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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第三十五話

 4人で冒険者の町マウスに帰って来たのが、朝方だったので、その足で冒険者ギルド支部に向かい、モンスターの素材を売ったり、盗賊だった冒険者の死亡説明と冒険者証明の引き渡し報酬を受け取ったり、ついでにサラとリコの冒険者登録を済ませることにしました。


 猫の獣人族でもある、貫禄ある受付イェフに対応をお願いした時に、軽く睨まれましたが、ちゃんと処理してくれましたよ。睨んだのではなくて、真剣に対応してくれたのかもですが、正直、プレッシャーを感じてしまう容姿なのですよね。


 午前中に支部での用事を終わらせたので、午後からは売らなかったモンスターの素材を使って装備を整えたいと贅沢を言って来るリコに付き合って、鍛冶師ダニロの店に案内です。


 便利に使われている気もするのですが、最近まで町の反値側で生活していたので、こちらに詳しくないのは仕方ないでしょう。落ち着いたら自分達でも調べに動くかもですが、最初の面倒ぐらいは仲間になったので見るべきですよね。


 サラとリコ、二人の生い立ちは町に戻ってくる間に聞きましたよ。主に、サラが勝手に話したとも言えるのですけどね。


 二人は、南部帝国の辺境ではないのですが地方の小さな村で生まれ育ったらしいのです。そんな田舎の村だからでしょう、人間の両親から生まれたハーフエルフのリコは、村人だけでなく家族からすら迫害されて育ったそうです。俗に言う取り替えっ子って奴ですね。大人しそうな性格に育ったのも納得です。


 そんなリコを村で唯一同じ年だったサラが味方になり庇っていたそうですが、過激な性格は生まれながらの物だったのか、トラブルは絶えなかったみたいですよ。良く二人が村八分にされなかったと疑問に思って聞いたら、ちゃんとされていたそうです。まぁ、狭いコミュニティでは良くあることですが、孤立して生きていけるほど世の中甘くもなく、成人すると同時に二人で村を飛び出したそうです。


「村長に、勝手に結婚する家を決められるとか、ありえないわよね!」


 話していて熱くなったリコの台詞ですが、この世界では普通の事にも思えるのでけどね。普通の村人には向いてない性格だと良く分かりました。おまけにリコも、その容姿から領主さまに献上される予定だったとか。まぁ、二人が逃げたくなる気持ちは理解できます。逃げたのではなく、自分たちで捨てたとは、サラの談。


 旅の資金とかは、12歳の頃から二人でゴブリンを狩って貯めていたそうですが、その行動力は凄いと思います。もちろん、一匹だけの時を狙って、何度も死にそうな目にもあったみたいですが、それだけ村での生活が嫌だったのでしょう。


 その資金を元手に、旅の商人なんかくっついて流れてきたのがこの町。でも資金も尽きたので冒険者登録は出来ずに、捜索者として一年ほど活動しながら、サラはスキルの会得はできなかったですが戦闘と捜索系の技術を、リコは防御と『精霊魔法』の技術を磨きながらお金を貯めて、装備を整えたりもして生活していたようです。


 この話を聞いて分かった事なのですが、二人とも、僕より一年ほど年上なのですよね。最初、少年少女とか、もっと少し幼いと思っていたので、ごめんなさいなのです。ちなみに、二人も僕のこと、年上だと思っていたみたいなのでお相子です。まぁ、僕の場合、兜(ヘルム)のフルフェイスで顔が見えなかったのもあるのですけね。


 いやぁ、最初の夜営の時、兜(ヘルム)を脱いで驚かれたのは、いい思いでって奴ですよね。


 そんな二人ですが、今回の報酬で念願の冒険者登録。そして実力で手に入れたソードボアの素材で装備も強化できるくらいの余裕はあるそうです。実力ってところには、僕は突っ込まないですよ。僕達も思わぬ収入で余裕ができたので、大目に見るのです。


 町に戻る途中で聞いた話を思い出しながらダニロの店に4人で来たのですが、相変わらず無口な対応をされました。サラとリコは、最初、ダニロの外見にかなり驚いていたみたいですけどね。それは仕方ない事です。


 それでもサラはソードボアの素材で武器を、リコは鎧を注文していました。まだ、予算に余裕があるそうで、他の装備は店で買うそうです。


 僕とエルヴィーラもソードボアの素材で装備を一つ頼み、後は売ることにしました。今のワイバーン装備の方が高性能ですしね。後は、装備を確認してもらい、まだ問題がないそうなので今日はこのまま宿に帰ります。


 サラとリコも同じ宿に泊まるようですが、適当に決めた宿には2部屋しか空きがなかったのですが、ちょうど良かったですよ。男女別ではなく、僕とエルヴィーラ、サラとリコと分かれて宿泊します。


 さすがに、同じ部屋に泊まろうとまで信用してないですが、二人に騙されているとも思えないのですけどね。特にサラの性格が騙すための芝居なら、逆に見事なものだと脱帽するしかないのです。


 一番奥の部屋に入ると、エルヴィーラと一緒に旅の装備を下して身軽になりました。そのまま僕は床に座り、エルヴィーラはベッドに腰掛けながら武具の手入れをしていたのですが、正直、予想よりも疲れていました。主に精神的に。サラとリコのいる前では平然とした態度でいましたが、予想外のことが起こりすぎです。一度頭の中をリセットしたいですよ。


 武具の点検をしながら大きな溜息を零すと、それに気が付いたのか、ラフな姿になったエルヴィーラが弓を脇に置き、微笑みながら両手を広げてくれました。もう、今日は良いですよね。誘われるようにエルヴィーラに近づくと、その細い腰に腕を回して、豊満な胸元に顔を埋めます。


「エルヴィーラは、やさしいなぁ……」


 そんな僕を抱きしめ、優しく頭を撫でてくれるエルヴィーラに小さく呟くと、この夜はたっぷりと甘えて過ごしました。

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