↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
53/63

第五十二話

 広い通りを一直線にモンスターとの戦闘を続けながら進んでいたのですが、第二城壁まで後50メートルを残すところで、先頭集団が大きく開いた門の天井部分に、それを発見してしまいました。


 張り付くように作られた、大きな蜂の巣。それも土を固めてではなく、この都市に居た動物の死骸を使って作られたように見える巣は、高さ8メートルはありそうな門の半ば近くまで達しています。


 おまけに、その周囲には無数の1メートルクラスのスズメバチ、キラー・ホーネットが群れをなして飛び回っていました。ざっと見ても20匹近くはいますよね。ここまでの戦闘で負傷した冒険者も居ますし、もう直ぐ夕暮れ、体力の消耗も考えるとこれ以上進むのは実質不可能です。


 冒険者グループを纏めていたボニファーツも同じ結論に達したのでしょう。この日は、無理に進行せずに、第一城壁門まで戻る事に成りました。この簡易陣地で負傷者の傷の手当てを行い、最低限の休息もし、態勢を整え明日に備えますが、正直、厳しくなってきていますね。


 何気にこの都市、中心部の方が少し高い位置にあるようで、緩やかな登りを侵攻しているのですが、これが予想以上に体力を奪い、速度も殺されています。それにモンスターとの戦闘が合わさると、今はまだ大きな問題になっていないですが、日数の経過が不利に働いていきますね。


 例えばの話――


 北部平原に駐屯する帝国軍と連携を取り、北と東から同時侵攻。帝国軍は門の制圧後、南東方面を広範囲で掃討、同時に冒険者グループは北西方面を広範囲で掃討。終了後、第二城壁北門周辺に弓兵隊を展開。火弓を多数使い火計で巣ごと掃討。


 ―――なんて出来れば都市外周部の四分の一以下を攻略するだけで、被害を少なく攻略は可能かもしれないのですが、生憎と現状そこまで帝国軍に兵力はないのですよね。


 なら帝国軍が来るまで時間を掛ければと良いかと言えば、今度は難民の疲労なんかを考えないと駄目になってくるのですよね。すでに一週間以上経過しているこの異変。何の訓練もしていない一般の人々には厳しい現状でしょうし、不平不満もこれから更に増えてくるでしょう。

 

 さらに長期化が進めば、モンスターは更に数を増やし、奪還が困難に成るのは理解できるのですが、このまま最低限の人数で攻略を続けても、かなりの確率で擦り潰されるだけなのです。まったく、面白くない話なのですよ。


 外周壁東門の野営地から、篝火が無数に焚かれた明りに照らされる都市を、台車で作られたバリケード越しに眺めながら考えていると、後ろに立っていたエルヴィーラが、密着するようにして耳元で小さく囁きました。


「逃げどきかもね」


 でも、気持ちは理解できるのです。今はまだ、攻略が開始されたばかりで、そこまで苦戦しているように感じないかもしれないですが、それはマウスから来た冒険者や捜索者たちの錬度が高く、年に一度は大侵攻の経験者も多く、多数のモンスター戦闘に慣れているから。先を考えると不安要素の方が遥かに多いのが現実なのです。


「そうなんだよね。正直、ギルドの作戦次第じゃ……」


 現状を打破しようと思えば、無理しなければいけないのですが、その無理のレベル次第では逃げないと駄目だと思うので、小声で答えましたが、きっぱり即答もできませんでした。


 この都市や帝国に愛着がある訳でもなく、自分でも何を躊躇っているのかと思うのですが、どうも気に成る事もあって……好奇心は猫を殺すと言いますし、もっと冷静になれると思っていたのですけどね。


 それに、僕が骨の時の数少ない覚えている事の中から話した現象に刺激を受け、新しい術式の構築に夢中で静かですが、古代から英知、ゾルタン先生が居ます。相談したり、古代魔法を使って貰えれば打破できる可能性もあるのですよね。


「ここに居たの。ギルドの人が呼んでるわよ」


 二人で寄り添いながら、今後について考えているとサラが僕たちを呼びに来ました。警戒は他の人と変わり、ギルド職員がいる場所に行くと、ボニファーツを中心にベテランと言われる冒険者たちが集まっていました。何事でしょう?


「良く来てくれました。実は……」


 その年配で丁寧に話しますが、逞しい体躯に使い込まれた硬皮鎧(ハードレザーアーマー)を装備したギルド職員さんが説明してくれました。要約すると、第二城壁門の巣には、他の冒険者パーティーが弓などの遠距離攻撃で担当し、巣を撃破したら強引に僕たちが突破、更に奥に向かうと言う強引な突破作戦の提案でした。


 危険度は跳ね上がるのですが、時間を掛けても被害が増えると言う事で、報酬の上乗せを条件にベテラン冒険者たちは了承していました。まぁ、このままじゃ不味い事になるのは理解しているのでしょうね。


 ギルド側も、被害が増える前に一気に決着まで持っていきたいようです。もしかしたら北部の帝国兵か騎士の生き残りから、早くしろって言われたかもですね。


「ヴァイデが前線に出てくるんだ。攻略は簡単になったな」


 ボニファーツが大きな笑い声と共に、僕の背中を強く叩きながら宣言した後、解散となったのですが、なんですか?その高評価は。他のベテレン冒険者さんたちも同意するように笑顔で、それぞれの休息場所に戻って行ったのですけど、え?エルヴィーラやサラ達も納得した顔で頷いているので、不思議そうな顔になっちゃてるのが自分だけだって理解できますよ。


 まだ、色々と迷う事も多いですが、この作戦に乗る事になったのです。もちろん危険度は増しましたが、勝算もない訳ではないのですしね。決行は朝日が昇ってから、モンスターへの警戒は、ギルド側が担当してくれますし、僕たちも休みましょう。


 明日を生き残るために、休息は必要ですよね。

ご感想、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。