II
ウニーシティーは大きい。見上げると全面ガラス張りのドームがあり、綺麗なオフィスビルが並んでいる。僕はウニーの社員を一人捕まえて、取締役員のオフィスはどのビルにあると尋ねた。最初、その社員は僕のことを胡散臭く見ていたが、僕が結城に与えた力を使うと彼はすぐに一番大きいビルを指さした。
同じような感じで僕は受付のお姉さんを説得して、会社へと乗り込んだ。色んな社員が行き来して、僕は一度押し倒された。いくら僕がこの世界の神だと言っても、身体能力は結城の身体に縛られているから仕方ない。
僕はプロダクト・ディベロプメントを担当する取締役員のオフィスに忍び込んだ。ノックもせずに入ってくる僕を見ると五十ぐらいの白髪頭をした男はずんぐりした腹を抱えて立ち上がった。
「なんだね君は!」
その瞬間、僕は彼に何を言えば自分の意思を通せるのかすぐにわかった。
「ウニーの救世主。僕はウニーをまた世界のトップにするために来た」
「これは何のいたずらかね?」
「いたずらなんかじゃない」僕は部屋に設置されたシングルソファーの一つに座った。「普通の人間だったらアポイントメントなしであんたの前まで来れるわけがない。僕が救世主だと言うことを理解したかな?」
「迂生くんが君を通しただけだろう」
迂生とは多分僕がさっき説得した秘書のことだろう。
「まあ、嫌なら僕は人事を担当する人のところにいくけど。僕にはいいプロダクトのアイディアがあるんだ。それで世界を掴む。僕に二十分ほど時間をくれるかな」
白髪頭は二秒ほど赤くなったが、すぐに冷静になり腰掛けた。
「わかった。じゃあ君の提案がよかったら、二十分ほど時間をくれてやる」
「僕のアイディアは……」
そこで言葉が止まった。僕にはアイディアなんて一つもない。結城の力は誰でも説得できることだが、新しい製品のアイディアを思いつくことはできない。
「新しいタイプのスマートフォンを作るんだ」
「それがおまえの新しいアイディアかい?」
「そう。それでウムソングとカップルを市場から追い出す」
素晴らしい製品のアイディアは思いつかないが、悪いアイディアでもそれが素晴らしいと相手に思わすことができる。数分後、僕は白髪頭を説き伏せることに成功した。
「素晴らしい考えだ」感服したように彼は言った。「君は製品開発のプロディジーだ。ウニーに入社するつもりはないか?」
僕は頷いた。「別に入社してもいいよ。事務仕事をさせなければ」
「そんなことは無能なやつにさせる。すぐにでも君との契約を交わしたいところだが、今はスケジュールが詰まっている。君は家に帰って両親と話してこい。いずれ私も彼らと話す」
彼のペン立てからボールペンを一本取り上げて、僕はメモ用紙に佐藤結城の住所と電話番号を書き込んだ。
「何かあったらここに電話してよ」
「わかった。そうする」
僕が行こうとすると、彼は僕を呼び止めた。
「君は高校に通っているのか?」
「通っているよ。一応」
「だったらそんなものは辞めちまえ。高校より今のウニーと日本が君を必要としている」
僕は笑った。「そうかな」
その言葉で僕は白髪頭のオフィスを後にした。




