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雑草と呼ばれた令嬢は、氷の公爵の庭を咲かせる  作者: もちもちほっぺ


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20/20

エピローグ

スノードロップが咲いたのは、二月の終わりだった。

夜明け前に、ギルバートに揺り起こされた。


「……フェリシア」


「……んっ」


「……咲いた」


フェリシアは目を開けた。

隣で一緒に寝ていたはずのギルバートが、寝台の傍に立っていた。外套を羽織って、すでに起きている。


「スノードロップが」


フェリシアは跳ね起きた。

急いで外套を羽織り、二人で庭に出た。夜明け前の空気が冷たかった。息が白くなった。


庭の北側、日当たりの悪い一角に、白い花が咲いていた。

小さかった。うつむいて、ひっそりと、群れて咲いていた。


ギルバートが立ち止まった。

フェリシアも立ち止まった。


二人で、しばらく、白い花を見ていた。


「……子供の頃と、同じだ」


ギルバートが、低い声で言った。


「覚えていたんですね、ちゃんと」


「……忘れたことはなかった」


フェリシアはスノードロップの前にしゃがんだ。

うつむいた花に、そっと触れた。


「よく咲いてくれたね」


花が、風もないのに、少し揺れた。

後ろで、ギルバートがしゃがんだ。隣に、並んだ。


「……ありがとう」


フェリシアは首を傾げた。


「花に、ですか」


「……お前に」


フェリシアはギルバートを見た。


ギルバートは花を見ていた。その横顔が、朝の薄い光の中で、穏やかだった。


「庭を、直してくれて」


「公爵様が土を守っていてくださったから、咲いたんです」


「……それでも」


ギルバートはフェリシアを見た。


「……土だけでは、咲けなかった」


フェリシアは少しの間、ギルバートを見ていた。

それから、微笑んだ。


「私も、です」


ギルバートは何も言わなかった。

ただ、フェリシアの手を取った。

冬の終わりの、冷たい朝の中で、二人は並んでスノードロップを見ていた。


白い花が、うつむいたまま、静かに咲いていた。





春の夜会は、公爵邸で執り行われた。

花の咲き誇る庭に、白いアーチが立てられた。スノードロップは盛りを過ぎていたが、代わりにリンドウの芽が伸び、カモミールが白い花を開き、古い木の枝に新しい葉が茂っていた。


母との思い出のスズランも、ひっそりと咲いている。


アルヴィンが、式の間ずっと満足そうな顔をしていた。

ギルバートは終始、耳を赤くしていた。

フェリシアは、胸元にパールのブローチをつけた。カモミールに似た、小さな白い花の形のブローチを。


誓いの言葉を交わすとき、ギルバートはいつものように、言葉に詰まった。


アルヴィンが隣で小さく吹き出した。


「……っ」


ギルバートがアルヴィンを一瞥した。

フェリシアは、ギルバートの手を握った。

ギルバートはフェリシアを見た。


「……フェリシア」


「はい」


「……ずっと、ここにいろ」


フェリシアは微笑んだ。


「はい」


庭に、風が吹いた。

白い花びらが、宙に舞った。


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