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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第三十九話

「……古代魔法王国時代の研究所だったみたいなの」


 遺跡に出発して早数日。森林地帯で数回の戦闘の後、サラが目的の遺跡について知っている事を教えてくれました。どうして、その遺跡の情報を知ったのかは聞かなかったですがね。何やらリコに関係している様子でしたが、話したくないみたいです。


 かなり偏屈な古代の魔術師の隠された研究所で、迷宮化しているそうなのですが、中々に熱い展開が期待できますね。捜索ではサラに頼るしかないのですが、防衛用のモンスターもいるらしく、そっちとの戦いが僕のお仕事なのです。


 サラに案内されながら、更に数日、森林地帯を進むと、一つの大きな石柱の前に来ました。高さは4メートル地点で折れているし、倒れた柱の破片が痕跡として周囲に残っていましたよ。蔦や苔が生えていたり、所々、風化していたりで長い年月を感じさせますね。


 その多人数で手を繋いでも囲みきれないような太い石柱の前に来ると、サラが何かを調べ始めました。今はお昼近くなので明りの心配はないのですが、周囲の警戒は怠りません。リコは何か落ち着きを失くしてサラの隣に立っていますが、邪魔してないし、問題ないでしょう。


 暫くすると、不意にサラとリコが石柱から離れると同時のタイミングで重いものが動く音が聞こえました。石柱を見ると一部がゆっくりとスライドし、人間一人が通れる入口が出現しました。サラが灯りを準備し入口に差しこむと、下っていく螺旋階段が見えました。先はまだ見えないのですが、遺跡は地下にあるようですね。


「ここよ。やっと……ここまで……」


 サラが小さく呟き、リコも頷いています。正直、解らない二人だけの世界なのですが、報酬が貰えるなら問題ないですしね。フェイス部分を下して剣を抜き戦闘準備です。エルヴィーラも弓を取り出し、いつでも矢を放てる準備していますね。


 入口から中に入ると、壁に添うように螺旋階段は上にも続いていたのですが、登り階段途中の不自然な位置で、天井部分が作られていますね。折れた後に無理矢理に蓋をしたみたいですよ。


 進む隊列、先頭はトラップ警戒のためサラ。一歩下がって僕、その後方に少し離れてエルヴィーラ、リコと続きます。灯りはサラの松明とリコのランタンで、薄暗い階段を、ゆっくりと降りて行きました。


 途中に踏んではいけない段があったりして時間を掛けながら一番下に降りると、石造りの通路になっていました、埃や淀んだ空気から、長い間、誰も来ていないのが窺えます。


 人が並んで歩けそうなその通路を、後衛のエルヴィーラとリコが並ぶように、前衛は僕、サラはやっぱり一歩前と言う感じで進んでいくと、途中から床の埃がなくなっている事に気が付きました。足元から微妙ながら弱い空気の流れがあるようですね。


 サラも気が付いている様子で、周囲の警戒を強めて進むと左右に通路が分かれています。ここからが本番ですね。


「……こっちよ」

 

 サラが右側の通路の壁に、ポーチから取り出した小さな炭で目印を書くと、そのまま右の通路に進んでいきます。どうして右か聞くと、勘らしいです。まぁ、知識もない場所で悩むよりは進むべきですよね。


 途中、二体のスケルトンに守られた扉を発見しましたが、不意打ちで撃破。部屋を調べると、古代の魔術師の倉庫というか、失敗作を乱雑に置かれている場所というか……正直、年月が経過し過ぎてゴミしか発見できませんでした。スケルトンの動きも遅かったですし、放置されていたのですね。


「相変わらずの、恐ろしい剣速よね」


 スケルトンを倒した時に、サラに呆れ顔で言われ、リコも大きく何度も頷いていました。失敬なのです。普通の長剣ぐらいの速度しか出せないですしね。そう抗議したら、そんな大きな武器で出せる方が変だと、指を突き刺されながら言いきられました。


 なんだかショックだったので地味に落ち込んでいたら、エルヴィーラに優しく背中を叩かれて慰められました。僕の中での高感度が上がります。これが計算だったら、男女の駆け引きで僕がエルヴィーラに勝てる事はないでしょう。この捜索でお金に余裕が出来たら、何か買ってあげようと決意しましたしね。


 更に進んでいると、サラが落とし穴に落ちそうになったりしたトラブルがあったりしたのですが、順調に捜索は進みます。特に目ぼしい物は見つかりませんでしたけどね。


 捜索の結果、地下への階段を発見したので便宜上、ここはB1とし、家具なんかは長い年月で朽ち果てた一室で、休息する事にしました。もちろん安全を確保してからですが、灯りを松明から持ってきていた蝋燭に変えて食事と交代で仮眠です。


 どうも昔の魔術師、研究以外に興味がなく、住居区画を最低限この階に纏めたけど、ほとんど使わずにいたみたいですね。保存の処理や魔法なんか使ってなかったので、入手したのはスケルトンの骨ぐらいですよ。本番は、この下の階からです。


 持ってきた蝋燭が一本燃え尽きるまで十分に休んだ後、次の階の調査に向かいました。

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