第三十一話
いつもの酒場での喧騒があった次の日は、朝からエルヴィーラと買い出しからの出発です。
とはいえ、昨夜、宿で相談した結果、護衛依頼は受けない事にしました。新しい鎧の馴らしも終わったので、遺跡を探すための道を本格的に調べてみようって事になったのですよ。
今の時期、周辺からモンスターが減っているので、比較的安全に周辺の地形確認できましたしね。知識としてだけでなく実体験として知っている方が、緊急時に対応しやすいとも思って行動していたのです。それに他の冒険者や捜索者が、護衛依頼で町から減るのなら変な遭遇も少ないと考えたのですしね。
いきなり遺跡調査なんて、メンバー不足で無理ですけど、遺跡自体を探すために森林地帯の奥の方に進む予定なのです。その為に、保存が効く干し肉や干し果物、酢漬けの野菜、水なんて食料や傷薬系を大目に買う事にしました。出費としては大きいですが必要経費。ケチるところじゃないのですよね。
午前中に準備を終えると、午後から出発なのです。町周辺の捜索は、馴らし期間に済ませているので、今回の目標は一歩踏み込んだ先に進むこと。いつものように北門を抜けて、街道に沿って橋を渡った先、広がる草原、未知の領域に……って、この辺りは、何度も足を運んでいるのですけどね。
警戒はしながらですが、数日は特にトラブルもなく進んで行きました。
広大な平原を進んだ先は、大きな森林地帯。木の一本一本が本当に大きくて、間隔も広く日当たりも良いのですが、大型生物が生息するための環境だとも言えるのですよね。それに苔で覆われた石柱や深い茂みなんかもあって、隠れる場所も多かったりするのですよ。
全体的に、なだらかな高低もあり視界は最悪です。油断すると大変な事になりそう。今は冬なのに、これだけの緑が多いとは予想外でしたよ。木の実なんかの食べ物は少ないですけどね。
森に足を踏み入れ、方角なんかに注意しながら進みます。こんな時はエルヴィーラが本当に頼れるので助かりますよ。僕だけなら少し森に入っただけで迷子になっていたことでしょう。
数日間、森の捜索を続け、幾つかの水源地も確認しました。その間にもゴブリン種のモンスターに数度遭遇しましたが、やっぱり数が少ないって感じでした。
残念な事に遺跡らしいものは発見できませんでしたが、日数経過も考えて、エルヴィーラとも相談した結果、ここまでにして町に戻る事にしました。焦っても仕方ないですし、無理はいけませんよね。仲間もいない状態ですし、本格的な遺跡探しに、もっと奥まで行かなければならないと分かっただけでも儲けものです。
それに、何度か外の世界を経験しましたが、やっぱり二人だと夜営とかが大変です。疲労蓄積も馬鹿に出来ないのですよね。やっぱり、仲間は必要だと実感してしまいますよ。
来た道を戻るよう町に向かって森の中を進んでいる時でした。お昼近く後数時間で草原地帯に出ようって場所で『気配察知』に反応があったのです。エルヴィーラに小声で告げると、普段は上げているヘルムのフェイス部分を下し、僕が先頭になって気配の方に歩いていきます。
「おっと、ここから先は、通行税が必要だぜ」
「荷物と女を置いて行きな」
「……ん?なぁ……」
「あぁ……さっきと違うよな」
暫く進むと、お約束な台詞を口にしながら茂みから、下卑た笑みを浮かべた軽皮鎧姿の四人の男が現れました。もっとも、後四人ほどの気配を茂みの奥で感じているのですけどね。僕たちを回り込むように動いています。
抜き身の小剣を手にした男たちが、こっちを見て困惑気な表情になったのを見ながら、無言で大剣の柄に手を伸ばします。見たところ冒険者崩れみたいですが、どうもターゲットを間違えたみたいですね。
今いる町では冒険者崩れが盗賊みたいになるのって結構多いのですよ。探索者と違って冒険者は、ギルドに所属しているので、ある程度の規則が存在します。もちろん、それは納得して加入しているのですし、特典もあるですしね。少し大げさに言えば、義務と保障の話なのですが、入った後、義務を嫌がる人がいるのも事実。まぁ、保障も完璧ではないですしね。
捜索者の方は、完全な自己申告。最初は捜索者でも加盟金が準備できたので冒険者ギルドに入れば、白い目で見られる時期があっても認めさせれば、規則もあるので後は特に大きな問題もなく終わり。
でも冒険者は、自分で納得してや理由があって引退ならまだしも、日ごろの問題行動が理由で辞めさせられたりしていたらグラックリスト入りは確定。最悪、賞金首です。そんな人間が逃げるように町を出ても、碌に出来ることなく盗賊になるくらいなのが一般的らしいのですよね。実際元冒険者の盗賊を討伐する依頼はなくならないのです。
今いる町で南側に逃げるにも、元冒険者にはリスクが高く厳しい捜索者だけの世界ですしね。だから町の冒険者でも腕ききと言われる人達は、実力だけでなく人格も高い人が多いのですよ。もちろん荒れくれ物も多いですし、問題を表に出さない狡猾な人もいるのですけどね。
まぁ、そんな冒険者崩れグループが、目の前に居るのですが、数も数ですし、包囲が完成する前に、少し混乱している風な目の前の男達を斬り捨てて、後は……と、戦い方を構築している時でした。
「ちょっと!何してんのよ!」
場違いに感じる女性の大きな声が響いたのですよね。
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