第二十一話
最初は警戒されたけど、笑顔って大事なのですよ。特に美人の笑顔は武器ですね。えぇ、助けた商人のうち、若い方の男性には特に有効でした。20代後半ってところでしょうかね。エルヴィーラに微笑みかけられると、顔を赤くしながら笑顔でお礼を言ってきました。
年配の方は、少し警戒しているようですが、表面上にこやかに頭を下げてきます。二人とも、近くに停めてあった馬車で、この街道での行商をしているらしいです。今回は運がない事に、護衛を一人しか雇えなかったけど、普段はもっと人間を雇うそうです。
何でも町の方では、遺跡に居るモンスターが活性化し、それを素材の稼ぎ時とみた冒険者たちが大量に遺跡に向かい数が不足らしく、街でも護衛を雇えなかったんだって。まぁ、今の時期は街道に出てくるモンスターの方は少ないそうで一人で良いかと思っていたら、そこを盗賊に襲われてしまったと。油断って怖いって証拠ですね。
僕たちは中央の方から来た冒険者と名乗っておきました。冒険者だから遺跡目当て、そして中央じゃエルヴィーラの種族的に差別もあるんで、とか世間話に交えてね。
証拠にギルド証明を見せて信じてもらった後、倒された冒険者を埋葬していると、街まで護衛を依頼されました。断る理由もないので、その護衛を引き受けると、4人での旅を開始します。
とはいえ、馬車に乗るのは商人の二人だけ、その前方を、僕とエルヴィーラが並んで進んでいます。馬は速度重視ではないみたいで、そんなに早くないですしね。荷物は大体が保存のきく食材や調味料系らしいです。そうそう、冒険者のギルド証明は回収しておきました。ちゃんとした仕事だとは言え、彼らも逃げずに頑張ったのです。最後はしっかり報告してあげないとですよね。お金も貰えるですしね。
そのまま2日の旅を終え、ついに見えてきました冒険者の町『マウス』です。人口は千人単位ほどで半数近くが冒険者か捜索者。残りは、その冒険者たちを相手にする商売人という変わり種の町らしいです。
中央近くに、東西に流れる大きな川で二分された町で、北部分が冒険者、南部分が捜索者、及びスラムと言う町を囲むのは、大きな木で出来た壁。外側に斜めになって聳える無数の丸太で覆われている感じです。1本1本は太さが2メートル近くあり、高さも5メートル近くあります。おまけに先端部分がとがっていて出入り口は、北門と南門に二か所だけ。
なんでも150年くらい前に、伝説の精霊使いが、強大モンスター侵攻の際に一晩で作ったとのことなのですが、正直に凄いと思いました。
街道は町の近くで南北に分かれ、それぞれの門に続いていますが、僕たちが向かうのは当然、北門。
一応は、この町を治める町長さんと兵士が町の治安維持を任されているらしく、ちゃんと門番とかもいるそうです。本当に人が足りない時は冒険者ギルドに頼むそうですけどね。
後、貴族はいないそうです。なにせ町なので……規模を考えると、町?と疑問に思うのですけどね。
ちなみに町長さんは、準貴族って扱いで、帝国から正式に任命されているそうですが、元々は此処をベースキャンプにしていた初代冒険者の子孫らしいです。昔から帝国の介入を嫌って、冒険者たちだけの町として頑張っているそうなのですよ。周辺はモンスターも多く、開拓もされていないので領地には向かない土地柄なのと、税金を多めに納めて、遺跡から出てくる貴重なアイテムは帝国の首都方面に流しているので独立状態が保てているんだって話も、旅の途中に商人さんたちが教えてくれました。
えぇ、僕じゃなくてエルヴィーラに若い方の商人さんがね。やっぱり美人は得をしていました。
お昼過ぎに北門に到着したのですが、街に入る商人の列に混じって待っていると、何人もの出ていく行商人っぽいグループとすれ違いました。日常品や食料品は輸入で、アイテムなんかを輸出で補っているのですよね。冬でも道が雪にと出されたりしない南部地方だから成り立っているのかもと思いました。
後、東にある大きな平原の先に広がる遺跡群なのですが、その広さ、分からないらしいです。広すぎて、誰も端まで行けないのと、奥に進むほど、危険な大型モンスターが増えるのが理由だそうです。
後、人口があまり急激に増えないのも、新しく街に来る冒険者と途中で倒れる冒険者の人数が拮抗しているかららしく、結構、際どいバランスで町が保たれているんじゃ?ってのが正直な感想なのです。
暫く待って、僕たちの番になると、先に商人さんたちが門番をしていた兵隊さんたちに証明書を見せ、荷物の簡単な確認の後、事情説明。そして僕たちも、フードを下して顔を確認してもらって、中央から来た事を説明してギルドの証明を見せました。
やっと町にはいると、すでに夕方でした。早めに宿を取りたいのですが、その足で商人と共に冒険者ギルドに向かいます。簡易依頼なのですが、一応は僕たちを雇った旨と、最初に雇った冒険者が死んじゃったことの報告なんかもあるそうです。
町の見学は、明日以降になりそうだと、妙に赤い夕陽を見て思いました。




