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ある妙な冒険者の手記  作者: 秋山秋
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第九話

 そうそう、今も二人一緒で宿に泊まっているのは、お金の関係なんだよね。さすがに二人とも余裕がないのです。だけど色々と相談もできたのです。


 結論から言うと、エルヴィーラも僕と一緒に登録して、暫くは一緒に冒険者をしようという話で落ち着きました。


 いや、生存率を考えると悪くない話だし、エルヴィーラは傭兵とはいえ、元は蛮族軍に雇われていた身。冒険者に登録すれば、報酬の何割かは、冒険者ギルドに取られるけど、身分を保障してくれるものが貰えるんだってさ。まぁ、エルヴィーラに聞いた話だけなのですけどね。


 今日の買い物で疲れた足腰をマッサージさせられながらなのですが……あれ?


 細かい事は無視して、相手に裏切り難い理由があるんだから、僕も問題ないと同意しました。前世の記憶からも、前衛と後衛が揃っている方がいいと思ったのですよ。


 だから、次の日の朝からは二人で冒険者ギルドの支部になっている建物に向かう事になりました。場所は、西門と北門の中間地点近くにあるんだってさ。そんなに遠くないので安心なのです。


 ちなみに冒険者の仕事は主に、モンスター退治、素材収集、薬草採取、商業物資の護衛、遺跡探索などなど……どの国でも重要な事らしいです。だからギルドは国に属さない独自の組織として各国で運営中。


 本部はどこか誰も知らない不可思議さでも、国の介入を拒んでいるらしいです。だからか、規則は厳しく、入るには試験もあるそうなのです。やっぱり実力の世界なので、実戦的な試験を覚悟しとけって、朝食時に聞いた宿のおじさんからの話でした。


 ちなみに、冒険者ギルドに登録しないで危険だけど報酬は多い裏稼業みたいな人たちも当然いて、自由の探究者って意味合いで、探究者を名乗っているそうです。


 由来を聞いた時、不思議と、ちょっと恥ずかしい気分になってしまいましたよ。


 エルヴィーラは、探究者側だったみたいだけど、安全を優先しようと冒険者に転職するそうです。まぁ、探究者は自称なので、転職とは言わないかもなのですけどね。規則や堅苦しさは我慢するそうです。


「ここがそうみたいね。覚悟はいいかしら?」


 一緒に歩いて来たエルヴィーラの言葉に、頷きだけで答える失礼をしながらも、到着した一際大きな建物を見上げました。


 四階建かな?木造ではなく煉瓦作りの立派な建物。大きな両開きの扉の上に冒険者ギルドって看板があるので間違いないのです。今は内側に扉が開きっぱなしの出入り口から、重装備な人や、ローブですっぽり体を隠した人なんかが何人も出入りしているのを見ると、きっと先輩冒険者ですよね。


 一度、エルヴィーラの方を見て、表情を引き締めて頷くと一緒に出入り口を並んで潜りました。


 エルヴィーラはマントに付いていたフードを深く被って顔を隠していたけれど、やっぱり緊張している気配がします。お互い初めてだしね。でも一人じゃないから心強ってのが本音なのです。


 並んで受付カウンターに近づくと、何人か受付に人がいたのですが、一際目を引いた人物の元に進んでしまいましたです。だって、どう見ても顔が蝙蝠さんなんですもの。それも痩せているですが長身で2メートル近くあったのです。よく見ると背中にも蝙蝠の羽が見えました。


「すいません。二人で冒険者登録したいのですが、ここで、宜しいでょうか?」


 物珍しさに誘われて来たけど、目的は忘れていません。他の職員さんもこっちを観察しているのが分かったのですが、少し大きめの声でしっかりとなのですよ。恥ずかしがっていたら先には進めません。と、強がっていますが、エルヴィーラが居てくれたからですよね。


「珍しいな。俺に声を掛けるとは……怖くないのか?」


 受付さん、何かの書類を準備しながら聞いてきました。表情は分からないのですが、笑っているようにも思えます。


「怖くないですよ。まぁ、珍しいとは思っていましたけど……それだけです」


 正直に答えると、受付さん、正直だなと喉を鳴らすように笑って書類を二人分、差し出してくれました。そして、記入方法を教えて貰うと、さっそく記入です。


 その時、エルヴィーラの種族確認のため素顔を晒すと、受付の蝙蝠さんから妙に納得したような気配がしたので不思議でした。


 書くことは、名前や出身、前の職業、出来る事なのでしたが、ここはヴァイデとして正直に記入すれば問題なかったです。エルヴィーラは傭兵って書いていたしね。実戦経験がある事まで記入してから蝙蝠さんに書類を返すと、そのままの流れで確認作業に移りました。


 蝙蝠さんがボーリング球くらいある不思議な光沢のある水晶玉を持ってくると、両手の指先を傷つけ、水晶玉に両手を置くように指示されましたので素直に従います。そして、記入した紙も水晶に押し付けて、蝙蝠さんが何かを囁くと、水晶が小さく震えて終了しました。


 そして別の職員さんに書類を渡して、再度の確認をして貰うみたい。どうも嘘発見器みたいな機能がある気がします。エルヴィーラも同じようにした後、結果待ちです。


 その間に蝙蝠さんに、ギルドの規則や冒険者の心得なんかを教えて貰っていました。実戦経験があるので、テストは問題ないだろうと時間短縮を兼ねていたみたいです。


 説明が終わって、結果が出るまでに少し時間ができたので、雑談になったのですが、その時に、僕は冒険者に憧れ兵士になってスキルを習得と最後の親孝行をした事にしました。その方が自然だと思ったしね。


 冒険者になる経緯について、エルヴィーラは小さく笑うだけで多くを語らなかったです。事実は喋れないけどさ、ミステリアスなダークエルフの女性って事で納得されてそう。美人は此処でも得をしています。


 こうして時間を潰していると、実戦テストになりました。


 受付から別の扉を潜って裏庭みたいな場所に案内されて、僕は剣と体の動きを、エルヴィーラは弓と魔法を見てもらいました。いや、本当に見られただけなんですよね。大丈夫かな?と心配もしたのですが、考えたら案内してくれた壮年の男性から、まったく気配がなくて、僕より確実に実力者なのだと理解できました。


 ちゃんと二人とも合格です。最低ラインには達しているって言われて僕は嬉しかったのですが、エルヴィーラは少し複雑そうな顔をしていたので印象に残っていたりするんだよね。


 受付に戻って蝙蝠さんに合格を告げると、準備してあった銅のプレートが付いたネックレスを差し出してくれました。大きさは前世の記憶で言うところの兵隊さんが持っているドックタグと同じぐらいかな。


 そこには僕の名前と、登録した場所が書かれていました。最後に、裏面に埋め込まれていた小さな石に僕の血を一滴垂らして出来上がりらしいです。今日だけで指先にたくさん穴が開きましたよ。


 登録の値段はこの銅のプレートの価格に、手数料や税金込みで銀貨10枚だそうです。かなり手数料が多い気がしたのですが、二人で10枚ずつ支払い登録完了。


 僕は嬉しさから笑顔になって、さっそく首からネックレスを装備しました。エルヴィーラはあまり表情を変えずに装備していましたが、これで二人は晴れて冒険者なのです。


 そして、待っていたのは初心者講習。


 蝙蝠さんに言われ、冒険者の証とも言えるネックレスを貰ったのがお昼前だったので、外で昼食を済ませてからギルド支部に戻ってくると二階の小部屋を準備してくれていたです。


 二人だけでも受ける事が出来たので、そのままの流れに身を任せて講習を受ける事にしたのですが、講師は実技テストを見てもらった男性でした。


 元冒険者で、今は後進の育成に力を注ぐギルド職員らしいのですが、体験談も踏まえての講習だったので最後まで飽きることなく聞く事が出来たのです。エルヴィーラも真面目なところがあるみたいで、一生懸命に聞いていましたよ。


 講習が終わると、すっかり夜だったので、今日はこのまま帰って依頼は明日からにする予定です。なにせ、早く稼がないと本当にお金がないからね。

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