七十四話 教会前
マーガレット達はルイスに指示された場所へ向かおうとしたがドアの外で待っていた黒服の男に呼び止められた。
「こちらへ」
黒服の男はそう言いマーガレット達を隣の部屋へ案内した。部屋の中にはスーツが三着置いてあった。
「これは…」
「ルイス様が着替えろと仰っていましたので」
「ふーん…」
不思議そうにマーガレットはスーツを手に取ると黒服の男は説明を始めた。ざっくりとしか説明されなかったがおそらくマフィアの正装だろうとマーガレットは考え仕方なく着替えようとしたが部屋にはまだ黒服の男がいた。
「…おい。一応言っとくが私ら女だぞ。そこいら辺は気にするから出てけよ」
「あ、これは失礼しました。では、何かありましたらお呼びください」
黒服の男は愛想笑いをし部屋を出ていくとマーガレットは上着を脱ぎ、スーツへ着替え始めた。ポケットからタバコの箱とライター、そしてゴトッと二丁のリボルバーを近くのテーブルの上に置きワイシャツに腕を通す。ジャックは興味深そうにマーガレットを眺めている事に気づきマーガレットは少し苛立ちを感じた。
「何だよ…」
「いやー…マーガレットって意外とタトゥーとか入れてないんだなーってさ」
「タトゥー…別に入れなくていいだろ…」
「私は入ってるよ」
ジャックは腕に彫られた凝った絵柄のスペードのタトゥーを見せた。普段長袖を着ていたジャックの腕を見るのは初めてだったマーガレットはふーんと思いながらジャックの腕を眺めていると腕に無数の傷跡がある事に気がついた。
「その傷はなんだ?」
「あっ…いや…何でもないよ!手品の練習の時に出来たの!…さっさと着替えよう!うん!」
マーガレットが何気なく手首の傷跡の事を聞くとジャックは何かを隠しているかのような素振りをし、話を逸らした。気になったがあまり深追いするのはよくないと思いマーガレットは聞かない事にした。
それから数分後
ガチャッと部屋の扉が開き黒服の男はマーガレット達を見るが、マーガレットを見て一瞬言葉を失いかけた。
「着替え終わりましたかっ…マーガレットさん…ネクタイは…」
「ああ、窮屈だからつけなかったけど別にいいだろ?」
戸惑っている黒服をよそにマーガレットはワイシャツの襟を広げ第二ボタンまで開け着崩し、襟を触りながら言い放つ。
「…ちょっと待っててください…確認しに…」
「別にいいぞ」
黒服の男はルイスに確認しに行こうとくるっと振り返ると目の前にルイスが立っていた。
「お前がその方が動きやすいって言うのならそうすればいい」
葉巻を吸いながらルイスはマーガレットに言い、胸ポケットから拳銃を取り出しマーガレットに渡した。
「なんだこれ…?」
「Cz75だ。護身用に持っておけ」
「いや…銃の型式とかは知ってるけどよ…こういう系統のって慣れてないんだよなぁ…こいつに持たせとくわ」
渡されたCz75を一通り見終えるとジャックに渡し、渡されたジャックはちょっと戸惑った様子だった。
ルイスはマーガレットの行動を見て鼻で笑った。
「まあいい…とりあえず目的を果たしてこい。終わったら戻ってくるんだぞ」
「わかってるよ」
マーガレット達はルイスにそう言い建物を出て車に乗り込み目的地の教会へ向かった。
数分後、車を止めマーガレット達は車から降りた。
「…ここか…」
目の前には高く蔓が生茂る塀、その奥に大きく人気のない古びた教会があった。
鉄製の門は硬く閉ざされマーガレットがぐっと押してもびくともしない。
「…やっぱりか…なぁジャック、モーガン起こして無理矢理開けさせるとか出来ねぇの?」
「出来なくはないけど…待ってな」
ジャックは車へ戻りモーガンを起こす。眠い目を擦りながらモーガンは起き車から降り、ジャックの指示を受け門に手をかけた。
「んー!!…んー!…はぁ…はぁ…開かないぞ…」
息を切らしながらモーガンはその場でペタンと座り込んだ。マーガレットはちっと舌打ちをし、ポリポリと頭を掻いた。
「しょうがねぇ…モーガン、お前は先に塀を乗り越えて周りを偵察しろ」
「わかった!」
モーガンはぴょいと軽々と4m程ある塀を乗り越え辺りを見渡す。誰もいない事を確認したモーガンはぐっと親指を立てマーガレットに合図した。マーガレットも同じように合図し、モーガンの片手を掴み塀を登り越える。次にジャックも同じように塀を超え、人気のない教会へと歩き進めた。




