133話 合コンにて
そこには着飾ったラティアがいた。
身に纏うのは、深い翠を基調としたドレス。
完全にどっかの女王だ。
「ラティア。そういうわけだから。」
「お主。頭おかしい……
イカれてるって絶対言われてるじゃろ。
絶対なこんな事をやっている場合ではない。
さっきまでブリーフィングしてたではないか……」
世界魔術論文大会における、夜の懇親会。
元々予定されていたものだ。
天井には、精霊光を封じた無数の結晶灯が浮かび、柔らかな光を降らせ、各国の礼装がきらめいた。
クラリッサは料理を見ていた。
──植物性タンパク質。
──ヴィーガンって感じ。
(前菜サラダ
メインサラダ
デザートサラダって感じ。
ロケーションもいいし、好きな人は好きじゃないかな。
エルフの変わった習慣に目を瞑れば。
あの人とかいつまで木の温もりを感じてるんだろう。
花ふむと怒られるし。)
「なんというか、エルフって結構変わってるのね。」
「そりゃあの。
一応、贅を尽くしているが、口に合うかはわからん。」
文化も思想も違う者たちが、同じ空間でグラスを交わしている。
それだけ見れば、理想的な交流の場。
「お嬢様。
ラティア様にもツッコミをされてますよ。
私も何度もお伝えしています。絶対に合コンする流れじゃないと思います。」
「やだ。二人ともそんなにほめないでよ。
ラティアもよく似合ってるじゃない。」
「ほめとらんわ。
沸いとるのか。
そりゃエルフの技術の粋を集めて用意した衣装じゃから、似合ってないと困る
じゃが、状況がのう……」
成果の奪い合い。
共同研究の打診。
あるいは、静かな排除。
言葉一つで、立場が変わる夜。
さらに魔族の暗躍が予想されている。
「まあ、それとこれとは別じゃない?」
「明らかに別ではない。
……防衛結界の見直しとか、警備部隊の編制とか他にあるじゃろ。」
「ラティアは忙しそうだから、たまにはハイエルフっていう、永遠にも等しい悠久の時の流れを感じればいいんじゃない?」
「それは無限に遠くを見てるのと変わらん。」
「懇親会には、普段なら絶対に一堂に会さないメンバーが揃う。
で、どうせ酒も入るなら、裏で動いてる連中”がいたら気も緩むかもしれないし。」
ラティアは腕を組み、呆れたようにため息をついた。
「それを“合コン”と言い張るのはどうかと思うが。
懇親会でいいじゃろうが。」
「嘘は言ってないからね。」
(魔族の戦力そのものを潰すのは、シトリーの仕事。
それを成立させる準備を潰すのが私達の役割。
そもそも誰が仕組んでるかもわかってない。
各種族の代表、護衛、研究者、貴族。
リーシャの相手探しも本気だし。
まさか、国を統治するほどの権力を使って大々的にやる事が合コンとは、誰も想像できない。
なればこそ、綻びも生まれる。)
さて。
「本日は、お集まりいただきありがとうございます!」
合コンの始まりだ。
ラティアは固まった。
──あんなもの手配した覚えがない……
すでに見覚えのない、ノリのいい司会が進行を始めている。
「なぜ。
合コンっぽい感じに……しょうもなさすぎるじゃろ……
そもそもなぜ司会が……クラリッサ。お主じゃろ。
……いや、拘束されていたから不可能か……」
「まあ、お金払って、進行に口聞かせただけだけだどね。
そんなに考え込まないでよ。」
「いくら払ったんじゃ」
「金貨1万枚《約3.3億円》くらい」
「は?」
クラリッサはニコニコしていた。
普段と全く変わらない。
──こいつ。ガチだ。
──否定しないところを見ると、ガチで1万枚払って、懇親会の運営を抱き込みやがった。
(頭おかしい)
ラティアは頭を抑えた
「別に夜は元々懇親会の予定だったんでしょ。
そこにイケメンを集めただけじゃん。
ラティアも見つけなよ。
いい人。」
「お主。
私をいくつだと思っておる。
ハイエルフの時は何千年にも及ぶぞ。」
「出た出た。
すぐ年齢を言い訳にして逃げ道作る人。
そういうのの流行らないからね。」
「舐めるな。
これでもモテたわ。昔は
今は知らん。」
「今も需要ありそうだけどね。」
「あるか阿呆。」
会場から消える人影を見つける。
「ほら、早速かかった。」
「このクソみたいな方法で、本当に成果を出すのが、お主の厄介なところじゃな。」
「そんな何度も褒めないでよ。もう。」
「一回も誉めとらん。
前向きすぎるじゃろ。」
会場の混乱は収まらぬ中、二人は進む。
喧騒は背後へと遠ざかっていく。
来賓用の控室が並ぶ区画。
給仕や使用人が行き交う裏方通路。
それらを抜け、影はそのさらに奥へ。
装飾が消え加工の痕跡だけが残る、樹木の内壁。
だがそこに、ほんの指一本分ほどの隙間。
「ラティア……
ここって……」
「王族のみが使用できる避難通路じゃな。中へと入ったようじゃ。追うぞ。」
クラリッサは目をしばたく。
王族だってさ




