七十六話 ハーベルグ町
ハーベルグへと向かう道中。マーガレットはさっきからジャックの様子がおかしい事に疑問を感じていた。なので気分転換にと話を振ってみる事にした。
「ジャック、ハーベルグってどんな場所か知ってるか?」
「うん…あんたがいたアレゲニーと同じぐらい都会だけど治安はまあまあかな…」
「へー…そういえばさっきからずっと暗い顔してるけどどうした?」
「…いや…ハーベルグって私の生まれ故郷なんだけど…あんまいい思い出なくてね…それを思い出しちゃって…」
「……」
マーガレットはジャックの言葉を聞き返す言葉が見当たらず黙るしか出来なかった。
その後、重たい空気が漂う中数時間走らせてるうちに目的地「ハーベルグ」に到着した。ジャックは小高い山の上にある墓地に寄ってほしいと言いマーガレットは従い車を走らせる。
ある墓の前で車を止め、ジャックとマーガレットは車から降りた。その墓は誰にも手入れされておらず雑草だらけだった為ジャックはひと通り雑草を抜きマーガレットの車の中にあった雑巾でサッと墓石を拭き取る。
「マーガレット、タバコ一本くれない?」
「え?ああ、いいけど…お前吸わないだろ?」
「ちょっと変えるだけ」
ジャックはマーガレットから貰ったタバコを手で隠しスッと白い花へと変え、墓の前に置き手を合わせた。マーガレットも一応手を合わせる。
「…なあ、ジャック。この墓って知り合いか?」
「私の母親だよ。そして…墓石に彫ってある「リヴェット」、これが私の本当の名前だよ」
ジャックは墓石に彫られている「リヴェット」を指差しながら言った。
「じゃあ…ジャックっていうのは…」
「うん、偽名。私が母親を殺さなければこんな偽名付けなくてよかったんだけどね…まあ…殺さなくてもあまり長く生きられなかったし…」
ジャックが悲しげな顔をしながら話しているのを見てマーガレットは胸が張り裂けそうな気持ちになり、ここに来るまでにハーベルグの話題を出してしまった事を強く後悔した。
「…そうか、なんか…ごめんな…」
「いいよ…こんな事誰にも話さなかったし……」
マーガレットとジャックはその後無言になると冷たい風が吹き始めマーガレットはポケットに手を入れぶるっと震える。
「ここで長話するのもあれだし喫茶店とかに行こうよ…二人で…」
「モーガンはいいのか?」
「いいよ…真面目な話をする時にモーガンいると話進まないし…」
ジャックは真剣な顔で話すとはぁ…とため息をつき車へ乗り込んだ。
そして町中へと入り、モーガン車に置いたまま近くの喫茶店へ入りコーヒーを注文する。
「悪いね…このことは先に話しておけばよかったんだけど…私がマーガレットに本当に頼みたかった事はモーガンを殺してほしいって事だ…」
「は…?それってどういう…」
ジャックの言葉にマーガレットは驚いた。モーガンを殺してほしい?ジャックのパートナー的存在のやつを殺さなきゃいけない理由がマーガレットには理解できなかった。
「モーガンはゾンビだって事は知ってるでしょ?」
「ああ…」
「本来ならグレッタはモーガンの体を使って操り人形を作る予定だったらしい。だから死体を盗んで細工をして今のモーガンが出来上がった」
「それは、モーガンは知っているのか…?」
「知ってるわけないじゃん…あいつは過去の記憶が一切ない…消されたんだよ、グレッタに…」
「……っ」
マーガレットは話を聞き怒りを抑えようと持っていたタバコの箱を強く握る。自分の気持ちを叶える為だけに死体を盗んで細工をする、普通の考えならまずやろうと思わない。人として腐っているとマーガレットは思った。
「…わかった…両方殺せばいいんだな…」
「うん…けど、モーガンは出来ればでいい…もし無理なら私がやるつもりだったし…」
タバコの箱からタバコを取り出しマーガレットは吸い出す。そしてマーガレットとジャックは喫茶店を出て路肩に止めていた車へ向かおうとする。するとこちらに向かって走ってきた紙袋を抱えていた少女にぶつかりそうになりマーガレットは避けるが、避けた先にいた同じような少女にぶつかってしまい少女は尻餅をつき抱えていた紙袋を落としてしまった。
「…おっと!大丈夫か…?怪我とかは…」
「大丈夫です…私がちゃんと前を見てなかったから…」
「お姉ちゃん大丈夫!?…あっ!ごめんなさい!」
マーガレットが避けた少女が戻ってきてマーガレットに深々と頭を下げ謝罪した。
「いや、大丈夫だって。けど、気を付けろよー」
「分かった!お姉ちゃん!早くお家に帰ろう!ママが待ってるよ!」
「まっ…待って…!」
少女達は紙袋を抱え、走っていった。
先に車に乗っていたジャックに笑われたがマーガレットは反応せず何か考えているかのような顔をしながら車にエンジンをかけ、ジャックがここがいいと言った宿へ車を走らせた。
「…なあ、ジャック…」
「ん?どうした?さっきの話はもう終わっただろ?」
「いや…さっきの姉妹の事なんだけど…お前はチラッとしか見てないから分かんないと思うけど…気味悪いぐらいに二人共似てた…」
「そりゃあ姉妹なんだから…」
ジャックはそう言い話を終わらせた。だが、マーガレットの頭の中はさっきの姉妹の事でいっぱいだった。
マーガレットも詳しくは見てたわけではないが、服装、目つき、髪の色、髪の長さ、身長が全て同じような気がした。姉妹だと言っても多少の違いはあるはずだがそれが全くない。
例えるなら、自分の隣にもう一人の自分がいるかのように…




