第四十四話
すっかり夜も更けて頃、漸く町に戻って来ました。一週間以上、町の外で過ごしていたので、そのまま宿で休みます。さすがに色々と疲れましたよ。その夜はぐっすり寝ましたよ。ベッドは一つしか使ってないですけどね。
「若いのぉ…そして、お主は変態じゃ!」
「どうして宿の壁薄いのよ!」
「……えっと……あのぉ……」
デバ亀共が、朝から何か言っていましたがスルーします。エルヴィーラも気にしていないですしね。まぁ、肉体のない幽霊みたいな存在や、お子様達に聞かれても、どうって事ないのです。言うと同じ年とか突っ込まれそうですけどね。
そんな元気なサラ達と部屋で合流すると、素材の分配や、余った素材の売買について話し合い、まずはギルド支部に向かう事になりました。
ギルド支部に向かう途中、ゾルタンが物珍しそうに町を眺めていました。もちろん普段の姿は目立つので背中の剣に収まったまま姿を見せてないのですが、時折、感心したような声が聞こえるのですよね。元々は研究者だったみたいですし、知的好奇心が刺激されているのでしょう。
ギルド支部に入ると流石に黙ってもらいましたよ。猫耳だけがキュートな受付のイェフに素材の売買を頼むと、結構な金額になりました。税金で一割以上引かれても、冬は余裕で越せそうですね。ワームや研究所から持ってきた素材が高額で取引されたようで、緊急時に、また使えるかもですよ。
鑑定の時間もあったので、ギルドを出たのは昼前になっちゃたですけど、サイフの中身は満足のいくも物になっています。
客が何時もいないダニロの店に来ると、サラとリコがさっそく装備の相談を始めました。僕たちは付き添いなのですよ。いや、デスワーム素材、ワイバーン素材より柔いですし、ミスリルも量が少ないですしね。リコとサラに譲りました。もちろんお金は大目に貰っているので問題ないのです。
サラは、デスワームの皮で軽皮鎧のセットを、リコはデスワームの牙とミスリルと鉄の錬金素材で軽鎚矛を注文しました。リコの武器の選択には理由があるのですが、それは完成してから試す予定なのです。
二人の装備で二週間は懸かるそうで、前金を渡した後、本当に必要最低限しか喋れなかったダニロの店を後にします。途中、武器と防具が売っている店に寄り、リコは鎖帷子と円形盾、サラは投擲用短剣と短弓に矢のセットを購入していました。全てホブゴブリンの骨と鉄の錬金素材をしようと言う事で、今回の稼ぎで装備を充実させるみたいですが、財布の余力が、少し心配ですね。
こちらも鎧の微調整に1週間は掛かるそうなのですが、そこは新しい武器と合わせて問題ないですね。
その後、細かい小物や、日持ちのする消耗品の購入なんかを終えると、夕方になってしまいました。大荷物になったので今日の宿を探していると、ノルベルトの宿に空きがあったの、長期間の滞在契約をしました。二人部屋を二つ、それも二階の角部屋とその隣と、なかなか良い場所が開いていたので決めたのですけどね。
荷物を置くと、皆で揃って夕飯に、少し離れた冒険者が良く集まる酒場兼食堂に向かいました。リコ達、集る気かもですが、冒険成功も兼ねているので今日だけは特別に目を瞑りましょう。財布に余裕があると気が大きくなるって本当ですね。
僕もエルヴィーラも、鎧は脱いでソードボアの皮で作った黒い服なのですが、背中に白水晶の大剣を剣帯で装備したままなのです。これはゾルタンが、もっと色々と見てみたいと我儘を言ったからなのですが、リコとうサラが鎧姿なのが不思議です。さすがに武器は短剣ぐらいなのですが、それは皆の同じですしね。
時間帯的にも混んでいる酒場でしたが、一つ、壁際のテーブル席が開いたので、僕とエルヴィーラが壁際、向かい合うようにリコとサラが座って適当な料理と酒を注文し、食事にします。
他にも騒いでいる冒険者が沢山いたので料理を運んできた店員に聞いたところ、輸送依頼で返ってきた冒険者たちが多いからだそうです。往復したにしては早い気がしたので聞くと、途中に盗賊とモンスターの群れに襲われ引き返した冒険者グループが多かったみたいなのですよね。
言われて良く見ると、若い冒険者が多く、どこか荒んだ雰囲気を出し、落ち込みそうになっているのを誤魔化しているようにも感じられますね。
まっ、僕達には関係ないので食事を続けていると、酒が回ってきたサラが、隣のリコに愚痴を零すのが多くなってきました。罠解除失敗や戦デスワーム戦で役に立てなかったのを気にしているようですね。
慰める気はないですし、もっと腕の良い盗賊系の技能を持っている人間がいたなら、そっちを選ぶのですが……現状、そんな候補者は都合良く居ないので、これから技術を向上させる努力を続けるなら、暫くは一緒に居ても問題ないのです。現状ではリターンとリスクを秤に掛け、リスクに傾くと斬り捨てても問題ないですが、別に嫌ってもないので、猶予付きで成長を待つくらいは出来るのですよね。
少しぐらい酒に溺れて潰れたとしても、リコと部屋まで送って行くサービスも問題なかったのです。
なのに、サラは後ろを通る時に、ぶつかってきた若い男と口論を始めちゃったのですよ。若い男の方も、かなりアルコールに脳が犯されていたみたいで、段々と激しさを増していますね。
そのまま椅子から立ち上がり、取っ組み合いの喧嘩まで始めるものだから、周囲の血の気の多い冒険者は賭けをする始末。
「女!仲間が死んだ、俺の気持ちがぁぁ!」
「役立たずだけど…あんた、女々しいよ!」
あれ?お互いに溜めこんだものを上手に吐き出している気がしますね。これは自由にさせておくのが一番ですね。リコは戸惑って、喧嘩と僕たちを忙しなく見ていましたが、止める気がないので僕もエルヴィーラも食後のお酒を雑談しながら楽しみます。
こうして騒がしい冒険者の町での一夜は過ぎていきました。
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