157話 アストラドライブ
時は少し逆戻る。
クラリッサと、マリアはアルヴェインの結界を抜けて空中庭園に降りた。
「どうするんですか?
お嬢様。」
「中枢へ急ぎましょう。
私達がアルヴェインへ突入した事で、さらに外の戦力が削られた。
とはいえ事前に内部の設計図を見てきてある。
構造はすでに丸裸っていうね。」
「でもいくら構造がわかっても、40㎞の中から風精霊さんを見つけ出すとか、ちょっと無理かなーって……」
「まあ、ちょっと大きいわよね。
こういう時は、筋肉の導きに従うに限る。」
「えーと、つまり……」
「投げる。」
「え。」
ドゴオォォォッ!!!!
上空から叩きつけられた柱が、隔壁に直撃する。
ただの破壊ではなく。支柱と荷重ラインを狙った一点破壊。
「おおおお、お嬢様!!!
こんな事したら速攻で見つかりませんか!?!?」
「大丈夫だと思う!!
バレてたらセキュリティマシンとかすぐに飛んでくるから!!
でも来てない!
ラティアが風精霊の気を引いてるんだと思う!!
なんかそんな感じだと思う。」
「思うがやけに多くないですか!?」
「さあシトリー!
ガシガシ柱をこちらに送ってしまいなさい!!!
こういう時のための柱だから!!」
『お前そんなことしたら見つかるだろ!!
そしてそれは柱の役目じゃないからな!
どうなっても知らんぞ!!』
シトリーからの通信。
シトリーが転移魔術で、柱を転送する。
転移の為のマーカーはクラリッサにしこんである。
もう一撃。
構造が悲鳴を上げ、強制的に開いた歪みが“通路”になる。
そして瓦礫の向こう。
異様な光を放つ中枢区画が露出する。
そして中枢への道が開けた
やがて。
中枢の中枢。アルヴェインブリッジ。
「やはりね。
筋力の前には全ての構造物は沈黙する。
そしてこれを設置してと。」
「それなんですか?」
「プロメテウスブレイクの外部端末。」
その瞬間、警告音が一斉に鳴り響いた。
「お嬢様!!
気づかれました!!
そりゃそうですよ!!派手にやりすぎです!!
「時間がないのよ!!
なら直線に限る!!
隔壁はぶち抜く。回り道なんて論外!!
筋肉がそう言ってる!!」
「でも見つかっちゃってます!!」
『クラリッサ!!!
さすがにもう無理だ!!
離脱しろ!!』
「いいから柱を転送して!!!」
『どうなっても知らんぞ!!!』
転移光。
次の瞬間、質量の塊が空間に出現する。
ドゴンッ!!!!
ブリッジの入り口から侵入してきたドローンが一機、原型ごと消し飛ぶ。
破片が散り、さらに視界を遮る。
ドローン群、展開。
空間に浮かぶ砲門。
一斉ロック。
「お嬢様!!!」
「駄目よ!!!
ラティアが残ってる!!
ここは踏ん張るしかない。」
「囲まれます!!さすがにどうにもなりません!!!!」
「アルヴェインの航空システムの制御を暴走させて、操作をロックする!!
そうすれば時間を稼げる!!
操作へのアクセス自体は水精霊の魔力を扱っている!!
彼女達の格が同格なら、同じ精霊へのハッキングは、いくら風精霊といえど簡単ではない!!!
ここで決めるしかないんだ!!
それにもう囲まれてる!!!
筋肉の導きに従うしかない!!」
「なんか言葉が増えただけで、いつもと変わらないかもです!!!」
確かに!
──プロメテウスブレイクの外部端末を利用したハッキングだ。
(風精霊がラティアに集中すれば、絶対制御が疎かになると思ってた!!!
アルヴェインの航行システムを掌握後。メインエンジンを稼働して、さらに上空までアルヴェインを運ぶ!!
3万6000キロ!!!
このまま安定点まで、押し上げてやる!!!
重力制御装置もあるらしいから、多分いける!!
知らんけど!!)
ハッキングは通ってる!!多分!!
ブリッジの天蓋が――歪む。
天蓋を支えるフレームが悲鳴を上げ、そして突き破り巨大な機体が落ちてくると床が耐えきれず沈み、鈍い音と共に、装甲の隙間から蒸気が噴き出した。
IBISシリーズ。それもアーマータイプ。
巨大生物に接触しても生き残り、内部から破壊するための機体
──接近に気づくのが遅れた!
(まずい!刃が振り下ろされる!!)
がきぃぃ!!!
「え?」
「むうん!!!」
振り下ろされた巨大な刃を受け止め、そのまま引っ張るように腕を捩じ切った。
その現象に、機械すら空気が停止したようだった。
『大丈夫かクラリッサ!!』
「お嬢様が……IBISシリーズに……」
『どうした!?クラリッサが潰されたのか!?』
「いえ、逆にIBISシリーズの腕をねじ切りました!」
『は……?』
「く……
≪巨神護手≫と、左肩がイカれた。
でもまだ右肩あるから。」
『そ,そうか。』
通信先でシトリーは思う。
──私は、こいつと接近戦をやろうとしたのか。
よく生きてたな。
残った右肩で、捩じ切った腕を投げつけて串刺しにする。
やがてアルヴェインのシステムが掌握される。
画面に映し出される《PRIMARY USER:CLARISSA》。
航行システムが流し込まれたプログラムに従い応答開始。
そしてガッツポーズ。
「通った!!
このチャンスを待ってたのよ!!!
マリア!!やったわね!!
……あれ?いない」
「おじょ――――さまぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
慣性制御の再同期。
その一瞬の“空白”で、足元の感触が消え、風が吹き荒れ、軽いものから順に外へ。
マリアは外壁の外に放り出されていた。
──あ……IBISシリーズが入ってきた穴が外壁の破断面になってる……
なんてことかしら!
ピーピーピー
倒したはずのIBISシリーズが音を出す。
その装甲の隙間から、赤い光が明滅とともの規則的な警告音。
──あ、まずい。自爆──
光がクラリッサを襲う。
アストラドライブが稼働した。
アルヴェインが対流圏を抜け、さらに浮上を開始する。




