第五十五話
第三の門の前に到着したのは、冒険者、捜索者、合わせて16名に絞られました。
他のメンバーが全て死んだ訳ではないのですが、今日中に攻略となると援軍は期待できないです。後方では、今も戦闘を続けている音が、風に乗って聞こえてきます。これ以上長引けば、都市に広がっているモンスターが集まり、攻略が更に難しくなるでしょう。
「さって……最後の門番はっと……」
大きく口を開く門と、その前には大きな堀。さすがに、貴族様が住んでいた城に出入りする門ですね。跳ね橋が下りているだけ、幸運だと言えるのですが、その門の奥に立つ、2本の1メートルはありそうな土の柱が気に成りますね。
まったく、趣味が悪いとしか言えないのですよ。
このまま橋に突っ込もうとするボニファーツのパーティーを、剣を横に突き出して止めます。
「っ!なんだ。どうかしたのか?」
トロール装備で身を固めたボニファーツが、怪訝そうな顔で聞いてきました。正確には僕と同じフルフェイスなので、表情は見えないのですが、声の感じからの予想ですけどね。
僕も理由を説明しようと思ったのですが、止まらずに突っ込んでいった捜索者の一人が橋に脚を掛けると、黒い奴らが群れでその冒険者に襲いかかります。慌てて払いのけようとしますが、数が数ですし、体中がそのモンスターに覆われ、堀の下に落ちて行きました。
水音と共に悲鳴が聞こえますが、水中から現れたモンスターに襲われ、水中に引き込まれた後、濁っていた海面に赤が広がって行きます。
「まったく……ここまで大型だったのに、次は小型モンスターの群れとか……蟻ですよ。それも、大量のね」
元々、橋は黒くなんてないのでしょうね。黒く見えるのほどの無数の蟻に覆われた橋なのです。土の柱は蟻塚ですね。水中に居るのは、陰から判断するにゲンゴロウ型のモンスターだったと思います。
堀を渡るか?橋を渡るか?その方法は?時間的な余裕は?一度引き返すべく?再度、侵攻は可能か?
色々な考えが頭の中を駆け巡ります。正直なところ、この期に及んで迷っているのですが……ここは進むべきですね。
「どうする?」
「……手はありますよ」
後方に居たボニファーツの言葉に、正面の橋を見ながら答えます。
僕の言葉に、ボニファーツ達からだけでなく、近くに来ていた捜索者パーティーからも驚きの気配を感じました。
複数の視線を感じる中、振り向きながら両手で持った大剣に、視線を誘導するため、大きく上段に構えます。
「切り札を使います。この剣……魔剣ゾルタンの力を使って、橋の蟻を吹き飛ばし道を作ります!」
本当は、ゾルタンの力を借りつつもりなのですが、説明が面倒なので、魔法の剣って事にしました。自信満々に告げるのは、ハッタリですけどね。
「回数に制限があるので、チャンスは一度だけ……蟻の巣だと思う土の柱は、攻撃魔法や遠距離でお願いしますね」
適当な理由を作って、橋の方に体を向けると上段のまま、集中するように大きく息を吸いました。下手な質問されるより、勢いで押し通そうと思うのですよ。それに、ここまで進んで来られた熟練のパーティー。一度のチャンスと聞くと、驚きを抑えつけ、突入の陣形に移行していきます。
「何をさせる気じゃ?」
「僕の周りに暴風をお願い……突っ込んで風で吹き飛ばす。橋が無事だって事は、木を食わないように命令されてると思うからさ」
「それは良いが……残りの魔力を考えると、今日は、あと一回だけだと思っておれ」
小声でゾルタンに告げたのですが、出来ないって言われなくて良かったですよ。残り一回あるだけ上等ですしね。
小さいモンスターの群れなので、毒系統の魔法をお願いしようかとも思ったのですが、下手に抵抗力が強かったりしたら怖いので、吹き飛ばす方を選択しました。水だと、足場が濡れて、水中からのモンスターの襲撃の時に問題になる可能性もありましたしね。
それに、あまり邪悪なイメージを残したくないですし……今更ですけどね。
「エルヴィーラは、僕の後ろに……じゃぁ、行きます……よっ!」
準備が終わる気配を感じると、後ろ見ずに告げます。上段に構えていた切っ先を、正面に向け、剣から吹き荒れる風が周囲を包むと一気に駆けます。
スピードではエルヴィーラの方があるので、置いていく心配はないのですが、弓は流石に使えないですよね。
僕たちを先頭に、ボニファーツのパーティー、更に捜索者パーティーと続いて橋を渡って行きます。
風に耐え、突破しよう頑張る蟻もいるのですが、小さいのが裏目に出ていますね。風に弾き飛ばされ、堀に塊で落ちて行きます。
橋の上の黒い絨毯を切り裂くように進んでいくと、異変に気が付いたのか水中の気配も近づいてきますが、悠長に待つつもりはありませんよ。
そのまま土の柱、蟻塚の間を突破すると、後方の冒険者と捜索者から、それぞれ油の入った小さな壷が投擲されました。壷が割れる甲高い音と共に油の香りがしたように思えましたが、風を纏っているので、それは気のせいですね。
蟻塚を駆け抜け、門を抜けると後は、魔界の木まで遮るものはないのです。
後方の蟻塚に火が放たれ、その燃え上がる炎を背後に、僕たちは最後の難関を突破し、この騒動を終わらせるため、街の中心部に進撃を続けます。
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