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転生システムに致命的エラーを発見してしまったのだが  作者: みももも
第肆章:転生世界(帰還)

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護衛任務(1)

 その後は大きな問題も起こらず、やがて飛空艇は徐々に高度を下げアルツナイの郊外にある村落の港塔に着陸した。

 クエストの集合場所はちょうどこの地区の近くにあるらしい。

 自分たちは乗客達から名残惜しむように見送られながら船を出て、港に降りた。


 数隻の飛空艇が停泊する港を出て外の様子を見下ろすと……そこには一面に緑色の段々畑が広がっている。

 数名の、農家と思われる人達が、収穫しやすい高さに選定された低木から丁寧に想いを込めて、一芯二葉を摘み取っている様子を見ていると、リコが自慢げな顔をしながら胸を張った。


「ミト、すごいでしょ。これ全部、薬草の畑なんだよ!」


 彼女によると、ここに植えられているのはすべてポーションの材料になるらしい。

 薬草と言えば、森に自生している物を収穫するのが普通だと思っていたのだけど、こうやって人工的に栽培する品種もあるようだ。

 というかもしかしたら、収穫量を考えたらこっちの方が一般的な可能性もある……詳しいことは知らないけれど。


 農家達の手によって収穫された薬草は専用の機械に入れられて、最終的に細かい粒状に加工され箱詰めされていく。

 ほとんどはアルツナイの都市部に向けて発送されるけど、一部は飛空艇に積みこまれて世界中に輸出もされているらしい。

 こんな田舎に港があるのは、もしかしたら薬草を出荷するのに都合が良いという理由もあるのかもしれないな……

 なんてことを考えていると、呆れ顔のコハクに「あんたたち、早く行くわよ」と急かされたので、自分たちは塔を出た。


 あまり舗装されていない山道を歩くと、貴族の別荘のように豪華な建物が見えてくる。

 更に近づくと建物を囲むように陣幕が設営されていて、中から完全武装した数名の兵士が現れた。


「お前達は?」

「自分たちは、黄牛の冒険者です。護衛クエストを受注しています」

「そうか。しばしここで待て……」


 仏頂面の兵士達が陣幕に帰っていくと、その後自分たちはしばらく野ざらしで待たされる。

 そのまま音沙汰もなく、十分近くが経過した。

 リコが「遅い……」と愚痴り、黙ったままのコハクも苛立ちながら薄らと笑う。

 自分が「もう帰る?」というタイミングを見計らっていると、ようやく中から一人の男が現れた。


「よお! 俺がこの部隊を任されている、ニバルだ。お前達が黄牛の冒険者だな?」


 豪快に笑う彼に「自分は……」と名乗ろうとしたら「ミトとリコと、コハクだろ」と言われて、自分たちは言葉を失った。

 リコとコハクから殺気に似たオーラを感じるけれど、ニバルさんは気にする様子もなく、淡々と説明を続けていく。


「俺達はとある議員(・・・・・)の護衛をしている。お前らにはその議院が運ぶ荷物の護衛をしてもらう。出発は今日、日が沈むのと同時だ。遅れたら置いていく。良いな!」


 一方的に言い切った彼はそのまま陣幕の中へ戻ろうとして、コハクに「待て」と引き留められて立ち止まった。

「なんだお前……質問か?」

「そうじゃなくて……なに? あんた、仕事を依頼しておきながら護衛対象の名前も教えないつもりなの?」

「ああ。俺はお前達を信用してないからな。気に入らないなら断れば良いぜ、ペナルティが怖くないならな!」

「「はぁ!?」」


 リコとコハクが声を合わせて殴りかかろうとするのを、自分はギリギリのところで引き留めた。

 精霊力で身体を加速してギリギリのところで二人の腕を掴むと、憤怒の形相を浮かべる二人にギロッと睨み付けられる。

「待って、リコ、コハク。この人相手に怒ってもしょうがないよ。落ち着いて……」

 自分も怒りが湧かないわけではないのだけれど、我を見失っている二人を見ているせいで逆に冷静になったのかもしれない。


 そして……怒り狂う二人の少女を見ても、ニバルさんには怖がるような様子がない。

 おそらく彼自身もかなりの実力者で、襲われたとしても制圧できる自信があるのだろう。

 そんな彼は二人を押さえる自分を見て「ふっ」と笑い、握っていた拳をゆっくりと開き肩の力を抜いた。

「ミトとか言ったか。賢いのはお前一人のようだな……いいか? そもそも今回のクエストはタウリの坊ちゃんが勝手に募集をしただけで、護衛なんて俺と俺の部下だけで十分なんだよ! 報酬は出してやるんだから、お前達は黙って従えばいいんだ。わかったか!」

 それだけ言い残して彼は陣幕の中に姿を消した。

 自分はそのまま二人の手を掴んだまま、少し離れた大樹の木陰まで引っ張った。


「なに、あの、クソ野郎! なんで、あんなやつの命令に従わなきゃいけないわけ!?」

「リコの言う通りです。ミト、なんで私達を止めたんですか!」

「なんで……って、そりゃ、これが仕事だからだよ。ニバルさんを殴っても何も解決しないでしょ?」


 たしなめるように落ち着いた口調で話すと、二人は「それは、そうですが……」と俯いた。

 納得したわけではなさそうだけど、とりあえず怒りの感情は落ち着いたようだ。


 とりあえず、自分たちは自分たちに出来ることをする。

 危なそうだったら助ければ良いし、何事もなさそうならそれに越したことはない。


 三人で話してそんな結論を出して、日が沈むまでの間せっかくなのでこの辺りを観光することにした。

 薬草摘みの体験をしたり、積み立ての薬草が加工される様子を見ていたりするうちに気持ちが落ち着いていった。


 自分たちが摘んだ分はこれから数日掛けて乾燥や発酵させたりと、様々な工程を経ることになるらしい。

 流石にそれを待つ時間は無いので、代わりに完成品の薬粉をお土産に買う。

 アルツナイの加工屋に持ち込めば、これでポーションを作ってくれるのだとか。


 そんなこんなで暇を潰していると、やがて日が沈み、指定された集合時間になる。

 多数の魔術的な光源で照らされた辺りには、自分たち以外にもふてくされ気味の護衛が数組集まっている。

 どうやら彼らも、自分たちと同じようにクエストに参加した冒険者のようで、ニバルさんへの悪態を口々に呟いていた。

 彼らも冒険者としてはプロのはずなので、仕事は仕事と割り切ってくれると思うが、息苦しさすら感じる空気のせいで、同業者同士が気軽に挨拶するような気にはならなかった。

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