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 湊は、総合スーパーの駐車場に止まる八に寄りかかって秋津大和を待っていた。

 湊が無線機で座標を指定すると秋津大和は、その場所に集まることに承諾した。

 そして、秋津大和はさほど遠くにはいなかったようですぐに合流できるといっていた。

 今更戦闘するつもりもないが、湊は一応Sエミールをポケットに入れていた。

 ポケットに入ったSエミールを触っていると、色々な記憶が溢れてきた。

 ピャートゥイに銃についての基本を叩きこまれたことや、射撃姿勢などを教わったこと。射撃訓練で見せてくれた満足げなピャートゥイの表情など。

 そんなことを考えていると車両が走る音と大きな足音が聞こえてきた。

 音の方向を見ていると瓦礫の影から秋津大和の装甲車が二台、大型トラックが一台、そして、恐らく秋津大和の試験機であるBGが二機現れた。

 一台の装甲車と二機のBGは、致命的なものはないものの傷だらけで、それに乗る人間がいかに修羅場をくぐってきたかを物語っていた。

 秋津大和の装甲車たちは八の横に一列に並ぶように停車した。

 そしてすぐに装甲車から、二人の人間が降りてきた。

 一人はナミハナだった。

 薄着で女性なのですぐにわかる。

 もう一人はゴーグルやヘルメットで顔が隠れている男性だった。

 二人は湊の前に並んだ。

「湊君だね。俺は秋津大和特殊試験隊第一小隊隊長、興津一颯。まぁ君は小隊員ではないからイブキとでも呼んでくれ」

 男、イブキはゴーグルを外して顔を見せながらそういった。

 左の目元に痛々しい傷痕があった。

「この傷痕は気にしないでくれ。昔、色々あったんだ」

 湊の視線に気づいたイブキは目元を隠すようにゴーグルを装着しなおした。

「雑魚雑魚イブキは傷跡が見られるのが恥ずかしいんだって」

 ナミハナが笑いながらそういった。

「はぁ。ま、そういうことにしおいてくれ」

 イブキはナミハナの態度に呆れてため息をついていた。

「湊君はナミハナとは知り合いなんだよな。世話になったと思う、色々と。あと、こちらの指示を無視してナミハナが何度も君たちに射撃を繰り返したことを謝罪しよう」

 イブキは湊に頭を下げた。

「いえ…別に大丈夫でしたから」

「そりゃ大丈夫でしょうよ、保田達は人に当てないようにしてくれていたらしいからね」

 ナミハナが軽くそういった時、イブキはげんこつをナミハナの頭に落とした。

 ナミハナは頭を押さえてその場に蹲った。

「調子に乗るな。お前も謝れ」

「ごめんなしゃい……」

 ナミハナは涙声だった。

「もういいですから……」

 湊は、どうすればいいか分からずに頭を掻いた。

「それで、本題に……」

 イブキがそう話始めたのを遮るかのようにナミハナは手を上げた。

「はいはい、雑魚雑魚湊君、あのピャートゥイって子はどこ?」

 周囲を見渡しながらナミハナはそういっていた。顔には多少の警戒の色が見えた。

 どう答えるべきか困って湊が俯くと、またげんこつが落ちる音がした。

「湊君。本題に入ろうか」

 顔を上げるとイブキは笑顔でこぶしを握っており、ナミハナは蹲っていた。

「まず確認させて欲しい。湊君、君はどこでどうやって不定の場所を特定したんだ」

 イブキは当然の疑問を投げかけてきた。

「説明します。装甲車のAI、俺やピャートゥイは八と呼んでいるんですけど、この装甲車のAIが場所を特定しました」

 そういって湊は八に指を指した。

「なるほどAIか……」

 そういってイブキは八を見つめた。

「俺はあまりこういうのに詳しいタイプじゃないが、こいつは戦時中に使われていた装甲車だな。本社の資料で見た記憶がある……」

 湊は驚いた。八が戦時中に使われていた装甲車だというのは初めて知る情報であったからだ。

「こいつ、話すのか?」

「はい。八」

 湊が八に話しかけると八はすぐに返事をした。

「秋津大和のお二方、よろしくお願いします。私のことは八とお呼びください」

 スピーカーから聞こえてきた八の言葉にイブキは顎に手を当てて何か考えていた。

 その横でいつの間に復活していたナミハナが飛び跳ねて喜んだ。

「ダンディな声でかっこいい。うちの喋らない雑魚雑魚AIよりよっぽどいい!」

「はぁ、こいつのことは置いといて。八とやら、不定の場所の特定はどうやって行った?」

「はい。まず私には高性能な集音センサーがついております。私を中心にしたおよそ三十キロメートルほどの範囲内で発生した音ならどんな微小なものでも拾えるほどのものです。あなた達のいう不定の駆動音を特定し拾い上げ、音の発生源を私にインプットされた地図に照らし合わせて特定しました」

「なるほど、その必要以上の高性能さ。やはり、八は戦時中の装甲車で間違いなさそうだ。そしてだからこそ、その情報は信頼できる」

 湊は疑問を抱いた。

「なんでだからこそ信頼できる、なんですか?」

「簡単な話さ。戦時中に使われていたAIは今作られているAIよりよっぽど頭がいい。嘘をつくタイミングを自分で判断できるほどだ。そして、少なくとも今俺達は敵同士じゃないから嘘をつく必要が無い。なら信頼できるって訳だ」

「分かったかなぁ、雑魚雑魚湊君」

 何故か自分が得意げにそう煽ってきたナミハナは、イブキの三発目のげんこつを華麗に回避していた。

「では湊君、確認するがこれからは俺達と共に不定を追いかけるということでいいんだな」

「……はい」

 湊が頷くのを見届けるとイブキは小型タブレット端末を秋津大和の装甲車から持ってきた。

「八、不定の場所を座標で共有してくれ。それと、そこまでの道順や大量にいると予想される無人機との会敵予想ポイントも」

「承知しました」

 八とイブキが情報の共有作業を始めたのを見計らってナミハナは湊に話しかけてきた。

「それでピャートゥイはどうしたの?」

「いや……別に」

 湊が顔を背けると、ナミハナはにやにやしながら湊の顔の正面に回り込んできた。

「もしかして、逃げられちゃったの?」

「……」

 湊は俯いて頭を掻いた。

「ああ、図星だ。ガールフレンドに逃げられちゃうなんて雑魚雑魚湊だねぇ。可哀そー」

 流石に少しムカついてきた湊は言い返そうと思った。

「逃げられたんじゃないよ」

 湊が顔を上げるとナミハナのにやにやした顔が視界に入ってきて、若干不快感があった。

「そうなの、じゃあどうしていないの?」

「先に行ったんだよ」

「死ぬかもしれない危険な場所に女の子一人で行かせたわけ。雑魚通り越して引くわ……」

 湊はナミハナを睨んだ。

「しょうがないだろう。ピャートゥイは俺より強いし、一人で何とかできるっていわれて俺は止められなかった……彼女より弱いから。ただそれだけ」

 いい返したつもりだったが、これじゃあただの自分を納得させるための言葉にしかなっていないと、湊はいってから気づいた。

「ふうん、弱いからねぇ。じゃあさ、雑魚雑魚湊さん?」

「何」

「これからあたしと……」

 そうナミハナが何かをいいかけた時、ナミハナはイブキに小型タブレット端末で頭を叩かれた。

「痛―い。これ以上頭叩かれたら頭雑魚雑魚になっちゃう……」

「そうか。湊君、ナミハナ。情報の共有は終わった。これからは共に行動する仲間としてよろしく頼む」

 イブキは手を差し出してきた。

 湊はその手を握って握手をした。

 イブキは満足そうに頷いて手を引っ込めた。

「湊君、俺はこれから指揮官として八に同乗させてもらうがいいかな?」

「あ、はい……」

 八の車内に一人でいるのはなんだか寂しかったので湊は頷いた。

 イブキは無線機を取り出して送信ボタンを押し込んだ。

「秋津大和の第一、第二小隊各員に告ぐ、これから我々は不定の元に向かう。道中、無人機や四足歩行のロボットなどとの激しい戦闘が予想される。特に八咫烏に乗る者は気を引き締めるように」

 どうやら秋津大和のBGは八咫烏という名前らしかった。

 その後、イブキはフォーメーションの説明をした。

 具体的には八咫烏の一機を先頭に、八、第一小隊装甲車、八咫烏、大型トラック、第二小隊装甲車の順番に並んで突入するとのことだ。

 大型トラックには、八咫烏の装備や緊急用の修理パーツが積載されているらしい。

「では、出発するぞ。皆、急げ!」

 イブキの掛け声で秋津大和の休憩していた隊員たちは急ぎ足で、自らの担当する車両に乗り込んだ。

 湊も八の後部ドアを開けて、八に乗り込んだ。

 そして、すぐにイブキも弾薬箱などの装備品を持って八に乗り込んできた。

「短い間だろうがよろしく頼む」

 イブキはそういって、よくピャートゥイが座っていた座席に座った。


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