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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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錬金術師の場合 ④


黒騎士と白騎士が互いの武器を振りかぶる。


一瞬、世界から音が消えた。


極度に張り詰めた空気の中で、黒い機関銃と白いレイピアがゆっくりと弧を描く。


周囲の者達は息を呑み、一瞬立ち竦む。


「あっ」


空気の漏れたような声がした。


吸引の終わり際、その中心核で激突する両者の武器。


金属同士がぶつかり合うつんざくような高音、衝突点から青い火花が散った。


空間は歪み、圧縮された魔力は臨界に達する。


蒼色の閃光が迸り、吸引は一転爆発的な衝撃波となって周囲を吹き飛ばした。


{「要塞Lv.10」の発動を確認しました。}

{「堅牢Lv.10」の発動を確認しました。}

{「堅牢Lv.8」の発動を確認しました。}

{「不動Lv.10」の発動を確認しました。}


瞬時に防御スキルを展開した前衛職が後衛の前に立ちはだかる。


周囲がいっぺんに薙ぐ爆風の中、各々のシールドに弾かれる先ほどまで吸引されていた様々。


土砂、木々、武器、魔物、そしてヒトの血肉。


シールドに激突した肉塊が更に粉砕され後方に吹き飛んでいく。


高音がなりを潜め、爆風が凪いだ後、そこに残ったのは冒険者達を除いて他に無かった。


{「要塞Lv.10」を発動しました。}

{「要塞Lv.10」を発動しました。}

{「要塞Lv.10」を発動しました。}

{「要塞Lv.10」を発動しました。}

{「要塞Lv.10」を発動しました。}

{「要塞Lv.10」を発動しました。}


修道院(私たち)は各々で身を守れます!前衛方は攻撃を!!」


神官が杖を掲げ、その周囲に結界を展開する。


魔術師団も結界内に入り、魔術を構築している。


「攻撃を集めるよか分散させた方が結界の性質上有効か…。」


「どうにしろ最初のが来りゃ変わらねぇ。神官は肝だ!気合い入れろ!!」


タンクが声を上げる。


雄叫びで呼応する他前衛。


「パーティだねっ!」


魔法袋から連鎖瓶を取り出しながらミラは笑った。



…。



戦闘は熾烈を極めた。


装甲遠距離型と回避近距離型のコンビである。

その相性は全ての冒険者が嫌というほど理解していた。


黒騎士の機関銃を耐え何とか前進する前衛職の背後に白騎士が高速で回り込み、その背中を神速のレイピアで滅多刺しにする。


タンクが落ちた後には機関銃が容赦なく浴びせられ、軽装備が軒並み蜂の巣になった。


刺突型のレイピアと連射型の機関銃である。


それらによって生み出される死体の貌は殆ど同じであった。


単発指向性の多くの魔法は白騎士には当たらず、黒騎士は遠距離攻撃では火力不足。


おそらく全てを操っているのであろうネクロマンサーには手が届かない。


ジリ貧だった。


しかし、手をこまねくばかりで終わるほどここにいる冒険者は経験が浅くない。


神官からバフを受けた盗賊が、守護騎士の盾を足場に跳躍する。


自身に飛んでくる小柄なそれを認識した黒騎士が機関銃を上に向けるが、バフのかかった盗賊の身のこなしはそれら全てを回避する。


川のように天に描かれる銃弾の軌跡。


盗賊を認識した白騎士が跳躍し、その行先を妨害しようとする。


{「雷光魔法Lv.8」の発動を確認しました。}


盗賊に追尾していた地雷型の魔法だった。


盗賊の頭蓋を貫かんと突き出されたレイピアの刺突は、その後頭部60cmの地点で魔法陣を突き破る。


瞬間、完全指向型、極大の雷槍がレイピアごと白騎士を飲み込んだ。


全属性の中で最速の発生速度を誇るのが、雷属性魔法である。


白騎士に避ける余地は、ない。


光が一瞬あたりを照らしたと思えば、空に発散していったそれは白騎士の装甲を全て打ち破り、前線の遥か遠くまで吹き飛ばしていた。


{「立体起動Lv.5」の発動を確認しました。}


盗賊は空中で身を捻り、足で天を蹴り飛ばす。


口に挟んだ試験管を噛み砕き、中の液体を摂取する。


MP回復ポーションだった。


盗賊職は魔法攻撃に適性がなく、かつ魔法スキル使用時にはペナルティを受ける隠し効果が存在する。


しかし、「それ」によって発動する事象はその限りではない。


黒騎士の頭部装甲の間に瓶を叩き込む盗賊。


「死ねや!」


聖洸魔法による余剰MP、継続回復型のMP回復ポーションによって得られた盗賊の現在MPは、そのポーションに込められた術式の性能の120%を引き出すに足る。


もがく黒騎士の動きで瓶が割れ、盗賊のMPが術式に流れ込む。


発動するは、煉獄魔法。


しかしこれは、錬金術によって生み出された物理攻撃だった。


そして、盗賊職の物理攻撃補正は全職業中3位である。




極大の火球が発生した。



煉獄魔法Lv.10 獄炎。


創世の魔術、そのレベル0であった。



「すげぇ威力だな…やったか?」


火球の範囲外に逃れ、ミラの隣に現れた盗賊が言う。


「言っちゃ悪いかもしれないが、すごい嫌な予感がするよ。その台詞。」


横にいたブラムが眉を顰めた。


{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}

{「聖魔法Lv.10」の発動を確認しました。}


爆炎の中で燃えるネクロマンサー本体に祈りの言葉が降り注ぐ。


瞬間、その体は青い炎に包まれ、骨を軋ませたような唸り声が響き渡った。


「やれそうだけどな?」


盗賊が肩をすくませてブラムに言う。


「油断はしないほうがいい…っ!!」


盗賊に目をやったブラムが、突如として持っていた盾を投げつけた。


連続した金属音。


吹き飛ぶ盾。


盗賊はもう反応していた。


ブラムがミラの前に飛び出す。


爆ぜる鎧。


「ぐっ!?」


ブラムの呻き声。


しかし同時に盗賊のナイフがそれを地面に縫い付けていた。


「ミラ!」


「わぁお」


ミラは持っていたポーションを地面でばたつくそれに投げつける。


寸前で飛び退く盗賊。


命中したポーションは瞬時に凍りつき、暴れるそれを氷の牢獄に閉じ込めた。


青氷の中で固まるのは、先ほど消し飛ばした黒騎士の腕。


指先には穴が空き、そこから弾丸が発射されていたようだった。


「お家にあった高い奴全部使ったんだけどなぁ?」


ミラの疑問符に、盗賊が氷を踏みつけながら言う。


「死霊術ってこったろ。クソが。」


「とすれば、白騎士も…。」


ブラムが膝をつきながら漏らす。


突如として、祈りの声が止まった。


「…最悪だ。」


盗賊が呟く。


飛び上がる幾つかの首。


守護騎士2名、戦士1名、魔術師4名、神官7名。


「エラ…。」


ブラムが苦しげに言う。


全身の装甲を奪われ、肉が剥き出しになりながらなおそこにいた白騎士は、首のなくなった神官の背中を踏みつけ、こちらに向いていた。


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