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湊は、ピャートゥイに最初に会った時のことを思い出していた。
ピャートゥイを写真に収め、カメラをピャートゥイに奪われた時の事だ。
湊は、記憶に動かされるように無意識のうちに一眼レフカメラを触ろうとして、自分が一眼レフカメラを首に下げていないことに気づき、リュックに手を伸ばした。
リュックの中でカメラの形をしたものに手が触れた。
それを持ち上げると、一眼レフカメラだった。
特に傷がついたりはしていないようだった。
湊は安心してリュックの中に一眼レフカメラを戻した。
湊は目をつむり思考を戻す。
最初にピャートゥイに会ってカメラを奪われた時、長い間ピャートゥイはカメラを見ていた。
それより前、ピャートゥイと顔を合わせた際にピャートゥイはこちらを見て固まっていた。
それは湊が、自分が世話をした赤ん坊が成長した姿だと気づいたからだろうか。
カメラに入っていた、湊が赤ん坊だった頃の写真を見て、それを確信した。
だから、固まっていた。
無人機に襲われて助けられた後に、なぜ助けたのかを聞いたことを湊は思い出す。
あの時、ピャートゥイはなぜ助けたか自分でも分からない的なことをいっていた。
助けたのは湊に特別な思い入れがあったからではないだろうか。
そういえば、と湊はその話の前のことを思い出す。湊が無人機に襲われて意識を取り戻してから少しして、コンビニの中に見覚えが無いかピャートゥイに聞かれた。
コンビニの中には赤ん坊用の粉ミルクや子供向けのおもちゃ、人形などがあった。
もしかすると、あの廃駅のコンビニは湊がピャートゥイに育てられた場所だったのではないだろうか。
もし、あの時覚えているといったらピャートゥイはどんな反応をしただろうか。
考えても仕方のないことだった。
誰もいない、何の音もしない静かな空間で湊は次に何を考えようか悩んだ。
湊は瞼の上に腕を重ねた。
そして、電撃の音が脳裏をよぎった時、ピャートゥイが無人機を無力化する力を持っていたことを思い出した。
湊はそれを、ピャートゥイがフラッシュグレネードのような何かを持っているのだとばかり思っていたが、今考えるとそれはポビヂーチェリの機能を一部ピャートゥイも使えたと考えるのが自然だろう。
ピャートゥイが無人機を止める時、毎回湊の目に入らないようにしていた。
目をつぶらせたり、背後でそれをやったり。
それはピャートゥイが、自分が人間じゃないことを気づかせないように意図的にしていたことなのだろうか。
恐らくそうだろう。
今こうして考えていると普通の人間の少女じゃ考えられないようなことを平気でやってのけるシーンは多々あったような気がするが、無人機を止めるという決定的に人間じゃない動きだけはしっかりと隠していたと湊は思った。
では、ピャートゥイが人間じゃないことを隠す理由はなんだろうか。
普通に考えれば理由は、AIがシンギュラリティを迎えた際に世界的に制作が禁止されたアンドロイドであるということを一般人にバレないようにしていたということ。
しかし、湊はそれだけではないような気がしていた。
一般人にではなく、湊にこそ知られたくない理由があった。
そんな気がしていたのだ。湊がそう思いたかっただけかもしれないが。
湊は唸りながら頭を悩ませて、仮定を作る。
もし、湊がいない所で八とピャートゥイが湊に関する会話をしていたら。
その時、湊が八に話していたAI嫌いのことをピャートゥイが聞いていたとしたら。
ピャートゥイは嫌われたくないから隠していたのだろうか。
だが、嫌われたくないと思うということは、相手に少なくない好意を抱いていなければ変だと思った。
しかしピャートゥイは湊を撃った後に、嫌いだといっていた。
何を信じればいいのだろうか。
アンドロイドもAIも感情によって嘘をつくのだろうか。
湊はため息をつく。
今までのことを思考することで意識を逸らしていたことが脳裏に蘇ってきた湊は、腕を広げて床に大の字になった。
このことだけは考えようと思わずとも勝手に考えてしまう。
投げやりな思考。
この今の状況について。
誰が、間違っているのか。
何を、間違ったのか。
どちらも分かる。
結局、何をしていようとも何を考えていようとも間違っていたのは自分自身だ。
最初に好奇心を持ち、その心に従ったことが間違いだった。ピャートゥイに、アンドロイドに好意を抱いたのが間違いだった。あんなにAIは偽物だと思っていたのに偽物に恋をしたことが間違いだったのだ。ピャートゥイがアンドロイドだったことを知らなかったとしても。
好奇心なんて捨てて、帰るべきだった。
そうすれば殺す殺されるなんてやり取りに自分が参加することは無かったのだから。
湊は一気にそう考えてから、やはり現状について考えるのをやめようと努力した。
しかし、後悔や無力感ばかりが脳内を巡っていた。




