第十九話
「ヴァイデって、たまに言葉と表情が違うわよね」
「……え?」
旅の途中でエルヴィーラから言われた言葉に、呆けた表情になっても僕は悪くないと思うのですよ。
南門から出て旅に出たのが5日前。今は街道ではなく東北方角に伸びている細い獣道を進んでいる最中なのです。門を抜けるときに偶然、最初に街に入った時に居た若い兵士さんがいたので、世間話のように南の国境近くで傭兵の真似をしながら大きく稼いでくるって言っておきました。
もちろん、調査の手が伸びた時にミスリードを誘うのが目的なのです。食料なんかが大量にある大荷物で旅に出ても変じゃない理由だとも思ったですしね。
それから3日は素直に街道沿いを南下して、そこで東の方にコースを変更。そのまま道なき道を進んだり、今みたいに見つけた獣道を進んだり、人の目は避けながら目的地に向かっている最中に、さっきの会話になるのです。
旅の途中でも、数回ゴブリンやブラックウルフとの戦闘を経験したのですが、その時、僕は口で、怖いとか戦いたくないと言っているのに、顔に笑みが浮かんでいるときがあるそうなのです。それもダークエルフであるエルヴィーラが、一瞬ときめくような感じで。それって獰猛な笑みってことなのでしょうか?自覚はないのですよ。
これは、この世界に染まってきているからなのか、肉体の影響なのか、それとも精神の問題なのか、判断に迷うところです。まぁ、気にしても解決しないので流す方向で考えを放棄。大きな問題ないと思うしね。
エルヴィーラの言葉には、微苦笑を浮かべて答えて旅を続けます。さすが危険な世界。街道を外れると一日に一回はモンスターに襲われている気がするのです。まだ僕の『気配察知』で不要な戦闘を避けられたり、エルヴィーラの『狩人』のスキルのお蔭で森の中でも方角に迷わなかったりするので、比較的安全に旅を続けていけるのですが、まだまだ楽観できないですよね。
倒したモンスターの素材ですが、牙や爪だけを採取しています。他はさすがに日持ちしないし、数も多いので荷物が増えすぎてしまうのですよ。例外としてウルフの肉だけ一部採取し、その日のご飯の足しにしていますけどね。
こうも戦闘が続けば、自然と白水晶の大剣の練度も上がっていくのですよ。ゴブリンやブラックウルフ程度なら一撃で倒せるようになってきました。もともと高威力で頼んで作ってもらったですし、重量もありますしね。エルヴィーラでは、持つのがやっとらしいです。僕にとっては、ちょうどの重さなんですけどね。
さすがに避けるって行為には不利になる重さなのですが、先手必勝。一撃必殺。なんてのが理想の武器なのですが、さすがにそこまでは求められません。僕の技量的にね。
モンスターの攻撃を受ける割合は増えてきているのですが、一応、硬皮鎧の防御力の高いところで受けるように体を動かしているのですが、鎧は傷だらけ。なかなか歴戦の鎧に見なくもないと、負け惜しみ混じりで思っています。お金があれば、金属系の鎧に変更しても良いかもですね。
そんな旅を続けること、更に5日経過しました。そろそろ東に向かう街道に合流してもいいと思うので、今進んでいる丘を越えたらかな?
この旅のコース的に考えると、今いる場所は一番人が来ない、ある意味では人の領域の外とも言える場所だからね。警戒して行かないとなのです。周囲には背の高い木々が生い茂っているので視界も悪いしね。
木々の間を抜けるように丘を登っていくと、不意に景色が変化しました。まるで大きな爆発でもあったかのように地面が焦げ、周囲の木も根元近くから折れてクレーター状になっている場所があったのです。最初、モンスターを警戒しましたが気配は全くしいません。
不思議に思い、一歩後ろを進んでいたエルヴィーラの方を振り向くと、不思議そうな顔をしていました。しかし、立ち止まっていても始まらないので小さく頷くと、いつでも剣を抜けるように右手で柄を掴んで進んでいきます。
警戒しながら進むと、地面が抉れたような場所を発見したので、そこを迂回しようとすると、その中心部分に何か光るものがある事に気がつきました。エルヴィーラと声をかけ、中心部分に向かいます。
そこに埋まっていたのは、金属の塊。周囲は焦げているのですが、一部は剥がれていて、それが陽光に反射して光っていたみたいです。
好奇心から、それを掘り返してみると、かなりの大きさでした。成人男性の頭くらいの大きさで、重さもかなりのものです。焦げた部分を払ってみると、鉄で出来た大きな潰れかけの卵に見えます。底になっていた部分には無数の傷もあり、衝撃で潰れているのですが、中も外と同じように金属の塊で、本当の卵ではないみたい。
これ、もしかしたら隕石の一種なのかも?と魂の知識で予想していたら、エルヴィーラも興味深そうに見ていました。
せっかく拾ったので、何かに使えるかな?と相談し、重量もあるので僕の背負い袋に入れておく事にしました。思わぬ拾い物をしましたが、ここは危険な場所には変わりないので、気を引き締め直し旅を再開したのでした。




