九十七話 廃墟
四年前の時点で建物は廃墟同然だったが今では崩れそうになっており庭園は雑草や木で荒れ果て石像に植物のつるが絡まっていた。
建物の入口へたどり着き重く大きな扉を開け建物の中へと入る。
中は四年前のように血生臭い悪臭がするが埃とカビの臭いの方が強い。
明るい時に来るのは初めてだった為、見渡すと中は宮殿のような豪華な作りだが今は大量に埃やカビ、蜘蛛の巣が張られ、物が散らかっている。正面にある大きな階段の踊り場にはとても大きな絵画が飾られていた。
ミーナは魔法を使いながら入り組んだ廊下を警戒しながら歩き子供達を探していると扉を見つけ慎重に扉を開ける。
「階段…?」
そこには暗闇に続いている階段があった。ミーナは明かりを灯し一段一段慎重に降っていく。
階段を降り終えると長い通路があり奥が明るくなっていた。
明るくなった場所へと歩き進め、目的地へたどり着くと重々しい鉄の扉が人一人分開いており扉を動かそうとするが錆び付いているのか非常に重く諦め隙間をすり抜けるようにして部屋へ入るとミーナは目の前に広がる光景に驚きを隠せなかった。
「何…これ…」
そこは四年前に来たグレッタの研究室だったが異様なほど綺麗で新しい。まるでここだけ誰かによって改装されたかのようだ。目の前には巨大な縦長で円形の水槽が二つあり片方には目を瞑っている少女が入っていた。水槽には液体が満タンに入っており少女が呼吸すると気泡が出る。
「もしかしてこの子が…!」
ミーナは急いで少女を助けようと水槽の上や周りを見るが助け出せるような場所はなく魔法で水槽を壊す事にした。
「リブェリアー!」
ミーナは魔法を唱えると水槽に亀裂が入り伸びていく。大きな音をたてながら水槽のガラスは割れ、研究室は水浸しになると水槽の中にいた少女は気を失っているのかその場でペタンと座りミーナは少女の元へ駆け寄ると水槽から出し目を覚まさせようとした。
「大丈夫…!?」
必死に呼びかけるが反応はなく息は小さい。
回復魔法を使ってみるが変わらない。
「早く町に連れて…!」
「丁度いい…こいつの体を使うとするか…」
ミーナは少女を抱き抱え町に運ぼうとすると人の気配なんてなかった背後から低い男の声が聞こえた。
くるっと後ろを見るが誰もいない。だが誰かに見られている気配はあった。
「…誰かいるの!?」
ミーナがそう叫ぶと少女は一人で立ち上がりミーナの事を睨みながら笑っていた。
「ああ…ここにな…」
少女は低い男性の声で言うと突然少女から衝撃波が現れ、ミーナは吹き飛ばされた。
研究室だった場所は白く何もない空間へと変わっていき黒い影が少女を包み込む。
ミーナは黒い影を見てある事を思い出し恐怖で体が動かなかった。
(あの影…夢の中にいた…!私を襲ってきた化け物に似てる…!)
少女を包んでいた黒い影は形を変えていき、黒いワンピース、黒のヒール、黒のニーソへと変わった。
体が馴染んでいるか確認するかのように手を開いたり閉じたり足を振り、確認し終えると少女はミーナの方を向く。
少女の瞳は赤く、にっこりとミーナの事をあざ笑った。
「よお、久しぶりだなぁ。ミーナ…まあ、お前からしたら初めてか…キシシッ…」
「あんた…前に私の夢に出てきたやつでしょ…!誰なの…!?」
「ほぉー…覚えてくれてたか…ありがたいねぇ…。俺は「カミラ」だ。まあ、本当は俺に名前なんてないからこのガキの名前使ってるだけなんだけどな」
カミラはミーナの事を再び嘲笑う。
ミーナはカミラの態度と少女の体を使っている事に苛立ちを感じた。




