九十二話 占い
「捻挫ですね。湿布出しときますので安静にしててください」
「分かりました…」
医師の診察が終わり、ミーナは箒を持ちながら病院を出る。足首は固定され動きにくいが痛みは多少治っている。だが昨日の夢か現かどちらか分からない。時間が経つにつれ色々考えてしまい頭の中がぐちゃぐちゃになった感覚だ。笑う事が出来ず表情を曇らせながら町を歩く。
ドン
ボーっと歩いていたからか目の前に人がいた事に気づかず、ぶつかってしまい倒れそうになるが近くにいた高身長のスーツ姿の人に支えてもらい倒れずに済んだ。
「大丈夫かい?」
「は…はい…」
ミーナがぶつかった人は黒いゴスロリ姿で黒のレースの日傘を差している人だった。
「あなた、怪我はないかしら?」
「はい…すみません…いった…!」
ミーナはスーツ姿の人の手を離し、自分で立とうとするが怪我している左足首に痛みを感じ再びふらつきスーツの人にもたれかかった。
ゴスロリの人はミーナのおぼつかない足を見ると足首に包帯が巻かれている事に気がついた。
「あら…足を怪我してるじゃない…近くのカフェで休みましょ?リース、彼女に腕を貸してあげなさい」
「分かりました」
「リース」の腕を掴みながらミーナはゴスロリの女性と一緒にすぐ近くのカフェのテラス席へ移動した。
リースはミーナを椅子に座らせるとゴスロリの人の隣へ移動し、スーツの人が座りやすいように椅子を引き寄せ、座るのを確認すると後ろへ移動し執事であるかのように立つ。
「申し遅れましたわ…私、こういうものです」
ミーナが不思議に思っているのをよそにゴスロリの女性はミーナに名刺を渡した。
名刺には黒の筆記体で「ラフェーナ・ヴァレンタイン」と占い師とシンプルに書かれていた。
「「ラフェーナ・ヴァレンタイン」…占い師なんですか?」
「そう。リースと一緒に世界中を旅しながら色んな人に占いをして生計を立ててるの」
「凄いですね… ボディーガードまでついてて…」
「…そうね…私の占いはよく当たるからお前の占いのせいでーって命を狙ってくる輩もいるからね」
「そうなんですか…。でもリースさんがいるなら安心ですね…」
「じゃあここでクイズ。リースの性別はどっちでしょーか?」
「え?男性じゃ…?」
ラフェーナはミーナの回答にクスッと笑い、飲んでいた紅茶のティーカップを置く。
「残念っ!正解は女でしたー!」
ラフェーナが回答を言うとミーナは驚きリースに謝る。
「ごめんなさい…!」
「いえ、慣れてるんで」
リースは何も表情を変えずそう言った。するとラフェーナは黒いタロットカードを取り出しテーブルの上に並べる。
「さて、ミーナさんの表情も柔らかくなったところで…それじゃあ、この中から好きなカードを選んで」
「じゃあ、これで」
ミーナは左から二番目のタロットカードを選ぶ。ラフェーナはタロットカードを手に取り絵柄を見るとピタッと動きを止め、険しい顔になったがすぐ笑顔になりカードをテーブルの上に置く。
「これは、あなたのこれからの人生を占ったの。結果はこれまでとは違う事が起こっても冷静に、いつも通りのあなたでいれば問題ないわ。ただし、ある事で取り乱したりしてはダメ。それが原因であなたの身を滅ぼすかもしれない…それだけは忘れないようにね」
「はい…わかりました。あの…お金とかって取るんですか?」
「いいえ、これはサービスだから気にしないで。それより、足の痛みは治ったかな?」
「はい…さっきよりは…」
「それじゃあ、そろそろ家に戻った方がいいかもしれないわね。もしかしたら…何かあったりしてね?」
「…そうですか…?今日はありがとございました」
ラフェーナの言葉を聞き、ミーナは少し不思議に思ったものの立ち上がり広場まで箒を杖代わりにしながら歩いた。ラフェーナは笑顔でミーナに手を振る。
ミーナの姿が見えなくなると手を振るのをやめ、小さくため息をつく。
「…真実を伝えなかったのですね」
リースはミーナが視界に入らなくなるとラフェーナにそう言った。
「…はは…やっぱリースにはバレてたか…」
「何年あなたの付き人やってると思ってるんですか…あと、それは控えてくださいって言いましたよね?」
リースはラフェーナがポーチから取り出した黒い箱とライターを見て言った。ラフェーナはリースの言葉をよそに黒い箱から黒くて長いタバコを取り出し吸い出す。
「いいじゃん…私の楽しみはこれぐらいしかないんだから。誰かに恨まれて殺されるより好きな事して死ぬ方がマシよ。それに、彼女には真実を伝えた。そう長くない人生だろうけど、私より長いだろうし楽しんで欲しい…まあ、彼女次第なんだろうけど…」
ラフェーナは真剣な顔で言った。
リースはため息をつく。
「…そうですね」




