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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第四十六話

 冒険者の町マウスの冒険者ギルド支部が、今、慌ただしさを増しています。


 原因は、城壁都市ストーンヘッドからの急使だと理解しているのですが、まだ詳しい内容までは不明な状態なのです。


 でも、僕達意外にも、その時ギルド内に居た全ての冒険者に待機命令が出ました。ギルドの強権が発動しましたね。それもフル装備で待機なのですから、緊急事態なのでしょう。冒険者が溢れかえるギルドの受付前は、そんなに広くはないので大変ですよ。


 自然と他のメンバーと纏まる形で壁際近くに居て、長い時間を過ごしましたが、昼近くにようやくカウンターの前にギルド副支部長のベルトラムが現れました。ざわついていたホール内の冒険者に、腹に響く大きな声で注目と叫んだ後、静かになってくると説明を開始しました。


「緊急事態だ。城壁都市ストーンヘッド内に、大型モンスターが出現した」


 ホール内に、驚愕の空気が広がって行きます。また少し騒がしくなりそうだった冒険者たちに、ベルトラムが落ち着くように注意した後、説明を続けます。


 要約すると、ストーンヘッド中心部に未知の大型モンスターがいきなり出現。そのモンスターから更に無数の小型モンスターが湧き出て、都市は混乱状態に陥っていると言う事です。


 大型モンスターは大木タイプで、小型モンスターは昆虫タイプだという情報も伝えられました。幸か不幸か、大型モンスターは根を張って移動できないようなのですが、出現した理由は現状では不明みたいですね。


 問題は、このまま放置しストーンヘッドの破棄を帝国上層部が決定すると、マウスも完全に終わってしまうと言う事なのですよ。地理的な問題もありますが、元々が東部に広がる遺跡群への拠点として生まれた町なので、独立して維持していくのは不可能ですしね。農業なんかしてないので、食料事情はストーンヘッドからの運搬で賄っていましたしね。


 帝国としても、ストーンヘッドは南方蛮族群に対しての睨みとして中心的な役割のある都市なので、簡単には見捨てないと思うのですが、都市として機能できないとなると放棄するしかないですよね。それでも軍を動かすには時間も必要ですし、準備が整うまでの時間稼ぎのためにも、冒険者が動かないと手遅れになる可能性も……。


 ギルドの方でも同じ考えになったようですね。この町を守るための最低限の戦力は、ギルド職員がするので、動ける冒険者は全てストーンヘッドに向かえという命令です。もちろん報酬に告げられた金額は高額なのですが、成功報酬だけでした。失敗すればマウスが滅びるから当たり前ですよね。


 この情報は、冒険者だけでなく捜索者の方にも流すそうで、大規模な部隊が出来るとサッシャなんかは興奮気味に言っていますが、そうそう上手く事が運ぶとは思えないのですよね。


 数だけいても連携訓練なんかしていない、まさに烏合の衆。大侵攻の時にも似たような事をするのですが、今回は遠征ですしね。これは途中で逃げる事も考慮した方が良いかもです。正直、マウスやストーンヘッド、極端に言えば帝国にも思い入れは少ないですよ。別の国も将来的には見てみたいと考えていたので、ちょっと早くなるだけなのです。


 それでも、ストーンヘッドに出現したっていうモンスターを見てみたいですし、他のモンスターとの戦闘経験も積みたいので、死なない程度には頑張りますよ。逃げることを考慮している冒険者は他にもいるみたいですしね。軍隊じゃないので国のために命を掛けろと言われても、無条件に了承なんかしないのが普通ですよね。


 何を考えているのか表情から読まれないように、兜(ヘルム)のフェイス部分を下して顔を隠していたのですが、隣に立っていたエルヴィーラには隠せなかった気がします。なんとなくですが、サッシュの声を聞いた時、小さく苦笑していましたしね。


 サラとリコも妙にやる気を見せているので、ホール内を見渡すと若い冒険者たちの方がやる気なのですが、この雰囲気に流されないようにしないと。命は一つしかないですし、大事に使えば一生使えるのです。


 食料や薬類など消耗品はギルドが準備するそうで、出発は今日の夕方との事です。急ですが一刻を争うかもしれない状況なので、仕方ない事ですよね。僕たちは元々、外に出るつもりで準備していたので問題なかったですが、何組かの冒険者は慌ただしく準備のためギルド支部から出ていきました。


 僕たちは待ち状態ですね。適当な椅子が空いたので腰掛けて出発の時間まで考える事にします。一応は短期間でも住んでいた都市なので、地理的には問題ないのですが、外壁が厄介になるかもしれません。門が開いたままであることを祈るばかりです。


「やってやるんだから。これで私の名前も一目置かれるようになるのよ」


「残念だったな。それは俺だ。サッシャが、マウス一の冒険者ってなっ!」


 何でしょう、あの二人のやる気。血気盛んに突っ込んで、最初に倒れる未来しか見えないのですよ。それに巻き込まれて……あれれ?肉の時の最後の焼き回しになりそう。これは注意しないと。なんだか心配事が関係ない所から増えている気がするのですが……死なないように頑張るしかないですよね。

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