第二十五話
最初の戦闘の後、7日間ほど郊外に出て、周囲の地形の確認をしていました。
3日ほどで草原地帯を抜けると、森林地帯に入るようです。木々に埋まるように時折、古代遺跡の残骸らしい石柱なんかも発見しました。その奥に遺跡群があり、また迷宮なんかもあるんだろうと思うのですが、今回はそこまで進む予定ではないのです。
目印になりそうな地形的特徴や水源地、生息するモンスターの強さなんかの把握に努めていたら、かなりの日数が掛かってしまいましたよ。
遭遇するモンスターもグレーウルフやホブゴブリンと受付で聞いた情報通りで、強さも今の僕たちならブラックウルフやゴブリンと大差がない脅威だったと思います。なぁ、予想していたより、遭遇した回数は多かったですけどね。
撃退もしくは『気配察知』を使っての逃走を繰り返して被害は最小限に抑えられたと思うのですが、それでも僕は何度か攻撃を受ける羽目になってしまい鎧がそろそろ限界です。これはグレーウルフの素材を使って鎧を新調した方がいいかもなのですよ。
稼ぎを考えると、かなりの数のモンスターも倒し、素材も大量に手に入れたので、生活費や消耗品の補充に残すお金を差し引くと、厳しいかもですが皮鎧系なら問題ないと思うのですよ。実際に売れた後の話なのです。
正直、拾った隕鉄を売れば余裕があると思うのですが、もっと強いモンスターの素材と合成して使いたいですしね。貴重品っぽいので欲が出るのですよ。そこはエルヴェーラも同意してくれているので、余ったら彼女の防具の強化にも使おうと思っています。
二人で北門に戻ってきたのはお昼前なので、報告の前に食事でもと話しながら、門番の確認待ちをしている時のことです。不意に北門の上から激しく打ち鳴らされる鐘の音が響きました。
何があったのか、周囲を見ていると、僕たち同様に順番を待っていた何組かの冒険者パーティは、各々の武器を構え町の外に視線を向けていました。僕も、その視線を追いかけるように町の外に視線を向けると、かなり遠くで広範囲に蠢く影のような物を見つけました。
「まさか、モンスターの進攻かよ。やけに獲物の数が多いと思ったら……畜生め!」
近くに居た冒険者の吐き捨てるような言葉に、状況が呑み込めましたが、その後の勢いと流れにのみ込まれてしまいましたよ。
まず門が半分閉ざされると、衛兵さんが冒険者に声を掛けてした。一般の旅人や商人なんかは急いで町に入り、変わりに新しい冒険者たちが外に集合してきます。更に荷馬車が数台、町から出てくると、冒険者の前に止まります。その先頭の馬車の御者台で、一人の大きな男性が立ち上がりました。長身で逞しい体躯を金属製の鎧に包み、手には長斧槍を持ったその人が、覇気の感じる大きな声で話し始めます。
「諸君……何人か知っているだろうが、俺はベルトラム。冒険者ギルドの副支部長だ」
すいません……知りませんでした。集団に埋もれるように紛れ込んでいたのですが、はっきり聞こえた言葉に、僕は少し申し訳気持ちになってしまいました。
迫力のせいでしょうか、冒険者たちが私語を辞めたので一瞬、周囲を場違いに感じる静けさが支配しました。
「この町じゃ、恒例のモンスターの進攻だ。ギルドの冒険者にとっては命を対価にしての稼ぎ時だ」
怖いこと言っていのるですよ。その後、ベルトラムさんから説明はありました。簡単に言っちゃうと年に1、2回あるモンスターの進攻を止めるのが、ギルドからの緊急依頼。町の動ける冒険者は参加強制。参加すれば銀貨50枚、素材は倒したパーティ優先なので、主にパーティで動くことになるようです。帰って来た組が持っていた荷物は、ギルドが責任を持って一時的に預かってくれるので、僕たちも素材は預けました。
矢や食料なんかは、ギルドがある程度補てんしてくれるらしいです。これは馬車にある野外緊急受付で聞いた話でエルヴィーラは、ちゃっかり矢の補給を受けていましたよ。
装備の消耗が気になりますが、さすがに鎧の整備は無理でした。
その後、パーティメンバーが多いところから前方に、少人数パーティは遊撃的な役割に回されました。最後の防衛線は、ギルド職員と町の兵士が受け持つ陣形を構築していってます。
全体の慣れた動きに身を任せていたら、遊撃担当になる右翼中衛付近に、僕とエルヴィーラが混じっていました。なんだか全体的に浮足だった雰囲気ですよ。年齢層も僕に近いですね。その代わり右翼の前衛部隊は年配の方も多く余裕のような気配も感じるので、抜かれないような人員を配置しつつも、それは秘密にして若く未熟な冒険者に経験を積ませるのがギルドの狙いなのかもしれません。
町の前の広大な草原のお蔭で、モンスターの進攻に早くから気付けたので、準備する時間は十分にありました。それでも東から大挙してくるモンスターに備えた陣形が整うころには夕方でしたけどね。町の北側を守るように冒険者たちが、南側を守るように捜索者たちが、同じように陣を敷いています。
僕がいる場所が右翼の更に右側なので分かったのですが、妙な隙間が冒険者と捜索者の陣の真ん中にあるのですよね。これは、町の勢力を考えると仕方ないのですが、背後には南北から川があるから問題ないのかもです。
ちなみに、この2本の川が合流して町に流れ込み、更に大きな川となって町を二分しているのですよ。
準備が整うと、背後から大きな銅鑼の音が鳴り響きます。これを合図に、全体でモンスターの群れに向けて進軍を開始。僕も背後のエルヴィーラを庇うよう、その流れの中を進んで行きました。




