第三十三話
遺跡までの道筋を準備するだけが、妙な事になったと思います。
だからと言って、このまま何もしないって選択肢はないのですけどね。猪タイプのモンスターに背中を見せて逃げると、背後から速度の乗った突進攻撃される危険もありますし、一度動きを止めた今がチャンスだと思うのですよ。
茂みから出てきた二匹のソードボアが、前方の盗賊や男女のコンビ、後方の僕達に挟まれている状況も悪くないですしね。交互に状況を確認するすようにボアが首を動かしている時、一気に踏み込み、剣を抜くと同時に一匹に大上段から斬りつけました。
さすが野生のモンスター。前の組と違い、接近に気が付くと迎撃のため動きだしますが、リーチって偉大だと思いますよ。小剣のような形状の牙で突きくために動き始めますが、加速は不十分です。ワイバーンの突撃に比べたら可愛いものですしね。こちらの攻撃が先にソードボアの頭を叩き割る結果は、必然。血肉などを撒き散らすように一撃で仕留めました。
もう一匹のソードボアは、足元に矢が刺さり、前方の盗賊達に向かって突進を開始しています。ナイスな援護とフルフェイスで隠された顔に笑みが浮かんじゃいましたよ。
「げっ!まずはモンスターからだ!」
「ちょ!モンスターをやるわよ!」
盗賊リーダーと少女が慌てて叫ぶと、皆がモンスターを迎撃する体勢に入ります。少女達の方は、少し怪我をしているようですが、盗賊達は無傷。それに数も多かったので、これで少しでも減ってくれればと願うばかりですね。
敵に敵は味方、なのかどうか不明なのです。少なくても盗賊、少年少女、モンスター、僕達、の4対2対1対2の構図をもう少し整理したかったですしね。男女のコンビは善意で僕たちを助けようとしてくれたので、死なないように注意してあげるつもりですが、それは自分たちの安全を少しでも確保できてからのお話。
最初の状況じゃ、隠れている盗賊の数が気になっていましたからね。実力や装備意外にも、数って案外馬鹿に出来ないのですよね。その隠れていた盗賊達が減ってくれただけでもありがたかったのですよ。
正直、ここまで状況が変化し続けられると、頭が痛くなってくるのですけどね。最初は隠れているのも含めての盗賊への対応、次は少年少女がいる場合、そしてモンスターの乱入と、対応策を変化させ考えなければならなかったので、表情を何度も変化させていたと思いますよ。フルフェイスの兜なので見られていないですけどね。
流石に、今のところ周囲に新しい気配を感じていないので、目の前の問題を片づけるだけです。最後のモンスターが盗賊達の方に行ってくれて助かりましたよ。
前方に意識を集中すると、盗賊と少女たちがモンスターに対応していますが、経験の差でしょうか、少女は全力で攻撃しているのに対し、盗賊達は防御主体で対応しています。当然ですよね。モンスターを倒した後、彼女たちを捕まえればお得ですし、数では、まだ有利ですしね。
まぁ、理解は出来ても邪魔させてもらうのですけどね。
少年少女を前にし、背後から囲むように展開している盗賊達は、一応はモンスターを警戒していますが、こちらをあまり警戒はしていませんでした。その隙に僕は左側の端にいた盗賊に斬りかかっていきます。不意を打たれた形になったのか、あっさりと袈裟斬りに、血を撒き散らしながら伏せられる盗賊。右端の盗賊の頭にも矢が刺さっていました。
「最初の答えだけど……断る!」
「なっ……お前……」
頭っぽい盗賊にはっきり告げると、言葉を失いながらも二人が僕に剣を向けてきました。でも、最初に荷物や女を置いていけなんて失礼な事を言ったのは、盗賊達ですしね。ターゲットを勘違いしていても、僕達には関係ないこと。狙われた事実は変わりないのです。
これで、盗賊と僕達の数は互角、装備はこちらが上。なら後は実力差だけが問題点ですが、そこは動きを見ている限り大丈夫でしょう。牽制だけとはいえ、暫くモンスターと戦っていた疲労もあるでしょうしね。
しかし、僕の行動に驚いたのか、少女はソードボアへの攻撃の手を緩めていました。その隙に頭を振って牙で斬り裂こうとするモンスターの攻撃に傷を増やしていました。危ないところを少年の小型盾で庇われ大怪我は回避していたみたいですが、長くは持たないですよね。
もう少し粘ってくれるなり、ソードボアを盗賊たちの方に誘導して欲しかったですが、仲間でもないので連携は無理ですよね。ここは早めに勝負に出ても問題ないですし、動く事にします。
両手で確りと柄を握って剣を構えたまま、盗賊達の背後に回るように動くと、こちらとモンスターの両方を警戒しなければならないので、盗賊達に焦りの色が見えましたよ。
「あっ…モンスターが来て…っ!」
ソードボアの腹部に少年の棍棒が命中し鳴き声を上げた時、そう盗賊達に嘘を告げると、注意を背後に向けたボスに向かって言葉の途中で、剣先を喉元めがけて突き刺しました。リーチって大事ですよね。
そのまま剣先を捻り、一度抉ってから同時に刃を隣の盗賊の方に向けると、一気に真横に振り抜きます。ボスの唐突な死にざまに何か喚いていますが、聞く義理はないので、剣を薙ぎました。でも経験か実力かは分からないですが、飛び散る血飛沫を気にすることなく流石に避けるように動きますよね。モンスターが突進して来る気配を感じ、僕も一歩踏み込めなかったのですよ。
不幸だったのは避けた盗賊でした。背後からソードボアの突進を食らって、背中を牙で突き刺されながら弾き飛ばされました。背骨は折れているでしょうね。これで盗賊は片付きました。残りはモンスターですね。
突進の勢いのまま逃げるなら見送っても良かったのですが、その背後から矢が飛んできました。血を蹴ろうとした瞬間の後ろ脚に命中し、その痛みに悲鳴を上げながら倒れるソードボア。その姿を確認すると、思いっきり踏み込み太い首に剣を振り下ろし、息の根を止めます。これで問題の大半は解決ですね。
兜の中で大きく息を吐き出すと、最後にして最大の問題。少し乱れた呼吸を整えながら少年と少女への対応を行うため、なんだか物言いたげな視線を投げかけてくる二人の方に体を向けました。




