150話 誤算
世界論文大会会場。
生き残った各種族の代表が集まっている。
戦は一区切りがついたと言ってもよかった。
何も終わってはいないが。
空域全体を超嵐核が蹂躙。
一気に魔物の空戦部隊を削り取る。
エルフの森も同様の結末を辿る運命だったが、リーシャが超嵐核そのものを大結界で多い、被害をとどめる。
結果、空には風精霊の力によって浮遊を続ける空中大陸アルヴェインだけが残された。
生き延びた彼らはそれを見上げる。
誰もが、空を見上げていた。
いずれ落ちてくる“終わり”を。
言葉はない。
だが場違いな声が、会場に響いた。
「さあ
シトリー。
出しなさい。
凹んでる場合じゃないから。」
「なんだクラリッサか……」
シトリーが体育座りでうずくまっていた。
「早く出す!!
シトリー。早く出しなさい!!」
「何を出せばいいのかいえ。」
「だから全部よ!!
使い魔!補助演算体!ログ!
あと今使ってる回路そのまま持ってきなさい!!!
今すぐ!!!」
シトリーを,連れて魔術演習場へ。
腕をひくように。
その道中。
「悪かったなクラリッサ。」
「何が。」
「仕事を果たせなくて。」
「竜王の足止めのこと?
何よ。別にいいわよ。
何しんみりしてるのよ。
似合わないから。」
「……」
まるで最初から、次にやることしか見えていないみたいに、クラリッサの足は止まらない。
そこにはセドリックが待っていた。
キャラと口調が一気に幼児化するシトリーは放置プレイしつつ、エルダーオーブを借り受け、制御ノードを展開する。
セドリックが魔術回路を展開している。
クラリッサの指示の通りに回路を書き換えていく。
空間に、魔術回路が多層展開。
シトリーは、しゅんとしながら話す。
「エルフの追跡をふりきり、竜王との説得に臨んだが、一蹴された。
ブレスを浴びせれられた。
あとは知っての通りだ。
私は我を忘れ、嵐核暴走の制御をミスり、戦場を、無茶苦茶にしてしまった。
私は──」
「いや,あのねえシトリー。
勘違いしてるようだからいっておくけど、あなたに求めるのは戦闘力じゃないから。
来るべきセレスティアとの対決に備えての、魔術研究の手駒だから。
それだけだから。
あんな魔術でミスったくらいで凹まないでよ。」
「あんな魔術だと?」
「何よ。
これだけの演算機能を持ってして、あの程度の魔術で満足してんの!?
そんなわけないでしょ。
もっと上にいけるじゃない!!」
「……嵐核暴走の単独行使。
あれはあれで偉業に等しいのだがな。」
「言い訳はいらない。
できるから。
できないなら、できるまでやればできるから。
クソみたいな魔術なんてすぐにこなして、さっさと私のために働きなさい!!」
「誰が貴様のためだクラリッサ。
私はセドリック様のために……」
「あ、兄上。
そこはこんな感じで。
何これエルダーオーブだっけ。
この演算速度最高じゃない!!
なにこれもらって帰りたい!!」
「聞け。」
まじで聞いてねーし。
改良に集中している。
──魔族秘奥の嵐核暴走が、こんな魔術扱いか……。
確かに、クラリッサはこれだけの発想を持つ者だ。
その程度の認識なのかもしれない。
塞ぎこんでいる暇などないのだろう。
──でもエルダーオーブはやらねえ。
ビボルダーから進化させるのに、すげえ時間かかるんだよ。
──あとは、これをなんとかして出発かな。
プロメテウスブレイク。
その精霊炉内のエネルギーは枯渇した。
再起動には、精霊炉を満たすだけのエネルギーが必要になる。
(まあこれは心配していない。
リーシャが頑張れば、いい話だからだ。
リーシャはいい子だ。
おだてて、役割の重要性をとけば、すぐに働く。)
そして。
リーシャは寝込んでいた。
魔力欠乏だ。
ガッデム!!!!!!




