第八十八話 キアラ
マーガレットとキアラの戦いは二時間以上経っても決着がつかなかった。
何度もキアラに向け発砲するが全てかわされ、一歩的に攻撃を受けるしか出来なかった。
「あっ!…ゴハァ…!」
キアラの攻撃により吹き飛ばされ地面に叩きつけられるが少ない体力を必死に振り絞り銃を向ける。だがすぐさま黒い影に持っている銃を払われてしまい攻撃する手段を無くしてしまう。
「あーあー、ざまぁねぇな?もっと楽しめるかと思ったんだけどな…さて…さっさと決着付けちまうか…」
キアラがマーガレットに向け手をかざす。するとキアラの後ろから足音が聞こえキアラが振り向くと背後にハンリンが立っていた。
「おぉ、ハンリン。遅かったじゃねぇか…まあ、タイミング良いか…」
「ええ、ちょうどいいタイミングね」
ハンリンはキアラの受け答えに笑顔で返答する。
コツコツとハンリンのローファーの音が鳴り響き、マーガレットの前に立つとしゃがみ込みながらマーガレットの顔を眺めた。
「ハンリン…てめぇ…殺すんならさっさとやれよ…」
「うーん…そうね…やっちゃおうか」
ハンリンはそう言うとマーガレットの頭を優しく撫でた。マーガレットは覚悟を決め目を瞑る。
ザグッザグザグッ!!
何かが人に刺さる音は聞こえたが全く痛みがない。マーガレットは目を開くとそこにはキアラの背後の地面から伸びる鋭利な白い塊に串刺しにされ血を流しながら浮いている光景だった。キアラは怒りで表情を歪ませる。
「ハンリン…てめぇ…!!何してんのか分かってんのか!!」
キアラの怒り狂った声が響き渡るとハンリンは「立てる?」と小声で言いマーガレットの手を掴み立ち上がらせる。先程までボロボロで立ち上がる事も困難だったマーガレットは不思議と立ち上がる事が出来た。
ハンリンはキアラの言葉に返答せずただ睨み付ける。キアラは苛立ちさらに表情を歪ませる。
「なんだよその目…このクソガキがああああ!」
キアラの放った黒い光線はハンリンの近くにいくと砂の様に崩れ落ち、キアラに刺さる白い塊はバキバキと音を立てながらキアラの体に侵入していきガラスのヒビが広がっていく様にどんどん進んでいく。
キアラはどうにか止めようと白い塊を掴んで黒い影を出そうとするが影はどんどん小さくなっていき壊せない。
「ああああああああああああああ…!」
ビシッ…!
キアラの叫び声の後、亀裂が入った様な音がキアラの体から鳴ると白い塊を掴んでいた手がぶらんと垂れ下がり串刺しになった人形の様に動かなくなった。
「ハンリン…あれって死んだのか…?」
マーガレットは突然の事に理解が出来なかった為ハンリンに聞いた。するとハンリンは笑顔でコクリと頷く。
「うん。…でも、間に合ってよかった…もしマーガレットが倒されてたらどうしようって思ったもん…」
「そうか…でもこの後私を殺すんだろ?」
「ううん…殺さないよ。だって、マーガレットがいなかったら今の私はいないもん。あの時の言葉で私は思い出せた。今までの私はキアラに洗脳されてたって…これが本当の私なんだって…」
「……。」
「…そういえば、グレッタ探してるんだっけ?場所教えてあげるよ…でもその前に…マーガレット、しゃがんで?」
ハンリンはそう言うとマーガレットは言われた通りしゃがんだ。するとハンリンはマーガレットに抱きついた。マーガレットは突然の事に驚いたのと恥ずかしさで離そうとするが強く抱きしめられており中々離れない。
「マーガレット…もし、これが終わったらマーガレットと一緒に過ごしたい…何でもする…お手伝いいっぱいする!…魔法はあまり残ってないから出来ないと思うけど…」
「…親…って…仲悪かったんだっけか…戻りたくないよな…」
「うん…それと、ザビーが殺しちゃった…キアラの魔法を手に入れてすぐに…だからいない…でも、孤児院は嫌だ…」
ハンリンはそう言うとマーガレットを抱きしめるのを強める。マーガレットはそれを受け、嘘ではないと感じた。
「…分かった!じゃあ早速手伝ってもらおうか!」
「うん!」
マーガレットは立ち上がりハンリンと共にグレッタのいるヴィランズコーストの拠点へ走った。




