第三十六話
朝になると、装備を整えてから部屋を出ました。この宿、一階が食堂を兼業していたので、そのまま朝食にします。食事は大事ですよね。それなりに混雑していたのですがテーブルの一つにリコ達がいるのを発見したので、これ幸いと相席させてもらう事にしました。
挨拶しながら向かい合うように席に座ると、サラとリコが顔を真っ赤にして視線を逸らしました。どうしたのか聞こうと思ったのですが、隣に座ったエルヴィーラが先に料理を注文し始めたので、僕も一緒の物を注文します。
「昨夜はお楽しみでしたね」
注文が終わると、どこかで聞いたことのある台詞をサラが恨めしそうに呟くのが聞こえてきましたよ。言った本人を見ると、また真っ赤な顔で視線を逸らされたのですけどね。どう言うことかリコに聞こうと思い視線を向けると、此方も顔を真っ赤にして俯いたまま理由を教えてくれました。
単純な話、壁が薄くて、昨日の夜中、色々と聞こえちゃったそうなのです。特に僕達の部屋の壁近くで寝ていたサラは、耳も良いそうではっきり聞こえてみたいです。
昨日の夜は、その、色々と頑張った自覚があるので、ちょっと恥ずかしいですね。エルヴィーラは、それを聞いても平然とスルーしているのが、ある意味では凄いですよ。
ちょっとした事故みたいなものですね。些細な事だと思ったので、朝食を終えると今後の予定を話し合います。と言っても、サラやリコの装備の関係もあるので、遺跡の捜索は、もう少し先にする予定なのですよね。その前に、一度外に出てモンスターの討伐を提案します。連携の確認はしておきたいのですよね。
自称リーダーのサラが納得してくれたので、数日町を離れる準備です。宿を出ると必要な食料や消耗品を個人で買い揃えるついでに、ソードボアの皮を使って新しい服を仕立てる注文をしました。
通気性なんかを考慮して、錬金術を使い絹と合成した布で作ってもらう事にしたので、正直、防御力は皮単体より落ちますが防具じゃなくて衣服ですしね。それでも普通の服よりは丈夫になるのですよ。
デザインは、今着ているのと同じのをお願いしたのですが、色はエルヴィーラの強い要望で黒一択になりましたよ。僕とエルヴィーラの分を二着ずつ注文したのでかなりの出費でした。仕立てに四日ほど掛かるそうですが、それも問題ないのです。
サラが、新しい服を仕立てるエルヴィーラを羨ましそうに見ていたのですけど、そこは、やっぱり女性なのですね。でも、そこは自分で稼いで買って貰うしかないのです。視線が服というよりエルヴィーラの体を見ていた気もするのですが、女性同士ですし気のせいでしょう。
「くっ……胸……腰……尻……少しだけ負け……でも、憎い……」
……何も聞こえませんよ。
しかし、この世界は本当に変な技術は全体の文明レベルより進んでいるのですよね。衣服や下着なんかもそうですが、実は上下水関係や食料・生活関係の一部なんかは、どう考えても僕の魂がいた世界基準の知識が混じっている気がするのです。医学や薬品なんかも怪しいと思うのですが、それは国家や教会関係が秘匿している可能性が高いと思います。どこまで魂の世界の知識が浸透しているのか知りたい気もするのですが、調べる方法、今はないので諦めるしかないのですけどね。
まぁ、古代の魔法文明の名残や、今代の錬金術や他種族の知識なんかも混じっているはずですし、一概に魂の世界の技術だけとも言い切れないですよね。
一通りの用事が終わると昼過ぎになりましたが、その足で町を出ました。サラには、もう少し休んでからと言われたのですが、他に予定もないって話でしたしね。連携を高めるには実戦を数多くこなすのが一番なのですよ。余裕を持って無理しない間隔だと思うのですが、それを口にすると違うってサラに怒られました。理不尽です。
探索者は、もっとペースを開けるようですね。冒険者との細かな違いの一つのようですが、これから二人は冒険者として活動するのですから、僕達のペースに合わせてもらいましょう。サラとリコは武具や登録でお金を使って余裕ないのですしね。そこを突っ込んでみると、渋々ながら納得してくれました。
道なりに川を超えて、平原地帯に来ると、日もすっかり沈んでいたので夜営です。適当な場所を見つけると、二人ずつ交代で休むことにしました。いやぁ、人数が増えると夜営は楽になりますね。
夜何事もなかったので朝になり旅を再開します。最初という事を考慮し周囲を警戒しながら進んでいたので速度は遅いですが、決まった場所はないので問題ないのです。サラとリコの観察もしながら進んでいましたが、流石に捜索者の経験があるので移動自体は問題ないですね。
その日の夕方近く、ゴブリンの群れと遭遇しましたが、数は多くなく六匹だったので連携の最初と考えると悪くないです。さっそく、僕とリコが前衛、サラが遊撃と後方警戒、エルヴィーラが後方と布陣するように動きます。この辺は夜営や旅の間に話しあっていたので問題ありませんでした。
リコは防御に徹して、弓による援護の中、僕の攻撃でゴブリンを仕留めていったので、苦戦することなく怪我もなく終わりました。問題は、熱くなると突出する癖がサラにはあったので、その部分の修正がこれからの課題になりそうです。問題点が早めに分かったので、有意義な戦いだったと、モンスターの素材を剥ぎ取りながら思えました。
主人公の感覚の方がおかしい事実。




