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転生悪役令嬢の筋肉無双  作者: 無印のカレー
エルフ領

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127/145

126話 アイビス

広間に出た。

天井は高く、円形に開けている。

地下の洞窟とは思えないほど広大な空間。


その中央で、人の形をして翼を持つ機械が、静かに稼働する。


胸部に収められた複合砲門が、ゆっくりと開き、滑らかな外殻の内側には、無数の杭状ユニットが並び、獲物を測るように震える。



金属の羽根が、滑らかに展開し、翼から赤い光が裂けるように広がり、空間そのものが焼け焦げたかのように歪む。


空気を叩く衝撃。

巻き上がる風圧。

そして、空気を焼く音と匂い。


「ね、ねえ……なんか、飛んだんだけど。」


「そうね。優雅ね。

慣性制御や姿勢制御が卓越してるんでしょうね。

離陸が、宙を歩くように滑らかだわ。」


「解説してる場合じゃ……!?」


リーシャが、わずかに後ずさる。


「優雅ではないの。

展開した推進装置が高出力でエネルギーを噴射し、浮力を生み出している。

うるさいじゃろ。逆に」


「ラティアさんも!?」


空気が裂ける音。

金属の腹の奥から叩き出されたような重低音。

さらにその上に、甲高い擦過音が重なり非常に煩い。


空気が焼かれ、削られ、悲鳴を上げている。


宙に浮かぶ翼を持つ金属の人型が、こちらを見下ろすようにさらに高度を取る。


赤い光が、収束した。





「来るぞ。」


ラティアの声と同時。

赤い粒が、ひとつ。

空中に、静かに灯る。


音が遅れて追いついた。


「リーシャ。抱えるから!

ビームね!!」


「何が起きたの!?!?」


「ビームよ!!」


「いや、全然見えないんだけど!?!?」


リーシャが叫ぶ。

すでに光線が地面をなぞり、大地を切り裂いていた。


「と。曲がるのね。」


「そうじゃな。誘導性能がそこまで高くないのが、幸いかの!」


ラティアは身体強化魔術を用いて、慣れた様子に誘導レーザーを躱す。


「く、クラリッサさん!?なにこれ!?

無茶苦茶光ってるのが追ってくるんだけど!!」


「目標の動きに合わせて、軌道を変化させてるのよ!!

おそらく魔力か、何かしらのサインに反応してる!

何をサインにしてるか、それを確かめる時間はない!!」


「数が……っ!」


十。

二十。

いや、それ以上。


いつの間にか、浮遊砲台端末オービットが散開し、それぞれが“発射口”となっている。


「くそッ!

曲がるなって!!」


急降下してくるもの

大地すれすれを滑るもの。

時間差で一本が、遅れて角度を変えた。


大地に触れる寸前で、跳ねるように反転し再び、追尾。


遅れていたエネルギーが一気に解放され、爆発となって炸裂する。

遅延起爆式の光弾頭。

空間に刺さり、時間差で世界を裂く誘導兵器。


爆光の中でIBISシリーズは、ただ静かに浮かんでいた。



煙の晴れた先、一行の姿はない。

すでに岩陰に隠れていた。


「っぶな……

死ぬかと思った。

リーシャの魔法障壁がないと腕の一本は持ってかれてたかも。」


「いや、そうなったら死んでたんじゃないかなあ……」


──一つ一つのオービットが、独立して思考しているかのように、最適な侵入角を選び取る。


──肝心の目標は、空中に浮遊。

(そして、初手で派手に誘導式の光学レーザーの掃射。

これ、パーティーがパーティなら手も足も出ずに沈む!)


「なんで見失ってるのかな?あいつ。」


「チャフね。

ラティアが撹乱してる。

この手の敵に慣れてるのは伊達じゃないわね。

さすがババア」


「怒られるよ、それ。

チャフって?」


「一般的だと金属の粉。

実際は不明だけど、用途は同じのはず。」


チャフを一通り巻いたラティアが2人が潜む物陰に合流する。


「だから誰がババアじゃ。

センサーを“騙す”ための餌を撒いた。

彼奴の攻撃はただの光ではない。オービットが観測し、軌道を補正する。

とはいえ撹乱は長くは持たん。

粒子の動き、密度、熱……時間が経てば全て分析され、見破られるからのう」


「……絶対殺すマシンじゃん。」


「ガーディアンじゃ。

そりゃそうじゃろ。侵入者は殺してなんぼじゃ。」


「合理的ね。

設計者と気があいそう。」


「私は、絶対友達になりたくない。」


「まあいいか。倒しましょうか。」


クラリッサは足元に目を向けると言った。





「むうん!!!!

うっし。命中。」


「今おぬし……

何をした?」


「いや投石だけど?

サイズ的には投げる岩かな。投岩?、」


「……」


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