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 総合スーパー内、簡易キャンプにて秋津大和のメンバー十二人と湊は全員でテーブルの上に置かれたフィフスウェルの地図を覗いていた。

「まず、ここから大空洞に向かう道だが、威力偵察を行ったこのルートから東の方向に……」

 イブキが地図に指を指しながら道順の説明を行っている。

 その時、金属が跳ねるような音が湊の耳に届いた。

「……我々第一小隊が先行し囮になる、そして第二小隊が後ろをついて来る形にする。八咫烏二機は第二小隊の指揮の下、第二小隊の前を走り、囮に誘われなかった無人機を速やかに無力化。道を開け」

 イブキがそう説明している間、同じ間隔でずっと金属が跳ねるような音が聞こえている。

 その音が気になった湊は、地図から目を逸らし周りを見た。

 秋津大和のメンバーは皆、地図に集中していた。

 一人を除いて。

「第一小隊は多くの敵を引きつけたら、そのまま一時的に大空洞へ向かうルートを離脱する」

「無人機に追い付かれたり、無人機が遠距離武装を保持していた場合は?」

 あるメンバーがイブキに疑問をぶつけた。

「その時は、俺が何とかしよう」

 そういって、イブキが地図から顔を上げた時、地図に集中していなかったメンバーとイブキの目が合った。

「ナミハナ、聞いていたか」

「聞いてました~。作戦説明なんて退屈でしかないけどね~」

 ナミハナは指で空薬莢を弾いては掴むを繰り返していた。

「じゃあ、俺がどうやって引きつけた無人機を何とかするかいってみろ」

「雑魚雑魚イブキはまだ説明してません」

「……正解。本当にちゃんと聞いてたようだな」

 イブキはため息をつくと、地図から離れて秋津大和のロゴが書かれた箱を開けた。

 そして、箱の中から見覚えのある大きな銃と弾薬箱を取り出した。

「具体的に俺がどうやって何とかするかというとこいつを使う。湊君は見覚えがあるだろう。お前らも何人かは記憶しているはずだ」

 イブキは大きな銃を担いできて、地図の上にそれを置いた。

 湊はよく見たその銃を見間違えることは無かった。

「KSV八十……」

 湊の呟きにイブキは頷く。

「ああ、そうだ。ノーヴィ製対物ライフル。牧場から逃げる際に回収させてもらった。コイツ用の弾も八の車内から拝借させてもらったよ。さほど多くはないがね」

 イブキは手に持った弾薬箱をKSV八十の横に並べた。

 赤いパッケージの、これまた見覚えがある弾薬箱だった。

「徹甲焼夷弾だ。十発ある。全弾ヒットを考えれば十機の無人機を無力化できる想定だ。だよな、ナミハナ」

 イブキが聞くとナミハナは頷いた。

 湊は思い出した。ピャートゥイはこの弾を使って第二小隊を助けていたのだ。

 だから、ナミハナはその威力を知っている。

 そして、イブキにそのことを共有していた。

 だからイブキはわざわざあの牧場で、ピャートゥイの落としたKSV八十と徹甲焼夷弾を拾ってきたのだろう。

「敵が少なくなった大空洞までのルートを進み、第二小隊と八咫烏二機で大空洞内に突入することになるが、ここからが問題だ」

「問題って?」

 咄嗟に湊はそういった。

 秋津大和のメンバー全員の視線が集まって恥ずかしくなり湊は頭を掻いた。

「まぁ、落ち着け。今から話す。我々には無人機を破壊できてもポビヂーチェリを破壊できる武装が無い。その上、現在のポビヂーチェリは万全な状態だ。どんなびっくり武装が出てくるか想定のしようがない。臨機応変にといっても限度ってものがある」

 秋津大和のメンバーは皆、唸っていた。

「防御については分からないけど、近づけさえすればポビヂーチェリを一時的に無力化できる」

 湊は、EMP弾が一発装填された、フレアガンのような形をしているプリミリーチェリをポケットから取り出して机の上に置いた。

 イブキは気を利かせて机の上のKSV八十と弾薬箱を片付けて周りのメンバーがプリミリーチェリを見やすくなるようにしてくれた。

「確かに、こいつをポビヂーチェリの胸部に撃ち込めばコックピットは開く。その時はきっとポビヂーチェリも動けなくなるだろう。それで、どうするつもりだ?」

 イブキは体の前で腕を組んで湊を見た。

「俺がコックピットに乗り込んで、ピャートゥイを説得してポビヂーチェリから引き剥がす」

 イブキは首を傾げた。

「立った状態のポビヂーチェリの胸部にプリミリーチェリを撃ち込むのだって難しいのにどうやってコックピットに乗り込むつもりだ?」

 湊はナミハナを見た。

 突然視線を向けられたナミハナは少し驚いていた。

「な、何。雑魚雑魚湊」

「俺を八咫烏に乗せてください」

 ナミハナは眉を顰めた。

「……どういうこと?」

「ある程度ポビヂーチェリに接近した八咫烏のコックピットからなら、ポビヂーチェリの胸部を狙える。ポビヂーチェリのコックピットが開いたら、俺は八咫烏のコックピットからポビヂーチェリのコックピットに八咫烏の手に乗って飛び移ればいい」

 ナミハナは少し考えて頷いた。

「へぇ、面白いね」

 ナミハナは楽しそうに笑った。

「その作戦でいくとすると、相手がどんな攻撃をしてくるか分からないのに接近戦をしろと命令しなければいけないのか……」

 イブキは深いため息をついた。

「あたしが一号機を操縦する。それに湊も乗ればいい。二号機はバックアップ。これでどう?」

 ナミハナの言葉にイブキは首を横に振る。

「自分の部下だから駄目だとか、第二小隊の隊長だからいいとかの話ではなくてだな……」

「あたしも雑魚雑魚湊も死なないようにする。二号機にもしっかり働いてもらう、これ以外に選択肢ある?」

 むむむ、とイブキは唸った。

「それに湊がピャートゥイを回収すれば勝ちの目が見えてくるじゃん」

 ナミハナは胸を張ってそういった。

 湊はその言葉の意味が分かった。

「ピャートゥイが居なければポビヂーチェリは最低限の武装しか使えなくなる。その上、ピャートゥイを引き剥がした直後は装甲の無いコックピット内が露出する……」

 ナミハナは頷いた。

「そう、いくらポビヂーチェリの装甲が厚かったってコックピット内まで厚いことはないでしょ。開いたコックピットにハンドカノンを突っ込んで撃ちまくれば、流石にポビヂーチェリを破壊できるでしょ」

 イブキは話を聞き、眉間に手を添えて考えた後にゆっくりと頷いた。

「……分かった。それでいこう。でも無理はするなよ」

「わかってるって、ねぇ雑魚雑魚湊~」

「はい」

 イブキは咳払いした。

「だが」

 とイブキは真剣な顔を湊に向けた。

「もしピャートゥイを引き離す前にポビヂーチェリが動き出そうとしたら、その時は湊君、お前とピャートゥイごとポビヂーチェリを破壊する命令を俺は下す。いいな」

「……分かりました」

 湊はイブキを見つめ返した。

 それから細かい作戦を詰めた後、作戦会議は終了となった。

「では、自分の順番が回ってくるまでしっかりと休息をとるように。明日は早いぞ。見張り番の奴はすぐに外にいって様子を見てきてくれ」

 イブキの言葉で、無人機が近づいていないか外の見張りをする秋津大和の隊員は、走って簡易キャンプを後にしていた。

「はぁ、疲れた」

 湊の近くでナミハナは地面に座り込んでいた。

「えっと、お疲れ」

「うん、雑魚雑魚湊も……。あんた、見張りの順番来ないからさっさと眠った方がいいよ~」

 ナミハナはそういって座ったまま目をつぶった。

 湊が周りを見渡すといつの間にかイブキはいなくなっており、秋津大和の第二小隊のメンバーと一部の第一小隊のメンバーが休息をとっていた。

「ねぇ、ナミハナ」

「んぇ、何……」

 声を掛けてからナミハナが船を漕いでいたことに気がついた湊は、少し申し訳なく思った。

「ごめん、疲れてたところに話しかけちゃって」

「雑魚雑魚湊は、気にしすぎ……」

 ナミハナは座ったまま背伸びをして湊を見た。

「で、何が聞きたかったのか話してみなよ」

「うん、俺が腹を撃たれて気絶した後のことなんだけど」

 ナミハナは首を傾げた。

「なんで自分を助けたかって?」

「そう、それとあの場所から離脱する時の事も聞きたい。迷惑かけただろうからせめて知っておきたいと思って」

 ナミハナは頷いた。

「いいよ、仮眠の前に教えてあげる」


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