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翌日から、ミハイルはアズリオの邪魔にならないよう、気を使って屋敷の隅で静かに過ごした。アズリオが通る時間は廊下を避け、食事の席でも、アズリオが気まずくならないよう、早々に自分の部屋へと引き上げた。

それを見たアズリオは、確信する。

(やはり、俺の顔を見るのも嫌なのだな。辛い思いをさせてすまない、ミハイル……)

アズリオの罪悪感はさらに深まり、彼もまた、ミハイルにストレスを与えないよう、執務室に籠るなど、自ら進んで避けるようになっていった。

そんなある日の午後。

ミハイルは日当たりの良い図書室のソファで、本を読んでいるうちに、いつの間にかうたた寝をしてしまった。実家での気苦労から解放され、この屋敷の静けさに、思っていた以上に心身がリラックスしていたらしい。

そこへ、たまたま資料を探しにアズリオが通りかかった。

眠っているミハイルの姿を見たアズリオは、反射的に足を止める。

整った顔立ちのミハイルは、無防備な寝顔でさえまるで一枚の絵画のように美しかった。ミハイルに惚れ込んでいるアズリオは、ミハイルが自分の屋敷の中で無防備に眠っている光景に胸が締め付けられるほどの愛しさを感じた。しかし、アズリオの脳内はすぐに罪悪感で満たされる。

(ストレスで疲れやすくなっているのだろうか。原因はきっと俺なのだろう。せめて夢の中では快適に過ごしてほしい)

アズリオは足音を極限まで殺し、自分の部屋からブランケットを持ってきた。

そして、触れるか触れないかの繊細さで、そっとミハイルの体に掛ける。

「ん……?」

アズリオはミハイルが眉を寄せるのを見て慌てて手を引いて、逃げるようにその場を去っていった。

少しして目を覚ましたミハイルは、自分の上に掛けられたブランケットを見つめ、首を傾げた。

(使用人の誰かがかけてくれたのかな?でも、使用人の私物にしては上等だし、僕に与えられた部屋にこんな備品はなかった。それに……)

ミハイルはすん、とブランケットの匂いを嗅いだ。微かに残る爽やかで落ち着いた香りは、婚礼の儀のときにアズリオがつけていた香水と同じ匂いだった。

(わざわざ旦那様が掛けてくださったんだろうか。……嫌っている僕にもこんな気遣いをしてくれるなんて、本当に真面目で優しい人だな)

ミハイルはもう眠気はないものの、しばらくの間ブランケットを抱きしめたまま目を閉じていた。

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