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ミクロな世界の女子大生  作者: やまとりさとよ
第九章 ミクロな世界の戦争

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Code.8 (18)

レンジに冷凍ブリトーをぶち込みつつ、給湯器の電源を入れる。


「帰ってすぐ風呂に入るのに手を洗うのって二度手間じゃね?」


風呂場がゴポゴポ言い出したのを聞きつつ、ソファに座る要介護女神様の背中に言う。


「そう言うの、物理的な話と精神的な話で常に論点がズレるからまともな論争が成り立たないんだよね。パスタを茹でる時ソースごと茹でた方が効率的じゃね?みたいな話と同じ。」


呼吸器を鳴らしながらスピーカーを通して聞こえる女神様の声。


蛇口から放たれる水音に若干遮られる。


「穢れの概念ね。ま、私は風呂の前にワンアクションあるので結局手は洗うんですが。」


台所の洗剤で適当に手を洗い、水気を拭き取る。


手持ち無沙汰。

手を擦りつつ、クルクル回るレンジの前で待機する。


ブリトーが熱を帯び、包装のビニールが膨らむ。


んあ。

切れ込み入れ忘れた。


「つかそもそも、魔王スキルがあるんだし生理的な代謝関連のステータス変えりゃいいじゃん。生物の枠組みは越えられないけど、1ヶ月くらいは風呂とか入らんくて良くなると思うよ。」


{「獄地魔法」を発動しました。}


停止ボタンを押し、作ったハサミで小さく切れ込みを入れる。


包装は多少の熱を持っているものの、本体はまだ周囲の熱を奪うだけの温度しかなかった。


通常の温めモードで再度レンジを起動する。


「そー言う問題じゃないのよ。別に私は手洗うのも風呂入るのも嫌いなわけじゃないし。そう言うの完全に無くすメンタリティだったら、冷凍ブリトーじゃなくて出来合いの料理を出すし、包装に切れ込みを入れるのにハサミじゃなくて風魔法使うわ。」


ため息をついていう私の言葉に、軽い笑いに伴ったスピーカーの雑音が入る。


「それもそっか。てか、私の分のおやつは?」


再度ブリトーがレンジの中で回り出す。


60秒の電子タイマーが下でカウントダウンをはじめる。


「ブリトーはこれが最後。あるのはうすしおかのり塩かコンソメダブルのやつか。つか女神様おやつ食べれんの?」


「光魔法と各種HP回復系は入れてある。焼けこげながらでもスナックくらいは食えるよ。」


「こっちが物食えなくなるわ。」


「大丈夫。出力調整すれば見た目の変化はほぼないから。たまに煙出るけど。その煙も肉が焦げる匂いだからブリトーに合う。」


「カスのディフューザーやめてね。」


タイマーが30秒を切る。


その間に棚の上のポテチ箱を取り出す。


「で?何食べんの?」


「のり塩の気分。」


「はいはい。」


ガサゴソ漁りつつ、のり塩ポテチの袋を取り出す。


箱を棚の上に戻したと同時に、レンジのタイマーが鳴った。


開けると、それなりのいい匂いと共に解凍されたブリトーが現れた。


もう片手で掴み、肘でレンジの戸を閉める。


「ほい。」


「サンキュー。」


ソファに座る宇宙服のヘルメットにポテチを投げ渡す。


女神様は頭の上でキャッチした。



…。



隣でプスプス煙が上がっている。


肉が焼ける匂いではあるんだけど、同時に頭皮とかも焼けてるせいで、普通に髪が焦げる匂いも流れてくる。


「事前報告と違う。」


「まぁ、くせぇ者同士仲良くしようぜ。」


「私は別に今すぐにでも解消できんだわ。2日ぶりの風呂とか言う宇宙一気持ちいいことをしようとしてるだけで。」


「今解消できてないなら変わらないね。」


「ぐぅ。」


「リアルにぐうの音を上げるやつ初めて見た。」


ソファに寝転がりつつ、ブリトーを喰らう。


今回のはチーズタイプ。


とはいえまぁ冷凍なだけあって大して伸びずに歯形と一緒にちぎれて残る。


{「獄地魔法Lv.10」の発動を確認しました。}


「んで、今の戦況はどんな感じ?」


ヘルメットの形状を変えながら女神様が聞いてくる。


「……あー。そー言うのは今女神様のが詳しいんでないの?」


崩壊パックは魔王スキル由来にしても、戦争の管理はあのスチームパンク部屋で女神様たちがやってたはずだ。


「私はただの標本だからね。戦争運営には関わってない。管理ネットワークにも繋げられないし。容量には空きがあるんだけど、いかんせん処理能力が足りてない。」


なるほど。


ポテチを食べるために最適化された形状になったヘルメットを被りつつ、女神様は言う。


ふむ。


「今の主な戦場は3つ。一つは北部の山脈都市、一つが魔王城南部の大森林、んでもう一つが古代都市群。」


私の意思に従ってモニターに光が灯る。


表示された地図に寝転びながら印をつける。


「なるほど?」


「山脈都市と大森林は適当に戦わせてる。人族側の士気に合わせて戦況は変えるけど、基本は初期投入の魔物だけで戦ってもらう感じかな。投入されてる戦力的に、山脈都市は置いといても大森林は叩き潰しちゃって良さそうだけど。明らか正規軍じゃないし、どこぞの国の隠密部隊っぽいしね。少なくともわざと負ける必要はない。」


「ふむ。」


大森林の戦地にバツをつける。


「問題はこっち。アレイヌ・アレイン古代都市群。」


「ダンジョンとこか。」


「そ。12年前にCode.5云々で大規模戦闘があったとこ。そこが今、天使に占拠されてる。何してんのかしれないけど、最近何度か大きめのエネルギーの放出があったし。偵察に行った魔物と女神様の分体が現地の天使と何度か小競り合いをしてる。」


「私も行ってんの?」


「そ。被害はないけど、情報も得られてない。こっちとしても人族のエネルギー処理ギリで崩壊パックを回してる現状、メータースレスレでそう言うのされるのは、不快。」


「なるほどね。」


「だからいずれ叩き潰しにいく予定。次のフェーズが終われば人類もだいぶ効率良く死ぬだろうし。」


とここで給湯器がお湯張りの完了を知らせるメロディを流した。


「現状はこんなとこかな。風呂行ってくるわ。」


「うい。」


ブリトーの空の包装をゴミ箱に投げ込んだ。

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