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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第五十一話

 中二っぽい名前を考えて現実逃避をしながら、大きなGを倒し続けていると、軍全体が外周壁の東門に辿りつきました。この東門を確保する時は、前後だけでなく上からも飛んで来やがって……動きは早いけど見切れない早さではなかったので問題ないと言えばないのですけどね。


 怪我はなかったけど気分は最悪です、本当。


 サラは戦力外、リコはサラのお守りで戦闘に参加していませんでしたが、頑張りすぎたサッシャは軽く怪我していました。危なくなった時に、何度か助けたのですが、一人で頑張りすぎです。僕だって、エルヴィーラの援護射撃がなければ厳しいモンスターでしたしね。


 早朝に始まった戦いは、昼近くまで掃討戦が続き、厚い雲の向こうで輝き続ける太陽が真上に着た頃、周囲からモンスターの気配が消えました。


 安全が確保できると物資を下し、台車でバリケードを作って行きます。ここまでは予定通りですね。ちなみに押してきた冒険者は新人も多く、今はモンスターの素材を剥ぎ取り作業に移っていますね。それもギルドの予定にあった通りなのですが、ご愁傷様です。


「なんなの!あいつら……最低よ!!」


 モンスターが居なくなるとサラが復活。文句を元気に言っていますが、そもそも戦ってないですよね?


「戦ってない奴が言うかよ」


 おや、心の突っ込みと同期したように、顔を顰めたサッシャから文句が飛んできましたね。案の定、サラと口喧嘩を初めて、リコが困る状況になっています。そんな騒ぎを無視して、エルヴィーラはギルド職員に声を掛け、矢の補給をしていました。予想より消費したみたいですね。


 僕は、剣を磨きながら、この後の予定のお浚いなのです。


 都市を横断する大きな通りを第二城壁まで進んで、そこの確認。もしモンスターが巣を作っていたら排除を太陽が沈む前に終わらせたかった計画なのですが、東外周壁門の攻略に午前中だけで時間は予想以上に過ぎていますし、厳しいかもですね。


 ちなみに進むのは8グループ、約50人です。もちろん怪我人とかも出ていますし、戦闘不能になった冒険者は後方陣地に、これから輸送されます。それにこの場所の防衛にも人員を残さないとですしね。これまた予定よりも人数が減っているのですが、まだ許容範囲でしょう。捜索者のグループも居ますしね。


 捜索者グループと合わせると合計で100名ほどになるので、突っ切るだけの戦力としては問題ないのです。流石に都市の捜索をするのは時間的にも戦力的にも無理ですけどね。そもそも発生から一週間以上経過していますし、生存者は厳しいと思うのですよ。


 軽く食事と水分補給を兼ねた休息を終えると、兜(ヘルム)を装着し戦いに備えます。それを見た皆も騒ぎを止めて自然と集まって来ました。少しするとギルド職員から指示が飛び、大通りの突破が開始されました。


 いくら広い通りとは言え、流石に全ての冒険者、捜索者が並んで進むのは不可能なのでグループごとに縦に並び進みます。右側が冒険者、左側が捜索という感じですね。これなら、お互いの武器を振るうスペースは十分ですし、緊急時には後ろのグループが即座に対応できそうです。


 冒険者側の先頭にはトロールシリーズで身を固めたボニファーツのパーティーが陣取り、僕たちは最後尾を任されました。それなりに人望もあるボニファーツの所なら安心ですね。軽く掛け足で暫く進んでいくと、最初の戦闘が開始されました。


 ボニファーツと後ろに居たパーティーで囲むように対応しているので、どんなモンスターか見えないですが、第三陣の第四陣のパーティーがその先頭の横を抜け、増援を断つために更に前進を始めます。これで半分、残り半分に属する僕たちは待機なのです。


 待機と言っても周辺に気をつけないとですけどね。大きな通りから枝分かれする道や路地なんか無数にありますし、虫型モンスターは屋根の上からでも平気で襲ってきます。


 今も後方、つまり僕たちの方に屋根伝いに接近して来る気配を察知しています。背中の鞘から白水晶の大剣(クリスタル・ソード)を抜くと、最後尾に移動し、その行動に合わせてエルヴィーラも黒水晶の長弓(クリスタル・ボウ)に矢を無言で番えました。


 リコとサラ、それにサッシャも慣れてきたのか、獲物を抜いて、それぞれの位置に移動していると、近くの家の屋根から大きな影が降って来まました。2メートル近くあるその姿はまさにカマキリ。緑の体躯に赤い大きな目をしたジャイアント・マンティスって奴ですね。


 振ってきたと同時に僕が切り込みます。十歩ほど距離が離れていましたが、此方から距離を詰めるのに合わせるよう、ジャイアント・マンティスも四本の足を器用に動かし接近してきたので、つい小さく舌打ちしてしまいましたよ。機先を制したと思ったのですが、そう上手くいかないものですね。流石、複眼ってことなのですかね。


 お互いの斬撃が届く間合いで、大きな右の鎌を振り上げ斬り掛かってきた速度は尋常じゃないです。全力で突っ込んだので回避は諦めて剣で受け止めましたが、互いに振り抜けなく拮抗してしまいました。


 これは最悪。


 此方の最高斬撃点に到達する前に、鎌に受け止めた事実から、攻撃速度はジャイアント・マンティスの方が上だと理解しちゃいました。


 完全に決まれば鎌ごと持って行けると思ったのですけど、さすが天然の狩人。こちらの予想以上に厄介ですね。それにジャイアント・マンティにはもう一本、鎌が残っていますからね。


「させないってのよっ!」


 このまま反対の鎌が振り下ろされる前に、サラがジャイアント・マンティスの左側面に回り込み、鎌の付け根に二刀を切りつけ牽制します。ダメージは少ないですが、それでもあまり硬くないジャイアント・マンティスには効果があり、嫌がるように鎌を振り回しながら暴れますが、それはサラの俊敏なバックステップで回避されていました。


「俺もいるぜ!」


 サッシャも斬り込み、リコはいつでもフォローできるよう一歩下がった距離で盾を構えていますね。エルヴィーラも矢を番えたままタイミングを計っていましたが、ジャイアント・マンティスが複数の敵に対応する動きを見せた隙に僕が一歩下がると、矢を放ちました。


 その大きな複眼一つに矢が刺さり潰した瞬間、その死角に潜り込み迫る鎌を、身を屈めて避け交差しながら細い腰を両断するように剣を思いっきり振り抜ききました。痛みは感じないのか、目を潰された時でも速度に変化はなかったですが、見えなくなったのは事実でしたしね。狙いが甘くて避けるのは簡単でしたよ。


 ジャイアント・マンティスの上半身と下半身を泣き別れさせると直ぐに振り向き、周囲を確認すると、モンスターの追撃もなさそうですし前方の戦闘も終了しましたね。


「相変わらず、ふざけた威力だな」


「馬鹿力よね」


「す、凄いですよ」


 サッシャ、サラ、リコと順に、上半身が回転するように斬り飛ばされたジャイアント・マンティスの死骸と剣を振るって体液を飛ばす僕を交互に見て、何か呆れたような感心したような事を言っていましたが、聞きません、聞こえません。違うと自覚は少しあるけど、普通だと足掻きたいです。


 エルヴィーラは分かっていると微笑みながら頷いてらっしゃいますが、それはそれで何か色々と……えぇい!後で復讐してやると、心の中で硬く誓いましたよ。その大きな胸洗って、おぼえてろぉなのです。


 さ、さておき、このまま何事もなく、第二城壁門まで進みたいものですよね。誤魔化してなんかないですよ。

感想が増えた嬉しさのあまり、文字数が増えてしまいました。


ご感想、お待ちしております。

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