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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第十八話

 宿の部屋に戻って部屋で2人っきりになると、エルヴィーラが最終確認とばかりに、一緒に逃げる理由が知りたいと言ってきました。正直に答えると恥ずかしいので、誤魔化そうかとも思ったのですが、真剣な表情で聞いて来たので素直に答えることにしました。


 簡単に言ってしまえば、いろいろと相性がいいから、の一言で済ませられるのかも知れないのですけどね。確かに出会ってからの時間は短いのですが、付き合いの長さと相性の良さは別なんだろうなって実感したですよ。


 きっと、合わない人とはいくら長く同じ時を過ごしても、やっぱり合わないですしょうしね。こう考えるとエルヴィーラとの縁は貴重で、だから大事にしないと駄目だろうなと思います。


 なんだか恥ずかしい事も言ったような気がするのですが、エルヴィーラも納得してくれたようなので安心です。何かを隠すように少し頬を赤らめつつ、柔らかな微笑みを浮かべているだけなので、エルヴィーラの真意、僕には分からなかったのですが、その長く綺麗な耳が小さく動いているのが不思議と印象に残っています。


 すっかり宿の外が暗くなっていたので、これからは、エルヴィーラから聞いた話や、僕の知っている知識、耳にした噂話なんかを総動員して逃走計画を考えることにしました。


 この都市から外に出るには東西南北に4つある門から出るのですが、目的地を考えると東門から延びている街道に進むのがベストっぽいのです。


 北の街道は帝国の中心に向かって伸びているので、貴族の支配が強くなっていくのは理解できますし、今、僕たちを探しているのは、その貴族の1つ。下級とはいえ権力の程度が分からないので、避けた方がいいでしょう。


 西門から延びる街道を進むと、緩やかに北上し、山岳地帯を超えると海の方に出るそうです。港町なんかもあるそうですが、これから本格的な冬の季節に海には行きたいくないです。仕事も少なそうですしね。


 南門から出ると蛮族領との境で、大きな都市はなくなり戦場跡にも繋がっています。それに行方不明になっている貴族は戦争に参加していたのは知っているので、関係者が捜索している可能性が高いでしょう。


 消去法でも東門から続く街道になるのですが、その先には遺跡群と強力なモンスターが跋扈する辺境になるそうです。その先には確認されている国もなく秘境が広がっているので、仕事にも困らないでしょう。都市と言うほどではないのですが、1つの町があって、そこは冒険者や捜索者の為に大きく発展した町だという話ですしね。冒険者ギルドの支部もあるでしょう。


 距離にして徒歩で10日ほど。しかし、倍の20日の旅を覚悟しています。南門から出発し、途中で北東にコースを変更、迂回するため街道も外れるので、何があるか分からない危険な旅になると予想できたのですが、あえて提案しました。


 確かに危険が増すのですが、出発した目撃情報を南門に残し、僕たちを探している相手の目を眩ませるのが目的なのです。そこまでする必要があるのかと聞かれたら困るのですが、念には念をと思いましてね。


 20日以上の長旅になるので準備も大変そうですが、軍資金として金貨が1枚残っているので、これを使い予定です。緊急時の蓄えって大事なのですよ。


 向かう場所と進むコースが決定すると一安心。今度の場所は冒険の町とも言われる場所。二人で遺跡調査は厳しいかもですが、知らないモンスターとの遭遇なんかを考えると、やっぱり興奮してきますよね。短い期間なのですが、冒険者の感覚になっているのかもしれません。


 明日から準備を始めて、そのまま出立する事で話が纏まり、未知に対する期待感と不安感、半々かな?と考えていると、不意に抱きつかれてベッドに押し倒されていました。甘い薔薇のような香りに包まれながら、驚いて白黒させていると、そのまま唇に柔らかな感触もして……。


 早朝から出発の準備をするつもりだったのですが、どうやら準備を始めるのは少し遅くなりそうです。

この主人公、まだ女心の機微は理解できてません。

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