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婚礼の夜、アズリオの執務室。

アズリオは頭を抱え、深い深い溜息をついていた。

今日、豪奢な白いタキシードを着たミハイルは、息を呑むほど綺麗だった。それこそ、緊張して直視できないほどに。

色素の薄い金髪に緑色の瞳の柔らかな目元、まっすぐ通った鼻筋に控えめな口元。決して身長が低い訳ではなく、筋肉も適度についていながら、どこか儚げな雰囲気。昔、一目惚れしたあの清廉な面影のまま、いや、それ以上に美しく成長した想い人が、今、自分の邸にいる。

だが、アズリオの胸を満たしているのは、歓喜ではなく、どす黒い罪悪感だった。

(あんな寂しい式にしてしまって、本当に申し訳ない……)

社交界のハイエナどもにミハイルの存在を知られれば、実家の弱みを握られて嫁いだ「身売りの妻」として、格好の玩具にされるだろう。ミハイルの実家が安定し、いつかミハイルを自由の身にするときのためにも、彼の経歴に「男の妻」という消えない傷をこれ以上深く残すわけにはいかなかった。

だからこそ、式は極秘にし、今後社交界にミハイルを連れ出すつもりもない。すべてはミハイルの未来を守るため。

そうとは決めていても、アズリオはため息をつかないわけにはいかなかった。

(ミハイルは、式の途中から一度も俺と目を合わせようとしなかった。怒るでもなく、泣くでもなく、あんなに冷めた目で……。当然だな。実家のために、望まぬ男の元へ無理やり嫁がされたんだ。俺を憎んでいて当たり前だ)

アズリオは、ミハイルに嫌悪されているのだと思い込み、胸を締め付けられるような痛みを覚えていた。

(こっちには彼の親しい知り合いもいない。これ以上、彼を追い詰めるような真似はできないな……)

アズリオは改めて決意した。

ミハイルの実家が完全に自立するその日まで、決して彼に無理強いはしない。夜の営みなどもってのほかだ。彼がこの屋敷で、少しでも苦痛を感じずに過ごせるよう、自分はなるべく距離を置き、影から支えよう、と。

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