百話 手紙
とある森の中にある一軒家。
サーニャとロゼッタは二人でのんびりと過ごしていた。
「ご馳走様。今日もサーニャのご飯美味しかったよ」
「はいはい、ありがとうね」
ロゼッタはサーニャの作った料理を全て食べ終え満足そうに言うと、サーニャは毎日のように言われているからか適当に返事をした。
食器を片付け終え、サーニャは二人分の食後のコーヒーを用意しロゼッタの前へ持っていく。
ロゼッタは「ありがとう」と言いテーブルに置かれたコーヒーを一口飲むと片手に違和感があるのか指を一本ずつ折り曲げたりし始めた。
「まだ違和感あるの?」
サーニャはソファに座り不安げに言った。
「うん…。三年前と比べると全然動くけどまだ少し重く感じる…」
ロゼッタは指を動かし考えながら返事をする。
三年前、ロゼッタの体は人間から魔法使いになると必ず起きる「魔法の負荷」の影響で見た目以上に内臓などの衰えが進み始め一時期は歩けなくなるほどだった。
だがサーニャが必死に勉強し手に入れた魔法の力でロゼッタの体は少しずつではあるが、現在では歩けるほどに回復しており、本来なら25歳を超えると体が耐えられなくなり亡くなってしまうのがほとんどだがロゼッタは今年で28歳で回復に向かっているのは奇跡に近い。
「けど、サーニャのおかげで今こんなに元気になったよ!ありがとうね!」
「うん…ありがと…」
ロゼッタの感謝の言葉を聞いたサーニャは少し恥ずかしくなりコーヒーを一口飲む。
「でも、サーニャはすごいよ。私が動けない間にほとんどの魔法を覚えちゃうし…。あっそういえばサーニャ、17歳になったんだから独り立ちしてもいいと思うけどしないの?」
「する気ないよ。だってロゼッタといるの楽しいし嫌になっても帰る当て無いもの」
「あ…そうだったね…ごめん…」
「ううん、いいよ」
サーニャは再びコーヒーを飲む。
すると玄関の外にあるポストからコトンと音が聞こえ、サーニャはポストの中を確認すると白い封筒が入っていた。
「…?誰だろう…?何も書いてない…」
手に取った封筒を確認するが何も書かれておらず誰から来たものなのかわからない為ロゼッタに確認する事にした。
「ロゼッタ、これ何か分かる?」
「ううん、分かんない。でもサーニャ、その持ってる手紙…なんか変な魔力感じるんだけど…」
「変な魔力…?」
「うん、ちょっと貸して」
「はい」
サーニャはロゼッタに手紙を渡しロゼッタの隣に座る。
ロゼッタは封を開け中にある手紙を取り出し開くが何も書かれていない。
「…サーニャ、持ってて」
「う…うん…?」
サーニャはロゼッタに言われた通りに手紙を持つと少しずつ文字が浮かび上がり始めた。
手紙の内容は
サーニャへ
話したい事があるのでローベルク病院へ来てください。
母 ハイネより
とだけ書かれていた。
「お母…さん…?」
サーニャは手紙を持つ手が震え始め自然と涙が溢れ始める。
「サーニャ…?大丈夫…?」
「うん…でも、私が小さい頃にお母さんは亡くなったはず…」
「だよね…。でも、もしこれが本当だとしたらサーニャはお母さんに会いたい?」
「うん、会いたい」
「そっか…分かった!行こう!今から!」
ロゼッタは立ち上がり準備を始めたがサーニャは突然の事に驚きを隠せなかった。
「えっ!?今から!?」
「うん!だってローベルクはここからかなり距離あるし今行けば間に合うよ!サーニャ!早く!」
「あー!分かったよ!準備するから待って!」
サーニャは仕方なく立ち上がり旅の準備を始めた。
ロゼッタの人の事を考えないで動く事には少し呆れてしまうがそれ以上に三年前まで歩けず、愛想笑いしかしないロゼッタが今までの笑顔で楽しげに旅の準備をしているのを見て嬉しくなった。




