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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第十話

 装備の充実や冒険者としての登録が終わった翌日、朝食を二人で済ませると冒険者ギルドに向かいました。


 三十分ほど歩いて到着したギルド支部の受付で蝙蝠さんことゴットホルトさんに、仕事がないか聞いてみました。壁の一つに依頼書が貼られてる一角もあるのですが、初心者は、儲けは少ないけど、手堅い依頼を教えてくれる仕事を、こうして受付で聞くのも一つの手なんだってさ。


 ゴットホルトさんの名前、仰々しいと聞いたときは思ったけど、わりと普通にある名前らしいのです。いやぁ、知らないで冗談にしたら恥ずかしい思いをするところでしたよ。


 僕たちの装備は、登録したての若手としては、充実している方らしいので、討伐系か、少し危険な区画での採取系を選んでくれたので、エルヴィーラと相談して採取系にしました。


 普通の新人は、ゴブリン素材の武器に、ゴブリン皮の皮鎧だけ、それに登録料を準備するだけでも大変らしいからね。僕のブラックウルフシーリズやエルヴィーラのブラックウルフ、ゴブリン複合セットで装備を整えていたのを褒められたのですよ。お金を掛けた甲斐があったというものです。


 さて、依頼を受けて捜索に行く場所なのですが、西門を抜けて街道を進むこと二日ほど進んだ場所にある岩山。更にその山の中腹に群生している薬草の一種を10束以上採取してくるってことでした。これが最低数で、これ以上は倍数毎にボーナスが発生するそうです。


 足場も悪くモンスターも生息する危険地帯なのですが、この時期はモンスターが比較的少ないし、大型モンスターの目撃情報も上がってないので大丈夫だろうとゴットホルトさんは笑っていたけど、世の中絶対はないのですよ。


 二人で依頼を受けた後、一度宿屋に帰って準備を終えると宿を引き上げます。帰って来るか分からない冒険者のために、いつまでも部屋をキープしてくれるわけないからね。


 それでも笑顔で送り出してくれた宿の人たちに、笑顔を返して出発しました。もちろん保存食を買っていく事を忘れてはいません。


 西門を潜って街道に出ても、特に尾行されている形跡もなかったですし、天気はこの時期標準の曇り空だったのですが、冬でも暖かい南部を旅するには悪い条件ではありません。


 エルヴィーラと数日ぶりの旅の再開なのですが、あの時と違ってお互いに装備はしっかりしているので安心感が違うし、数日の短い付き合いですが、少しはお互いの性格を理解出来てきていると感じているのです。


 だから気安く声を掛けて、冒険の相談なんかも出来るのですよ。


「目標は何束ぐらいにしよう?」


「そうね。五倍の50束は狙いたいわ。もちろん、どれだけ生えているかしだいだけどね」


 エルヴィーラの言葉に、二人での採取に丸一日費やせば可能っぽい数字だと思ったので、笑みを浮かべた頷きで了承を伝えました。


 後、エルヴィーラに『精霊魔法』についても聞いてみました。彼女が使えるのは『火の精霊魔法』。イメージとしては攻撃的だったのですが、それで間違ではなく、普通は高威力だけど、集中に時間が掛かって魔力の消費も多いのが基本。でも、彼女は独自の工夫で、魔力消費をある程度は軽減しているそうです。


 その後も細かい打ち合わせをし、他の旅人や行商の馬車とすれ違いながら何事もなく過ぎていきました。


 それからも街道の旅は順調でしたが、二日目の夕方から少し細い道にコースを変更し、岩山を目指しています。


 山は既に目視できるのですが、途中『気配察知』に反応があったので、短くエルヴィーラに警告を発して、剣を抜きながら僕が前に出ます。


 横の雑木林から飛び出してきたのは三匹のブラックウルフ。予想通りだったので、同時のタイミングで一歩踏み込んで、まだ着地していない一頭に、両手で持った長剣(ロングソード)を叩きつけました。


 頭の肉を断ち、骨を砕く感触を感じつつ、視線を残りの二匹に向けると、一匹はエルヴィーラの放った矢(アロー)で片眼を貫かれ、着地に失敗していたので、残り一匹に走ります。


 最後の狼も僕に気が付き、着地の瞬間、器用に方向を変更し、正面を避けようとしたみたいですが、横合いから飛んできた援護の矢(アロー)が肩口に刺さり、動きを鈍らせたのです。その瞬間に僕は加速して、横薙ぎに長剣(ロングソード)を狼の顎に叩きつけて、確かな手応えと共に勝利したのでした。


 その後、三匹から爪と牙だけを取って、死体は雑木林に投げ捨てておきました。別の野生動物かモンスターの餌になると思うです。


 『気配察知』の範囲ぎりぎりだけど、結構な数の気配を感じているんだよね。まぁ、距離もあるし、こっちから仕掛ける予定はないけど、もしかして狩り場としては穴場なのかも?


 あっ!目的は岩山だし、もうすぐ冬だから、獲物を求めて狼たちが麓近くまで下りてきているのかも。南部で暖かいって言っても、それは僕の感覚なんだよね。


 問題ないってゴットホルトさんから聞いていたけど、あれは群れが別れて行動しているからかもだし、少し魂の時の常識に囚われていたのかも、これは気を引き締めないと。


 今は他の群れと戦うのを避けて、襲撃をやり過ごしながら進むことにしました。


 臨時収入を手に入れたのですが、やっぱり外の世界は安全じゃないのです。何があるか分からないので、油断しないように岩山への険しい道を歩き出したのです。

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