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「……ミハイル、少し真面目な話をしてもいいだろうか」

ある日の夜、同じベッドの中でアズリオがぽつりと言い出した。

その声は、かつてないほど真剣で、どこか緊張に震えている。ミハイルは「はい、何ですか?」と、アズリオの瞳を見つめた。

「俺たちの結婚式を……もう一度、挙げ直させてほしいんだ」

「え……?」

思わぬ提案に、ミハイルはパチパチと瞬きをした。

アズリオは布団の中で手をぎゅっと握りしめ、胸の内を語り始める。

「あの時の式は、貴殿を社交界のハイエナどもから隠すため、そしていつでも実家へ返して自由の身にできるようにと、俺の勝手な都合で身内だけの寂しいものにしてしまった。だが、もう貴殿を離すつもりはないし、貴殿もここにいてくれると言ってくれた。だから……」

アズリオはミハイルの目をまっすぐに見つめた。

「貴殿がこの領地の、そして俺の、正式で唯一無二の伴侶であることを、皆に誇示したいんだ。スレインのような不届き者に、二度と手出しをさせないためにも、盛大な式を挙げて貴殿を俺の妻として社交界に周知させたい」

「アズリオ様……」

どこまでも自分を守るため、そしてこれからの未来を共に歩むための提案。ミハイルの胸に、じわりと熱いものが広がる。

しかし、アズリオが結婚式を挙げ直したい理由は、それだけではなかった。

アズリオは急に耳まで真っ赤に染めると、視線を泳がせながら、蚊の鳴くような声で本音を漏らした。

「それに……その、前の式の時、白いタキシードを着た君が、あまりにも、その、息を呑むほど綺麗で……。罪悪感も相まって、実に惜しいことに、まともに直視できなかったんだ」

アズリオは頭を抱え、もだもだとのたうち回るように続けた。

「神官の前で誓いを立てる君を、もっとちゃんと目に焼き付けたかった……! 恥ずかしながら、もう一度、今度は堂々と、世界で一番美しい君の花嫁姿を特等席で見たいという……俺の強欲な願いでもあるんだ……!」

必死に顔を真っ赤にして告白する大男を見て、ミハイルは思わずクスッと吹き出してしまった。

(直視できなかったなんて。あの時、あんなに怖い顔をして全然こっちを見なかったのは、そんな理由だったんだ。本当に、この旦那様はどこまで愛おしいのだろう)

あの寂しい式を、自分を嫌っている証拠だと誤解していたミハイルにとって、アズリオが「もう一度、今度はみんなに紹介したい」と言ってくれることは、言葉にできないほど幸せなことだった。

ミハイルは、アズリオの頬にそっと自分の手を添えて、優しく微笑んだ。

「嬉しいです、アズリオ様。ぜひ、もう一度挙げさせてください。今度は……ちゃんと、僕の目を見て、誓いのキスをしてくださいね?」

「ミ、ミハイル……ッ!!」

最高のご褒美を提示されたアズリオは、嬉しさと興奮のあまり、その夜とうとう一睡もできなくなるのだった。

こうして、領地始まって以来の大々的な「婚礼の挙げ直し」が決定した。

今度は隠れる必要などどこにもない。ミハイルのために、仕立て屋が最高級の白いタキシードを新調し、アズリオは柔らかな笑みを浮かべながら、式の準備に奔走するのだった。


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