第十五話
武器を注文してから完成するまでの期間を、自堕落に過ごしたかと言えば、そうでもなかったのです。
ブラックウルフの硬皮鎧シリーズのうち、一番損傷の酷かったのは手袋なのですが、軽兜、硬皮鎧、靴にも、それなりの損傷はあったのです。しかし、新しく買わずに半日で終わる応急修理だけで十分強度は戻ってくれたので、冒険者ギルドの依頼を受けるとこにしました。修理費も掛かっているしね。
金銭的な余裕は出来たのですが、それでも駆け出しなので、少しでも経験をと思ったのですよ。それには実際に仕事をするのが一番。二人で相談して決めた結果です。
午後からはギルドの受付でゴットホルトさんにウルフ系モンスター討伐の依頼を受注する旨を伝えました。場所は懐かしき古巣ってのは大げさなのですが、最初に逃げ込んだあの森、僕がこの世界で最初に夜を過ごした場所なのです。往復で一週間ぐらいの依頼。帰ってきたら、ちょうど武器を受け取れると計算をしたのですよ。
久々の森での狩り、特に苦労はしませんでしたが、いい経験ができたと思います。
「……ヴァイデと私の戦い方、相性がいいのよね」
エルヴィーラとの連携で相談した時に返ってきた答えなのですが、笑顔で告げられると照れてしまいます。なんでも僕は敵の正面に立って攻撃し、敵の注意を集めようとするので、位置取りと射撃、それに魔法に集中できるそうなのです。同じエルフ族じゃまず出来ないって話だったですよ。
長寿なエルフ族は肉体が変化し難いのだそうです。例えば同じ期間、同じトレーニングを人間族と同時に行った場合、人間族の方は逞しい体になれても、エルフ族は全く変化しないとかもあるそうなのです。ある程度成長期に完成されてしまい、代わり精霊との親和性が高くなるからだと一般的には考えられているみたいです。もちろん個人差はあるのですけどね。
基本的に、普段の矢に込める魔法は、低レベルの『炸裂』と呼ばれる魔法らしいのですが、だからこそ素早く準備でき消耗も抑えられるとのこと。水晶大蜥蜴戦では最後に上位の『爆炎』を使ったのですが、予想通り消耗が激し過ぎて、実は後がなかった状況でもあったのだそうです。
で、そんな威力の低い魔法でも、命中箇所を絞ればより効果的に使えるので、余裕を持って狙えるのは大きい。おまけに僕はあまりトリッキーな動きをしないので、後方から距離を取って見ていると予想もしやすく戦いやすいらしいんだってさ。確かに速度主体の戦い方じゃないし、凄く器用って訳でもないので納得です。でも、力やスタミナには自信があるのですよ、本当。
矢での魔法、十分に凄い威力と僕は思っていたのが実は低レベルって聞いて驚きです。さすが攻撃的な火属性ってところなのですね。
何にせよ、背中を任せられる相手が居てくれるとありがたいのは確かでした。ブラックウルフを四頭以上狩ってくる依頼でしたが、結果としては十二頭と三倍の数を倒すことに成功しました。もちろん一回の戦闘ではないですけどね。大きな群れ一グループに、小さな群れが二グループって感じです。
集団だったので、全てを僕が抑えることは無理でしたが、エルヴィーラも動きやすい皮鎧に遠距離攻撃主体……だから距離を取るように、そして僕を盾にするように動いてくれたので勝手に狼が向かって来てくれるみたいで助かりました。
僕は『気配探知』で狼たちの大体の位置は把握していたから不意打ちの心配もなかったですしね。こう言う意味でも相性がいいと判断されているのかもしれません。
外見からは忘れそうになるけど、人生経験に200年の差は伊達ではないと思うので、その言葉を信用するのですよ。本人には言えないけどね。
森での活動もエルヴィーラが居てくれるとかなり楽でした。どうも『狩人』のスキルを持っているそうなんだよね。彼女が生まれ育ったダークエルフの氏族は、森の中で生活していて、子供のころから狩りの手伝いをし、外に出るまでは狩りで生計を立てていたんだってさ。
エルヴィーラのスキルは『火精霊魔法』『弓術』『狩人』の3つ。だから森での狩りは得意中の得意なのだそうです。ちゃんと仕事っぽいスキルを持っているのが羨ましくて、自分のスキルを思い出し泣きそうになったのは秘密です。
狼の討伐確認部位と毛皮や、爪、牙なんかで背負い袋をいっぱいにして十分に稼いだと思うので、今回はこれで切り上げて街に帰ることにしました。鎧には小さな傷が増えたけど大きな怪我もないし、体力にも余裕をもって行動しないとね。水晶大蜥蜴の時みたいな緊急事態がいつ起こるかも分からない外の世界だしさ。
道中、新しい武器ができていると思うと、やっぱり男としては楽しみだったです。帰るだけなのに、街が近づくにつれて顔に締りがなくなっていくのをエルヴィーラに苦笑されてしまったのですが、どうしても我慢することはできませんでした。




