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ある日、アズリオは部下からの報告で、領内に新しく、他国から仕入れた珍しい蜂蜜を使った甘味の店ができたことを知る。

(甘いものが好きなミハイルなら、きっと喜ぶはずだ)

すぐにミハイルを連れて街へ赴き、一緒に出来立てを食べるという魅力的な光景がアズリオの脳裏をよぎった。しかし、首を横に振る。

(いや、ダメだ。俺のような男と四六時中、馬車や店内で顔を突き合わせて過ごすなど、ミハイルにとっては苦痛以外の何物でもない。それに、もし社交界の連中に見つかりでもしたら、ミハイルが婿入りしたことがバレてしまう……)

せっかくの息抜きのはずが、自分と一緒のせいでミハイルを緊張させ、ストレスを与えてしまうかもしれない。そう考えたアズリオは、胸を締め付けられるような思いで、お忍びのデート計画を即座に白紙に戻した。

「……すまないが、例の新しい店へ行って、一番人気の甘味を買ってきてくれ」

アズリオは、信頼できる直属の部下にそう命じた。

数時間後。

ミハイルの部屋に芳醇な蜂蜜の香りが漂うケーキが届けられた。

「頂き物ですが、旦那様は甘いものは好まないのでミハイル様に、とのことです」

給仕の言葉に、ミハイルはパチパチと瞬きをする。

(甘いものが好きではない旦那様に甘いものを差し入れ……?しかも長時間の持ち運びや保存に適さないケーキを?この間のお菓子も僕が好きって言ってから頻繁に出されるし、もしかしてこれも旦那様がわざわざ気を遣って用意してくれたんじゃないかな……)

ミハイルがケーキを一口食べると、すぐにそんな考えは吹き飛び、ただ目を輝かせてその美味しさに夢中になった。

アズリオは後から給仕にそのときの様子を聞き、満足げに目元を緩めた。

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