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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第二十三話

 起きたのは昼近くでした。


 旅の疲れで寝過ごしたなんて言いませんよ。だって、今の胸にエルヴィーラの暖かさと柔らかさを感じていますからね。気持ち良さそうに寝てらっしゃるのですよ。


 それなりに広い部屋で窓側に2つベッドがあって、中央には小さい丸いテーブルと背もたれのない椅子が向かい合うように2つ、ドア側には小さな箪笥が2つと、そこそこ過ごしやすそうな部屋なのですが、生憎とベッドは今のところ1つしか使っていません。


 今日は天気がよさそうなのでが、せめて曇っていて欲しかったです。朝日が目に痛かったのですよね。朝は、太陽が黄色かったですよ、本当。


 エルヴィーラも、僕が起きたからか目を覚まし、その魅惑的な褐色の肌を濡れたタオルで拭くと身支度を整えます。その間に僕も準備しましたよ、じっくり見ると我慢できなくなりそうですしね。いやぁ、この肉体、色々な意味で体力があってくれて助かるのですが、こんな時は、ちょっと待って欲しいと思うところもあるのです。


 今日の予定は、鍛冶屋を探して武具の現状確認です。武器はお互いに問題ないと思うのですが、矢がないですし、僕の鎧が少し怪しいのですよね。最悪、新しいを買うことも覚悟しています。


 準備が終わると、宿のマスターに話しかけて、2人でご飯を食べました。1階の酒場には人がいなかったので大丈夫かと聞いてみると、ちょうど空白になる時間だったみたいです。朝には遅く、もう少し経てば賑わうそうです。


 食事が終わると、僕だけが背負い袋を背負った状態で彼女と並んで出かけます。さすが冒険者の町なので、通りを歩いていると、色々な種族とすれ違いました。その中にはエルヴィーラと同じダークエルフの女性も、堂々と顔を隠さずに歩いていますし、並んでいるのが普通のエルフ女性だったりして、冒険者は実力の世界で種族差を考えないんだなって実感しましたですよ。


 余談ですが、二人ともエルヴィーラほど、胸大きくないどころか、かなりスレンダーでした。後、さすがエルフ族は美形だと思ったのですが、美人度もエルヴィーラが上だと補足しておきます。もしかしてだけど、エルヴィーラってかなりレアな部類なのでしょうか?


 ……って、褒めるようなこと考えていたら、腕に軽い痛みがあったので見ると、無言で僕の腕を抓る笑顔でエルヴィーラがいましたですよ。笑顔が怖いのですよ。


 なぜか言い訳しながらも、視線を彷徨わせていると、他にもドワーフや獣人族、リザードマンなんかも発見しました。半数は人間で、半数は異種族って感じですね。さすが冒険者の町。みんな普通に歩いていましたよ。二人でフードまで被ったマント姿だと逆に悪目立ちしてそうです。もしくは来たばかりって分かっちゃうかもですよね。


 そんな町の雰囲気を学びながら少し歩いた後、一軒の鍛冶屋さんを発見しました。この周囲は鍛冶屋が集まっているのか、金属を精錬する音が、そこかしこから聞こえます。その中でこの鍛冶屋さんを選んだのは、唯の感ですけどね。


 そんなに大きくないですが、周りと同じぐらいの大きさの煉瓦作りの家は、正面玄関が大きく開いていたので、遠慮なく中に入る事にしました。


「すいません。素材を買って欲しいのですけど……」


 二人で玄関から中に入ると、フードを取りながら僕が声をかけます。少し薄暗い玄関先には、大きなカウンターが備え付けられていたので、主人が来る前に、素材の入った背負い袋を置かせてもらって、中身を出していきます。ゴブリンやブラックウルフの牙や爪なので、そんなにお金にはならないかもですが、今は少しでも現金を増やしておきたいですしね。


 並べ終わったころ、奥からのっそりと2メートルを超える逞しい男性が現れました。赤銅色の皮膚をしており、口元からは牙。頭部の中心部分にだけの短めな赤い髪では隠せていない額の2本角。発達しすぎとしか思えない筋肉。オーガと呼ばれる種族ですね。ソフトモヒカンっぽい髪形が似合いすぎていて、正直、怖いです。


「これか?」


 オーガの店主が、少し身を屈めながら、カウンターの上の素材を睨んでいます。いえ、観察していたのでしょう。暫く眺めた後、太い指で1つ1つの素材を確認していきます。その間、無言で大人しく待っていましたよ。何というか、迫力が凄いのですよね。


「鎧の修理はいいのか?」


 素材の金額は、予想より少ないですが、この町周辺では、もっと強力なモンスターが出没するし、その素材と比べたら仕方ないのですよね。代金を受け取ろうとしていたら、不意にそんな言葉が店主から聞こえました。


「厳しいと思うけど、予算に余裕がないんですよね」


 本当は修理した方がいいのでしょうけどね。それでも1度は仕事しないと財布事情が厳しいのです。その時は、この店にお願いしますと笑顔で告げるとエルヴィーラの矢だけを購入して店を後にしました。


 夕方近くですが、仕事がないかを探しにギルド支部に向かう事にします。この町で本格的に冒険者として始動なのですよ。

バレンタインだったので、ちょっとイチャつかせてみました。主人公は偏見の塊です。

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