第二十話
思い掛けない拾い物をしてから、更に1日を掛けて丘を登り切り、下りで2日。予想より大きかった丘越えが終わり、小さな獣道を進んで、やっと街道が遠目に、見える距離まで来ました。
地図で見た感じからの予想より遠いと思ったのですが、そもそも、この世界には正確な地図なんてないですしね。街道と合流出来れば旅も楽になるでしょう。
でも、ここで少しコースを変更することにしました。人目に付かない夜のうちに街道を突っ切って、北側に一度抜けてから、街道を沿うように目的地に向かいます。
できれば、再度、街道に合流する時には、別の旅人なりに目撃されたいのですけどね。これで、中央近くから来たって言った場合いでも、調べられても目撃証言から、確かにと思われるかもしれないですしね。まぁ、そこまで求めるのは贅沢かもですが、念には念をなのです。
こうしてコースを微調整しながら、予定通り夜のうちに街道を突っ切り、1km北側に進んだ先の林で裏道のような小さな獣道を見つけたので、そこを旅しました。
不思議な事にここら辺では、ゴブリンやブラックウルフと遭遇しなかったのでエルヴィーラに聞いてみると、モンスターのテリトリーが変わるからだそうです。つまり、ここから先は、ゴブリンやブラックウルフでは太刀打ちできないモンスターが多くなってくるそうで、危険度は跳ね上がるみたいです。油断はできないですね。
だから、帝国も基本的にこの周辺は開拓していないのですが、この先の町が唯一例外。近くに遺跡があるので、それ目当ての冒険者や探索者を中心に、遺跡からの財宝やモンスターの素材目的に集まった商人なんかで勝手に大きくなった場所なのだそうです。
エルヴィーラからの説明に感心していましたが、その情報を僕の肉体の記憶が持っていなかった事には驚きません。この世界で情報の伝達に、一部では精霊を利用しているかもですが、一般的ではないですしね。更に情報統制とか国レベルどころか領地レベルで普通にしてそうですし、知らない事も多いのです。田舎者ですし、碌な教育はされてないですしね。
肉体に期待するのは体力で十分。この旅でも、確かに長く厳しい旅のはずなのですが、体力的には、それほど疲れていません。
いやぁ、本当にありがたいのですよ。エルヴィーラも経験から体力の消耗を抑えて旅を続けているですが、僕には経験がないので、下手したら、僕が足手まといになった可能性もあったのですよね。今はエルヴィーラから長旅に必要な事を教えてもらいながらなので、飽きることないですしね。
こうして旅を続けていると、運良くモンスターに遭遇することなく目的の町が近づいてきました。
後、1日か2日で目的の町につく距離になったので獣道から外れ、街道に合流しようと南下し、平原に出たときです。『気配探知』に反応が、エルヴィーラもフードを下して長い耳をぴくぴくさせています。
どうも街道の方で一台の馬車が、人間の集団に襲われているみたいなのが見えました。
エルヴィーラの方を向くと小さく頷いてきます。
「どうも……話しぶりから、冒険者か探索者崩れの盗賊集団みたいね」
「うん。襲っている気配は6人。襲われているのは3人…あっ!今2人になったよ」
感じていた気配が希薄になっていったので、やられたみたいです。護衛だったのかもですが、ここは恩を売ることにしました。目撃者にちょうどですしね。エルヴィーラに矢の残り本数を確認すると、後4本とのこと。なんとかなるでしょう。
僕もフードを下して、襲われている地点に走りはじめます。さすがに盗賊たちも僕の接近に気がついたみたいで何か喚いていますが、そんなのに付き合う義理はありません。白水晶の大剣の柄に手を伸ばすと、いつでも抜ける準備をし、足を速め更に距離を詰めます。
僕の接近に気が付いた一人の盗賊が錆の浮かんだ長剣で斬り掛かってきましたが、相手の間合いに入る前に、抜刀。一気に袈裟切りにしました。血や臓物をまき散らし倒れる男。戦闘不能だと手応えから判断できたので、そのまま別の男に接近し、今度は横に一閃。相手が剣で受け止めようとしましたが、その程度で止まるほど、勢いは弱くありません。
さすがに武器ごと斬り裂けないですが、防御の上から体を強打し動きを止めることに成功しました。
でも、この瞬間にも、別の盗賊二人が僕の左右に回って、剣を突き付けようと動いていました。まぁ、目立つのが仕事なので仕方ないのですけどね。そして、その盗賊のうち、僕に近かった方の体に、矢が突き刺さり、爆発音と共に吹き飛ばされていきます。
今の攻撃は、エルヴィーラの援護射撃ですね。確認するまでもないので、僕は驚いて動きを止めていた残りの盗賊の胸部に剣先を突き出し、貫きました。
武器の射程が違うのですよ。そのまま、勢いよく剣を抜くと飛び散る血飛沫。それは気にしないで、ガードに失敗し呻いていた盗賊の首を刎ねておきます。これで残り2人。
1人は剣を構えて、憎々しげにこちらを睨み、もう1人は、僕とエルヴィーラのどちらに対処していいのか迷っていました。その迷っている隙に、その男の頭に矢が命中し、炸裂音と共に仰向けに倒れました。
その音が引き金となったみたいで、男は僕の方に間合いを詰めてきました。エルヴィーラからの援護の盾にするみたいです。僕は、上段に剣を構え相手の突進を待ち受けています。相手の間合いになっても動かなかったのですが、動きは見えていたのですよね。
男が勝機を得たと口元に笑みを浮かべて、剣を突き出してきた瞬間、後ろに思いっきりバックステップし、射程から逃れるのと同時に、腕の力と剣の重さを利用し、盗賊の頭部に一撃。最初から相手の間合いで戦う気はないですし、安全第一になのですよ。
腰の入ってない一撃なのですが、腕力と剣の重量が合わさった一撃で、相手の頭蓋骨を砕くには十分なのです。
兜も装備されていなかった頭部に剣を討ち込まれ、足から力が抜けたように倒れる男を見た後、周囲の確認。これで盗賊は全滅ですね。
血脂や肉片なんかを布で拭き取ると、白水晶の大剣を鞘に戻しエルヴィーラとも合流。少し乱れていた息も整ってきたので、襲われていた商人っぽい2人に話しかけることにしました。




