山龍討伐二日目(幕間3)(2)
「なるほど、魔力を属性ではなく『破壊力』に変換することで、他属性への変換を阻害するわけですね」
「うむ。 熱や音、光などのいわゆる『属性魔法』ではなく、もっと純粋なエネルギーに変換しておる。
これで攻撃力が上がることは確かなのだが・・・」
「確かに、属性は純粋であるほど他の効果を受けにくくなりますからね」
たとえば、チシロさまが魔獣に対してナイフで切りつけるなどの『純粋な攻撃』を行った時、一見すると『ノーダメージ』という結果に終わっているようですが、実のところは限りなくゼロに近いダメージを確かに与えているようなのです。
まあ、相手にとってはそれこそ「そよ風が吹いてきた」ような感触なので、『ダメージ』と言って良いのかは怪しいところですが。
しかし、それに対して『炎属性を付与したナイフでの切りつけ』や『属性効果のある魔法』の場合は明確に敵が『回復』しています。
このことから、チシロさまが相手にダメージを与えるために重要なのは『属性の強化』ではなく、純粋な『攻撃力』や『破壊力』を高めることになります。
そのほかにも、大量の破壊魔法を同時発動して一つの効果を生み出すようにすることで、仮にいくつかの破壊魔法が『やさしさ』の影響を受けて弱体化したとしても効果を発現できる工夫や、魔法による攻撃対象を人や獣などではなく『範囲』にすることで、『やさしさ』が働きにくくなるようにしてみました。
結果的に私やライアが使えば『山ごと消し去りうる魔法』が完成したわけですが、まあチシロさまならそこまでの威力には至らないでしょう。
「というか、ここまで用意しておいて言うのもなんなのですが、
チシロさまがこの術式を使っても、ろくに効果を発揮できない未来が目に見えると言うか・・・」
試してみないことにはなんとも言えないのですが、せいぜい小さな獣を倒せるかどうか。
運が悪いと、と言うか、高確率でおそらくまた『ゼロダメージ』という結果になってしまうような気もします。
やはり、『チシロさまが攻撃する』ということ自体が無理なのでしょうか・・・。
「そのことなのだがな、マテラよ。
我が思うに、実際のところチシロは本気で敵を倒そうと想っていないのではないか?」
「何を言っているんですか! ライアには、チシロさまが手を抜いているように見えるんですか?」
「ま、まあ、熱くなるでない。
我とて、『チシロにやる気がないから結果が出ない』などと言ってチシロを貶すつもりはない。
そうではなく、『無意識に手加減してしまっているのではないか』ということだ」
「『手加減』ですか?
ですが、相手はただの魔獣ですよ?チシロさまに手加減する理由などないと思うのですが・・・」
そもそも、魔獣に手加減をする理由などあるのでしょうか。
魔獣はこちらに襲ってきて危険ですし、高級な素材を落とすこともあります。
それに、サポートブックにも「魔獣を見かけたら、可能なら討伐しましょう」って書いてあるのですよ?
「だがマテラよ、考えてもみよ。
そもそもチシロにとって、魔獣と戦う理由とは一体なんだ?
チシロはなんのために魔獣と戦いたいのだ?」
「それは・・・、そうですね。
言われてみると、そもそも『チシロさまが頑張らないといけない理由』の方が存在しないような・・・」




