第二十九話
武器の修理と防具の作成を依頼してからの10日の間に、町を見て回るだけでなく、冒険者がよく集まっているというギルド近くの酒場にも顔を出すようにしました。
無理に合わせる気はないのですが、孤立なんかしても仕方ないですし、冒険者が減っている今の時期がチャンスかもと思ったのです。町とは、人間が集合して生きていくしかない場所なので、そんな場所で孤立なんかした日には、肉の嫌な記憶が蘇って来ましたよ。
さすがに勧誘関係は全て断っているのですけどね。利用されるだけされて、使い潰されるなんて御免です。
いやぁ、恨まれないように注意しつつ、きっぱり断るとか、対人関係って大変なのですよね。エルヴィーラ任せの僕が言う台詞でもないかもなのですけどね。対人関係を円滑に進める話術なんて持っていませんし、世慣れもしていない現実なのです。
その対人関係ストレスは、夜、僕に向けられるのですが、それはそれ。
それに露天商を冷やかすように回りながら、この町の物価なんかも調べてみました。知らないと足元を見られ、損をする可能性もありますしね。いやぁ、魂の方の記憶で、簡単な暗算ができるのは大きかったですよ。
色々と有意義に過ごし、約束の日になるとダニロの鍛冶屋に行きました。新しい鎧に、正直なところ興奮気味です。
相変わらずの殺風景な店内に入ると、大きなカウンターの前まで進み、ダニロを呼びます。暫く待っていると、のっそりと奥から大きな荷物が乗った台車を押しながら、大柄なダニロが現れました。さすがに外見には慣れましたよ。
今は、台車の上に乗せられている黒い全身鎧に目が奪われてしまいます。
全体的に流線的な鎧のパーツ。ヘルム、スカート、アーマー、ガントレット、グリーブが、その順でカウンターに置かれました。
漆黒の全身鎧。それについつい興奮してしまい震える手を伸ばそうとしたら、大きく無骨な腕で遮られましたよ。はい、代金が先なのですね。
後金の金貨を準備していると、同じ黒い防具ですが、全身ではなく部分を隠す女性用軽装鎧、それに大剣と長弓もカウンターに置かれ、注文の品はこれで全てなのを確認した後、金貨と銀貨で枚払います。
支払いが終わったので、さっそく鎧を装備してみました。ダニオにも勧められましたしね。細かいとところの最終調整もするみたいです。
さっそく僕から、カウンターに置かれたのとは反対の順番で装備していきました。
グリーブは膝まであるブーツのようなタイプで、つま先部分が大きな1本の爪のように尖っています。黒い金属の外観に、外側にワイバーンの黒鱗、膝の部分には甲殻、爪先に爪を用いているようです。
ガントレットは肘までの5本指タイプで、やはり全体的に黒い金属製ですが、腕の外側や肘部分にワーバーンの素材を使用し、ナックル部分には4本の小さな爪も並んでいて、拳を作って殴ると痛そうです。
アーマーの胸部は黒い金属ですが、大きく膨らんだ肩部分には甲殻を、腹部には鱗を使用し、稼動するようになっています。さすがに軽鎧ほどの動きは期待できないですが、重鎧と見た場合、かなり動きやすいでしょう。
スカートは、前後部分は短く左右は長めで、金属よりもワーバーンの素材が沢山使用されています。それを金属で補強している感じで、これも防御力と機動性の両立を目指した結果なのでしょう。
最後にヘルムを装備して完了です。ワイバーンの顔を模したようなフルフェイス型のヘルムで目の部分は上下可動式でした。普段は上げておき戦闘の時に下げるようにすれば、移動中もある程度広い視界を確保できるそうです。まぁ、僕には『気配探知』があるので少しぐらい視野が狭まっても問題ないですしね。
見た目よりも軽く感じますし、更に防具裏には、衝撃吸収目的のワイバーンの翼膜を大量に使用しているので、着心地も悪くありません。要所をベルトで止め調整もできるので、吸いつくようなフェット感もありますしね。
装備をしたまま軽く体を動かしても問題は感じなかったのですが、ダニロが微妙に思えた個所を数か所、更に調整してくれました。
最後に大剣を剣帯と一緒に装備して完成です。きっと格好いい外見をしているでしょうが、良く考えたら鏡なんてないので、自分で見ることができないのですよね。残念。
次は、何故か僕が装備を終えるまで待ってくれたエルヴィーラの番です。僕と違って、隕鉄ではなくワイバーン素材をメインに作成されていました。
鎧部分は袖のないジャケットのようなタイプで、隕鉄とワイバーンの腸を錬金して作成された紐で作成し、破れ難く補強も兼ねているらしいです。大きく胸元が開いているのも動きやすさを重要視しているからですが、谷間がね、凄いのですよ。僕も男やっぱり目を奪われます。
スカートは右の外側にだけ覆うようなタイプで、弓を構える時に正面になるかららしいです。左には矢筒を装備するようになっているようです。
クラブとブーツも完全にワイバーンの皮製で肘や膝まで覆うタイプですね。最後に頭だけを覆うような帽子を被れば完了でした。
なんだか魂の世界の軍帽みたいなのですが、その中央には軍章ではなくて紫水晶が埋まっています。これはワイバーンの目と紫水晶を錬金したもので、魔法的な攻撃を軽減する効果もあるそうです。
装備が終わると、軽く体を動かして、僕と違って何箇所か注文し、そこをダニロが修正し、更に自分で気が付いた場所も修正していました。動きやすさは前と変わらないみたいですが、防御効果は上がっているので問題ないですよね。
長弓を持ち、24本の矢が収納できる矢筒にグレーウルフの牙で作った矢を補充し、エルヴィーラも装備が完了です。いやぁ、毎回思うのですが、美人はなにを装備しても似合うのですよね。ちょっと目を奪われて頬が赤くなっちゃったのですよ。
「いい感じみたいね。ヴァイデの顔を見ればわかるわよ」
悪戯な笑みを浮かべ、ありがとうと言われたら更に顔が赤くなっちゃったです。誤魔化すようにダニロを見ると、表情は読めないですが、なんだか別の場所でやれと視線で訴え掛けられた気がしました。その後、照れ隠しにヘルムのフェイス部分を下げて顔を隠しましたよ。
最後に武器の確認も終え、満足のいく仕上がりだったので、ダニロと握手を交わすと店を出たのは、すっかり日が沈みかける時間になっていました。
さぁ、明日から冒険再開なのです。なにせ冒険者ですからね。
ストックが尽きたので、毎日更新はここまでです。
週一更新できたら嬉しいですが、予定は未定。
なるべく早くお届けできるように、がんばります。




