第十六話
約一週間で城塞都市に戻ってきました。予定通りなのです。いやぁ、城門を潜るのに冒険者ギルドの証は本当に便利ですね。その足で報告と素材の売却をしたら合計で銀貨20枚になりました。
「しかし……お前たち、もっとゆっくりしないのか?」
ゴットホルトさんが蝙蝠そっくりの顔で聞いてきたのですが、答えは苦笑を浮かべながら小首を傾げるしかできませんでした。どうも無茶して飛ばしている部類みたいなのですが、そんな自覚はないのですよ。
普通は、稼ぐと思いっきり使う、お金がなくなると冒険のサイクルが普通なのだそうですが、そこまで無理しているつもりもないですし、エルヴィーラとも相談して決めているので無謀って訳でもないと思うのですけどね。
でも、エルヴィーラには後でもう一度確認した方がいいかも。僕の体力を基準にすると問題だよね。
夕方近くにギルドを出た後、その足でドワーフの鍛冶屋に向かいます。本当は一泊してからの方が良かったかもですが、我慢できなかったのですよ。
少し迷子になりそうになったけど、なんとか目的に鍛冶屋さんに到着。そのまま玄関から入ると大きな声を掛ける前に、カウンターの向こうの道具を手入れするドワーフさんがいました。一瞬、怪訝な顔をされたので不思議に思ったですが、二人ともフードで顔を隠していた事を思い出し、慌てて顔を晒して用件を伝えました。
ドワーフさん、小さく頷くと一度奥の扉の奥に行って、何か大きなものを乗せた台車を押して帰ってきました。そのうちの一つをカウンターに置くとエルヴィーラを手招きします。
布の包みをドワーフさんが取ると現れたのでは、黒い水晶で作られたような長弓でした。黒はエルヴィーラの注文ですね、聞かなくても分かります。
基本構造は大量の水晶に心臓と眼球を合成して作られ、弦には舌と尻尾の外郭を合成した素材を使用しているとのこと。強度も上がっていますが、なによりも精霊の力を乗せやすくなっているのだそうです。矢はゴブリン牙ではなく、一段上のウルフ系牙の鏃を使うことを勧められていました。
なんだかんだでエルヴィーラもやっぱり新しい弓が嬉しいのか、笑顔で感覚を試すように何度も構えています。
そして、次に乗せられたのは弓よりも更に大きな包み。ドワーフさんの手で布を取りはらわれて出てきたのは、2メートル以上ある大きな肉厚の剣でした。
直剣なのですが分厚い片刃で、その刀身は透明な水晶のようです。刀身全体の半分を水晶の刃が、反対側は岩のような色をした金属で覆われていて、厚みもあったので打撃武器としても使えそうですよ。刃部分の素材は水晶と牙爪の複合素材、反対部分は硬い外殻と鉄の複合素材だそうです。
ドワーフさんに勧められて持ってみると確かに重いですが、苦にはなりませんでした。軽く数度、素振りさせて貰ったですが『剣術』のスキルもちゃんと発動している感覚もあります。確りと両手に吸いつくような感覚にも大満足。
顔に出ていたのですしょう、エルヴィーラが子供みたいと小さく笑う声も聞こえましたが、人事とは言えないと思うのですよ。
更に剣の鞘を置くドワーフさん。説明されたのですが、この剣の作りは鞘もイメージしてだそうです。大きすぎるので普通じゃ抜けないから、覆うよう半分が鞘になっているとの事。最初意味は解らなかったのですが、実践して初めて納得できました。
つまり、水晶で出来た鋭利な刃先を鞘の先端に差しんだ後、残りの刀身部分を保護するよう鞘部分が覆う感じなのですよ。こうすると鞘と半分の素材部分が一つになるようにも見えます。そして鍔部分で固定する金具があって、剣全体が滑らないようなっていると。結構な重量なので、このまま鈍器としても使えそうです。
抜くと言うより、鞘から外す感じで使うので素早く構えることが出来そう。正直、これだけ大きいと普通に抜くなんて出来そうにないですしね。ドワーフさんの持論で冒険者の持つ武器は緊急時に準備できないと駄目ってことみたいです。
白水晶の大剣と黒水晶の長弓の出来は大満足。金貨2枚と大枚を払った価値は十分にあったですよ。専用の剣帯を襷がけにしてから背中に金具を使って装備すると、今まで使っていた僕たちの剣と弓はドワーフさんに買い取っていただきました。打ち直してどこかに納品でもしてください。
その後、何度かドワーフさんの前で素振りし、バランスなんかの最終調整を終えると、本当に手に馴染むのですよ。エルヴィーラの方も調整を終えると、満足げに微笑んでいました。
最後に、少しだけ増やした銀貨と使ってエルヴィーラがブラックウルフ狼の牙で鏃が作られた矢を一二本購入し準備完了です。
新しい装備に大満足しつつドワーフの鍛冶屋さんに笑顔で礼を言った後、フードを目深に被るとすっかりと暗くなった夜の街に出ました。これから今日の宿探しなのです。




