいけど」


即答だった。


ミレイユが差し出したトレーには、透明なガラスの花弁パーツがいくつか並んでいる。


「これを、花の形になるように並べていただけますか? 色の組み合わせだけ、私が決めますので」


ルカは少し戸惑いながらも、トレーの前に座った。


「こう、で……いいのかな?」


「はい、それで大丈夫です。あと、こちらはもう少し濃い青と入れ替えて……」


ふたりはしばらく静かに、並べる作業に集中した。


ガラス同士が触れ合う、澄んだ音。

指先の微細な調整。

角度と光の具合を確かめながら、ひとつ、またひとつ。


やがてミレイユが満足げに微笑んだ。


「ありがとうございます。あとは……」


「はい、あとは私の出番ですね」


タイミングを見計らって現れたのは、ゴドフロワが呼んだ専属の細工師だった。


白衣に手袋、繊細な道具を抱えていた。


「大切な方への贈り物です。仕上げは、心して務めさせていただきます」


ミレイユはぺこりと丁寧に頭を下げ、トレーを預けた。


花のようなガラスのきらめきに、ルカも少しだけ目を細めていた。

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