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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第二十八話

 激しい戦いでしたが、いつまでも座りこんではいられないのです。鎧の下、汗で張り付く服は気持ち悪くて、体中にある打撲痕が熱を持つように痛いので、早く着替えて治療もしたいのです。


 エルヴィーラの呼吸の乱れも整ってきたので一緒に立ちあがると、周囲を確認。戦闘が終わっていたようなので、後衛の部隊から人間が散っていくのが見えました。前衛や中衛に行き何かを説明するギルド職員ですね。


 こっちに近づいて来たイェフさんの説明で分かったのですけどね。


 イェフさんからの説明で、僕たちが倒したブラックワイバーンの所有件を得たので解体はどうするかとか、何匹モンスターを倒したとか、色々と聞かれましたよ。早く休みたいのですが、おろそかにも出来ません。ゲームとかと違って現実は大変ですよね。


 倒したモンスターの種類や数は覚えている限り伝え、素材は全てギルドに売る事にしました。そのお金でワイバーンの解体もギルドに依頼です。その素材のうち、肉や筋なんて腐りやすそうな物はギルドに、皮や鱗、翼膜や牙なんて武具に使える物は僕たちでと、長い話し合いで決定。


 税金や手数料なんかはかなり持っていかれるですが、安全に処置できるので良しとしましょう。完全な安全とは思ってないですけどね。


 ついでに、その間に傷の手当ても有料で受けたのですが、大きな怪我がなかったので安く済みました。ギルドに色々な意味で貢献した気がするですが、治療魔法って凄いですね。傷跡も残らなかったですよ。


 諸々が終わって細かい試算なんかは、明日ギルド支部でと纏まると、やっと解散ですよ。エルヴィーラが主に交渉してくれたので、お疲れ様なのです。


 町はなんだかお祭り騒ぎだったのですが、それを楽しむ余裕なんてないですよ。宿に戻ると、お湯を貰って体を綺麗にした後に、ぼろぼろになっていた服を着替えてベッドにダイブなのです。


 エルヴィーラも流石に疲れているのか、僕と同じように身を整えた後は、隣で横になっただけで、二人して身を寄せ合うように深い眠りに落ちていきました。


 翌日は、二人で朝に目を覚ましたのですが、ちょっと口では言えないような事もあり、お昼近くまで二度寝しちゃいました。


 食堂に降りたのは昼近くだったの、出かける前に食事をしながら、この後の行動予定を話し合います。


 まずは防具ですね。僕の鎧は完全に壊れたので、お金も入るし、ワイバーンの素材に拾った隕鉄を合成して作る事にしました。武器までは回せないかもですが、防御力は大事なのですよね。


 そのためには、ギルドに行ってから鍛冶屋へと流れを相談していると、知らない男たちが声を掛けてきました。どうやら同じ冒険者のようなのです。最初は何事かと思ったのですが、話を聞いてみるとワイバーン戦を見ていたようで、凄いって誉めてきましたよ。勧誘や言いがかりではないみたいで一安心です。


 なんだかんだ実力主義な冒険者家業ですね。もっとも不穏な視線も離れた席から感じているのですが、さすがに昼間からはないみたいですね。もっとも話しかけてきた冒険者たちも、僕たちの実力を測るのも目的の一つなのでしょうけどね。


 これが探索者ばかりの南なら話は変わって来るかもですが、今は嫌な視線は無視して、目の前の冒険者たちに丁重に対応なのです。無理に敵を作る必要性もないですし、時間もあるのですよ。


 話を聞いていると、僕たちの事は噂にはなってきていると感じました。まぁ、仕方ない事ですが、面倒事は避けたいものですよ、本当。


 僕の剣速が異常とかエルヴィーラの魔法回数が異常とか言われましたが、僕の場合、片手剣ぐらいの速度だと思うし、エルヴィーラも工夫しているからなのですけどね。ネタバレは避けるため、努力の賜物だってドヤ顔で答えたら、エルヴィーラに頭を叩かれ、笑いの渦を作ってしまいました。なぜに?


 予想外に同じ冒険者との話は、面白く身になる事も多かったですね。後、エルヴィーラは僕と付き合っているって事になったみたいです。


「言い寄られるのも面倒だし、明言しておけば、ちょっかいも減るじゃない」


 こっそり理由は教えてもらったのですが、僕の自由恋愛の権利は……はい、最初からないのは知っているので、気にしない方向ですね。笑顔が怖いですよ。


 なんて、色々と話していたら支部に行くのが夕方になってしまいました。


 いつものカウンターにイェフさんがいたので、軽く挨拶をした後、さっそく最終的な手続きです。まぁ、簡単に終わったのですけどね。


 しかし、さすが大物だけあって素材の量も結構あったので、ギルドで台車を借りてダニロの鍛冶屋に行く事にしました。別の場所でも良かったのですが、他の店を調べるには、少し遅い時間でしたし、面倒ってこともあったのですよね。


 日が沈む前に店に到着すると、さっそく店内のダリオに声を掛けます。出てきたダイロの、相変わらずの牙と角が特徴的で大柄さに威圧されながら、手に入れた素材で鎧を作って欲しいと依頼。無言で、カウンターを指さしたので、台車からワイバーンの素材を何度か往復して乗せました。


 そして最後に隕鉄の塊を乗せて、僕には全身鎧を、エルヴィーラには軽鎧をと告げると、無言で頷かれて、体の寸法を測られましたよ。やっぱり怖かったです。


 しかし、かなりの職人気質なのですね。エルヴィーラを計る時も、機械的な動きで表情一つ変えません。まぁ、オーガ種の顔の変化が良く分からないのも理由の一つなのですけどね。


 こうして依頼を終え費用を聞くと、かなりの出費になりましたが、報酬から考えると余裕もあったので、ついでに武器の整備も頼みました。今日払うのは前金だけなのですけどね。合計10日で仕上げると短く言ってきたので、それを信じて10日後に来る事にし、店を後にします。その間、体を休め、町を探索するのに使うのも悪くないですしね。


 台車をギルド支部に返すと、夜もかなり遅い時間になったので今日はこのまま宿に帰ってゆっくりする事にしました。

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